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2016年J1セカンドステージ第12節 大宮アルディージャ対川崎フロンターレ レビュー「ついに爆発してしまった、チームが抱えていた爆弾」

   

2016年Jリーグセカンドステージ第12節、川崎フロンターレ対大宮アルディージャは2-3で大宮アルディージャが勝ちました。

退場前と退場以降では全く違う試合

この試合は、大久保の退場前と退場以降では全く違う試合になってしまいました。

大久保の退場前は、川崎フロンターレが試合をコントロールしていました。大宮アルディージャは、4-4-2のフォーメーションで、選手間の距離を狭くし、中央のエリアを攻略されないように守備をしてきました。ただ、柏レイソルやサガン鳥栖のように、FWのムルジャと家長は積極的にボールを奪いにこなかったので、川崎フロンターレのDFは比較的楽にボールを保持することが出来ました。

特に効果的だったのは、田坂と谷口のプレーです。谷口は大宮アルディージャが選手間の距離を狭くしたことで空けたスペースにいる選手に対して、斜め方向の速いパスを出して、場所を守っていた大宮アルディージャの守備の背後をとることに成功していました。また、田坂は相手が守っている場所以外の場所でボールを受け、相手が近づくまでボールを運び、引きつけてパスをするというプレーを繰り返し、大宮アルディージャの守備を動かしていました。

田坂のプレーは、バイエルン・ミュンヘンでプレーするフィリップ・ラームがよくやるのですが、相手がマークしていない場所を的確に見つける目と、ボールを受けた場所で何をするべきかを判断する判断力、そして正確にボールを扱う技術がなければ、出来ないプレーです。一見簡単そうに見えるプレーですが、DF2試合目の田坂が何気なくやっているのを観て、僕は驚きました。

大宮アルディージャの守備はそこまでタイトではなかったので、前半の攻撃を繰り返していれば、後半に相手の足を止めて、勝つことが出来たはずです。しかし、大久保の退場が全てを変えてしまいました。

プランBもCも使ったけど力尽きる

大久保の退場以降は、フォーメーションを4-4-1に変更します。フォーメーションを変更した後にPKを取られてしまい、失点。苦しい展開を余儀なくされてしまいました。川崎フロンターレは後半も4-4-1を継続しますが、三好を交代出場させたあとは、3-4-1-1に変更します。中村を中央に移動させて、中村と小林の関係で崩す、三好にボールを運んでもらうことで相手を押し込む、そしてカウンターを受けても車屋を残しておくことで相手の速い攻撃に対応したい。そんな意図が見えた交代でした。三好の交代以降2得点を奪って逆転。ここまでは狙い通りの展開だったとおもいます。

ただ、10人で11人を相手にボールを回して攻撃を仕掛け続けていたので、逆転以降は足が止まってしまいました。逆転した後は、4-4-1に戻します。大宮アルディージャは泉澤とマテウスを交代で出場させていたので、サイドから攻撃したいという意図をもっていました。川崎フロンターレとしては、その事がわかった上で、サイドをサイドハーフとサイドバックの2人で守ろうとしたのですが、右サイドバックに入ったのが森谷だったので泉澤との対応に後手に回ってしまったこと、左サイドバックの車屋がマテウスを止められなかったこと、そして両サイドハーフの三好と中村の守備が機能せず、サイドから押し込まれ、中央を崩され、2失点してしまいました。あと10分耐えられれば、川崎フロンターレは3人目の交代に奈良を使って、守り切れたはずです。ただ、監督と選手はやれる事はやったと思います。ベストを尽くしたゲームだったと思います。

変わりつつあるチーム内のパワーバランス

チームとしては全力を尽くしただけに、大久保の退場はただただ残念でした。1998年のフランスワールドカップでベッカムが退場したとき、イングランドのメディアは「10人の勇敢なライオンと1人の愚か者」という表現を用いてベッカムを非難しましたが、大久保も同じことをやってしまいました。元々ファウルに対して相手を威嚇するようなアクションをするプレーヤーなので、いつ退場やイエローカードをもらってもおかしくはなかったのですが、絶対にやってはいけない試合で、絶対にやってはいけないことをやってしまったと思います。

大久保がイライラしていた要因は、大宮アルディージャの守備ではなく、味方に対してだと思います。大久保は、今シーズン通じてずっと「攻撃のクオリティが低い」と一貫して言い続けてきました。パスは回せるし、サイドからは崩せる。ただ、自分がこれまで得点を奪ってきた、ペナルティエリアの角付近でボールを受けて、ミドルシュートを決めるような場面がほとんどない。サイドを崩しても、自分ではなく他の選手が選択される。そんな想いが、イライラにつながっていたのだと思います。

大久保の苛立ちの要因として考えられるのは、チームメイトの成長です。特に大久保が目をかけていた小林、大島といった選手は、日本代表に選ばれるほど成長しました。しかし、小林と大島の成長は、チーム内のパワーバランスを微妙に変えていると僕は思います。小林が結果を出したことで、小林の動き出しに合わせて、チームメイトがパスを出す機会が増えました。大島が結果を残し始めたことで、大島のプレーにチームメイトがあわせる場面が目立ちました。今までは、大久保と中村を活かすようにチームメイトはプレーしていたのですが、今の川崎フロンターレは、小林と大島にあわせて、他のチームメイトがプレーするようになっています。

ある時期までは中村は、抵抗するような素振りをみせていました。しかし、名古屋グランパス戦で足首を怪我し、左サイドハーフで起用された後からは、明らかにチーム内のパワーバランスの変化に対して、抗うことを諦めたように思えます。小林と大島に活かしてもらえるような動きをするようにプレースタイルを調節し、ゴール数とアシスト数を増やしています。以前、伊藤宏樹さんが務めていた、チームの「大ボス」の位置に、中村は収まった気がします。チョン・ソンリョンという、大久保と中村より実績のある選手が入団したことも、チームのパワーバランスを微妙に変化させていると僕は思います。

ただ、大久保だけはこのパワーバランスの変化に納得していないように見えます。今まで、自分に得点をとらせようとプレーしてくれていたチームメイトが、そうではなくなった。そう感じているのかもしれません。確かに今シーズンの川崎フロンターレは中央から崩すプレーが出来ていないのですが、中央から崩せない時は、小林の背後をとる動きと、サイドから崩すことで、得点を奪ってきました。しかし、大久保はサイドから崩す回数が増えるということは、自分に得点を奪ってもらうためのプレーが減ったということを意味します。実際、この試合でも大久保が動いても、パスが出てこない場面が何度もありました。正直、そのタイミングで動いてもパス出せないだろ、と思うタイミングもありました。ただ、大久保は自分が欲しいタイミングでパスがもらえなくなったことで、動きのリズムが狂い、普段はやらないボールを止める動きのミスも増えているように思えます。プレーに迷いが見られます。

僕は、大久保を見ていると複雑な気分になります。3年連続得点王を奪い、誰よりも結果を残してきたのに、いざタイトルが奪えるというタイミングで、自分より伸びてきている若手の台頭によって、エースストライカーの座を脅かされる。しかも、目をかけてきた選手に。社会人でもよくあることですが、すごく複雑です。自分もそんな思いを仕事で感じることがあるので、大久保の状況に自分の心境を重ねてしまったりします。中村はもしかしたら、タイトル欲しいから、もう個人のプライドとか、どうでもいい。そんな気分なのかもしれませんが、エースストライカーにそんな人はいません。俺が一番。そう思ってなければ、務まらないポジションです。だから、大久保は苛立っているのかもしれません。

サポーターからしたら、そんなプライドどうでもいいじゃないか、チームのためにプレーしてよ、そう思うかもしれません。でも、自分が同じ状況に置かれたとき、果たしてそう思えるでしょうか。サッカー選手も1人の人間です。自分が活躍して、チームを勝利に導きたい。そう思っているはずです。大久保の苛立ちはチームとしてタイトルを勝ち取りたいが故の、苛立ちなのだと思います。ずっと2016年シーズンを通じて抱えていた爆弾が、ついに爆発してしまった。僕は大久保が退場した瞬間、そう感じました。

2016年シーズンを象徴する大久保と谷口の2人

2016年シーズン、このブログでは一貫して2人の選手の事を書いてきました。1人は大久保、そしてもう1人は谷口です。この2人の事を書いてきた理由は、「世代交代」です。常々、「大久保と中村に頼っているチームは優勝できない」「小林、大島、谷口がチームの中心にならないと優勝できない」と言い続けてきたのですが、小林、大島は、完全にチームの中心になりました。ただ、谷口はまだ完全にチームの中心にはなりきれていないと思います。奈良の復帰が迫ってきていますが、奈良が復帰して、エドゥアルドが万全の場合、それでも谷口がスタメンで出場するかというと、正直微妙だと思う人もいると思います。谷口にとって、奈良の不在期間中にチームの中心として成長するチャンスだったのですが、正直一歩届かなかったかな、と思っています。

中心になり切れていない谷口、エースストライカーのプライドを胸に秘める大久保。この2人の今後のプレーや動向は、川崎フロンターレの2016年シーズンの成績に大きく影響してくると思います。僕は2016年の残り試合は、この2人に注目して試合を観続けようと思います。

チョン・ソンリョンのビッグプレーとある選手の動き

最後に2つほど、この試合で印象に残った出来事を紹介したいと思います。

チョン・ソンリョンが家長を倒してPKをとられたプレーがありましたが、僕はあれはチョン・ソンリョンのビッグプレーだと思います。家長がトラップをミスして、少しボールが流れたので、身体を投げ出して、ボールに飛び込み、相手を止めるという選択肢もありました。ただ、チョン・ソンリョンは家長の動きをさっちして、とっさに身体を投げ出すのを止めて、足で相手を止める動きに切り替えました。引っかかってしまったのでPKにはなってしまいましたが、あそこで身体ごと飛び込んだら、チョン・ソンリョンもレッドカードで退場し、短時間で2人欠くことになったかもしれません。失点してしまいましたが、チョン・ソンリョンのプレーがなければ、もっと試合は酷いものになっていたかもしれません。ビッグプレーだったと思います。

あと、この試合に出場した、ある選手の動きが劇的によくなっている事が気になりました。正直、出場した後の身体の使い方を見て、声をあげて驚いたほどです。残り試合の楽しみが増えました。密かに注目して、活躍したら詳しく紹介したいと思います。

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