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真のグローバルに働く人の働き方。書評「建築家、走る」(隈研吾)

   


話題の歌舞伎座建て替えの設計を行った建築家の名は、隈研吾。北京オリンピックの開会式の映像で流れた「竹の家」の設計を手がけたことでも、知られています。

本書は、アメリカでの発見や東京での挫折、地方での本領発揮、怒濤のコンペ参加など、――年始から6ヶ国を世界一周チケットで回り、地球のいたる所で打ち合わせを重ね、挑戦し続ける自身のことを素直な言葉で語った1冊です。

建築家は競走馬

以前僕は、伊東豊雄さんの著書「にほんの建築家」の書評に、「建築家とは、チャンスがあれば世界の果てまでも出かけてコンペを競うK-1ファイターのような存在である」というタイトルをつけました。これは伊東豊雄さんが語った言葉なのですが、著者も似たような事を語っています。

直接的な設計依頼の場合もありますが、
だいたいはコンベンション(設計競技)への参加の依頼です。
(中略)
僕らはその戦いに参加して、選ばれないと仕事が始まらないことになり、
今では一年中そういうレースに駆り出されるようになりました。
いってみれば、毎週レースに出なければいけない競走馬みたいなものですよね。

だから今、建築家はそんな状況に耐えられる精神力、
体力がないとやっていけない職業になっています。
(中略)
毎週出走が義務付けられた、
みじめな(あるいは忙しい)競走馬であることが明らかになったのです。

著者によると「国際レースに出走しなければいけない時代に僕らは放り出された」といいます。現代のビジネスマンは、「グローバルな人材でなければ、生き残れない」と言われていますが、建築家はまさにその先端を走っている存在と言えます。

個人には何の思い入れもない

著者は、中国のプロジェクトについてこんな事を語っています。

「中国人は、ぼくのデザインのファンなんだ」
という甘い気持ちでは、彼らとは仕事はできません。
中国のデベロッパーにとって大事なのは、
「東京でこういう美術館を設計した人物がやります」というブランドだけで、
ぼくという個人には何の思い入れも愛情もないところから、
すべてが始まります。

仕事では、「自分の思いをどう実現するか」なんて重要ではないのです。ようは「自分という人間が、他人にどのように役に立つのか」「どう社会に貢献できるのか」。改めて実感させられる言葉です。

「直接会う」「現場に行く」

だからこそ、インターネットの発達により、様々な手段で情報を伝えることが可能になった現代だからこそ、著者は世界一周チケットを買って飛行機に乗り、世界中の現場に足を運びます。建築というのは、その土地に立つ固有の物です。デジタル化して、インターネットで送れる物ではありません。

直接土地の人に会って自分の考えを伝え、現場に足を運び、施工中の建物をチェックする。グローバルに仕事をするということは、メール1つで全てを解決するのではく、徹底的に現場に行って、コミュニケーションをとって、様々な問題を同時進行させながら、グイグイと進めていく精神力と体力が必要なのだと、改めて感じます。

現代は、「グローバルな人材でなければ、生き残れない」といいますが、正直こうした働き方が出来るのは、一部の人だけだと思います。

では、隈研吾になれない人はどうするべきなのか。その事も考えさせられた1冊です。

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