官能性と”枯れる”ということ。書評「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ 2」

2014/09/06

「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」という番組は、こんなナレーションで始まります。

日曜日の夜。ジブリの森を探す旅人は、1軒の家に辿り着きます。
ジブリの森のラジオの川のほとり。
そこに建つれんがの家は、スタジオジブリ鈴木敏夫さんの隠れ家です。

「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」というラジオ番組は、「れんが家」と呼ばれるスタジオジブリの別室に集まった様々なゲストと、スタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫さんとのトークを放送する番組です。番組の内容はPodcastでほぼ全回聴けるのですが、番組の内容を手軽に楽しめるようにと、書籍になって発売されました。本書は2巻目です。

宮崎吾朗、父親を語る

本書の個人的なオススメは、宮崎吾朗さんが「ハウルの動く城」「ゲド戦記」のブルーレイ発売を記念した番組で、初めて自分の父親である宮﨑駿さんについて語った箇所です。宮崎吾朗さんは、「ハウルの動く城」について、率直な感想を以下のように語っています。

生っぽくって、嫌だったんです。
老人同士の恋愛の映画だって思ったんですよね。
ソフィーはおばあちゃんの姿になりますけど、
言ってみれば、それが本来の姿で、若いけど、(心は)歳をとっている。
反対に、ハウルって見かけは若くしてるけど、本当は、荒れ地の魔女と同じくらいの歳。おじいさんのはずですよ。
荒れ地の魔女も、魔法で隠してるけど、もう、すごいおばあさん。
だから、年寄りの三角関係。
(中略)
「(宮﨑駿監督が)そこまで歳とって、まだこういう物を持っているのか」と愕然とした覚えがあって・・・。

正直、僕にとって「ハウルの動く城」はよくわからない作品だったのですが、僕はこの話をPodcastで聴いて、「ハウルの動く城」がどういう作品だったのか、ようやく理解できた気がしました。

ジブリアニメの官能性

ジブリアニメの特徴として、トトロの柔らかそうなお腹に代表されるように、感触が伝わるような動きが実現出来ている点にあります。言い方を変えると”官能的”とも言えます。”官能的”なジブリアニメを描くことを、鈴木さんは”ジブリアニメの正統派”と語っています。

ジブリアニメの官能性については、宮崎吾朗さんが面白い事を言っているので、紹介します。

「ゲド戦記」の時って、映画って、
お客さんはストーリーで観てると思ってたんですよ。
(中略)
ようするに、映画って、ストーリーとか構造とか設定とかね、
理屈で観られてるって、前は思ってた。
でも、「そういうことはあまり関係ないのかな」って、
最近思うようになってきて。

枯れるとは何か?

本書のあとがきで、鈴木さんは「枯れるとは何か?」という文章を書いています。

若いころも早く年を取りたいと考えた時期がある。
年をとって枯れれば楽になる。
(中略)
なにしろ、すべてを分かっているのだから、経験と知恵で楽しく行きられる。

こんな文章を書いた後に、鈴木さんは黒澤明監督の作品を例に、「枯れる」とは何かについて書いています。

晩年の作品で印象的だったのは、「夢」に登場した笠智衆だ。
だれもが、枯れた老人の代表として、そういう芝居を彼に要求してきた。
しかし、「夢」に登場した笠智衆は、
それまで彼が演じ続けた老人像をすべて裏切るかのように、
頑固で醜くて物分かりの悪い、リアルな爺を演じた。

この映画に黒澤の心境の変化を見たと、鈴木さんは書いています。じゃあ、宮﨑駿監督はどうだったのか。「風立ちぬ」はどうだったのか。続きは本書をお読み頂ければ幸いです。

ジブリとは思想である

本書は、単なるラジオで放送された対談をまとめた書籍ではありません。「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」の書評でも書きましたが、「ジブリの思想」を最も身近に体験できるのが、本書だと思います。「ジブリとは思想である」と語ったのはロッキング・オンの渋谷陽一さんですが、「ジブリの思想」とはなにか。あなたも体感してみてください。

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