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書評「アテンション―「注目」で人を動かす7つの新戦略」-「空も飛べるはず」「となりのトトロ」が公開直後にヒットしなかった理由-

   

本書「アテンション―「注目」で人を動かす7つの新戦略」は、MashableというWebメディアで人気ライターだった著者が、「注目」を制するものが市場を制する、と題して、注目をあつめるための戦略と具体的な例を紹介している1冊です。

良い物を作っても売れない

井上陽水さんがデビュー前、地元のラジオ局に自作の曲を持ち込みます。曲を流してもらうため、リクエストを大量にハガキで送り、ラジオ局で放送してもらった結果、曲はスマッシュ・ヒットを記録します。ただし、大量に送ったハガキは、陽水が自分で送ったものではなく、浪人していた友人たちにハガキを渡し、リクエストを送るように指示し、送られたハガキなのだそうです。

「良い物を作れば売れる」という人がいることは知っています。それは真実です。ただし、「人が伝えたくなる」「人が注目したくなる」くらい良い物であることが条件です。本当によいコンテンツ、よいサービス、よいプロダクトは、人が注目したくなり、語りたくなるものだと僕は思います。井上陽水が使った手段は、ある意味姑息かもしれません。しかし、井上陽水の曲が人が伝えたくなったり、人が注目したくなるコンテンツだったから、姑息な手段が機能したのです。

スピッツの「ロビンソン」「涙がキラリ☆」がヒットした後、2つの曲がリリースされる前に発表された「空も飛べるはず」がドラマの主題歌に起用され、大ヒットしたことがありました。スピッツの楽曲の質の高さが証明されたエピソードではありましたが、よいコンテンツを作っただけでは、ヒットは生まれないという事を象徴しているエピソードだともいえます。スタジオジブリの作品は、今でこそ多くの人が作品の存在を知っています。「となりのトトロ」は、誰もが知っている作品だし、スタジオジブリの代表作とも言える作品ですが、公開当時の興行収入で比較すると、スタジオジブリで最も少ない興行収入の作品だったことはあまり知られていません。

何が言いたいのかというと、当たり前のことですが、注目を集めるのは、簡単ではないということです。即時に注目を集める方法がないわけではありません。それは、「お金を遣う」か「悪いことをする」か「事件・事故に巻き込まれる」のいずれかしかないと、僕は思っています。注目を集めるためには、長い時間をかけて、コツコツと信頼を獲得しなければなりません。「あの人・あの会社なら期待したことをやってくれる」という信頼が無ければ、注目を浴びることはありません。

何を言ったのではなく、誰が言ったのかが重要なのだ

よく、インフルエンサーと呼ばれる、影響力のある人を活用して、注目を集める手法をPRとして活用することがあります。効き目がないとは言いませんが、効果は長続きしません。結局、コツコツと積み上げた信頼に勝るものはないし、注目される続けるには、回り道と思えるほどコツコツとした信頼の積み上げが、最も近道なのだと僕は思っています。

本書の中で「何を言ったのではなく、誰が言ったのかが重要なのだ」という言葉があります。同じことをイチローも語っていたのですが、サッカーについて同じことを語っていても、僕よりジョゼ・モウリーニョが言った方が、説得力があるのは間違いありません。人が話を聞くとき、発言内容の数%しか聴いていないと言われています。じゃあ何を聴いているのかというと、話す時の態度、口調といった印象や、話す人のバックグラウンドを見て、信頼できるか判断しているのだそうです。

人の話を信頼してもらうための要素は、結局時間をかけて培うしかありません。注目してもらうための小手先のテクニックを活用するのではなく、本書の書かれている原理原則を踏まえて、状況にあわせて最適な方法を選択する。並行して、信頼を得るための取組を続ける。それが、注目を集める唯一にして最短の近道なのだということを教えてくれる1冊です。

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