書評「なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?」(ヨリス・ライエンダイク)

本書「なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?」は、ジャーナリストである著者が、まったくの門外漢である金融業界に関わる200人以上の人に、「なぜリーマンショックは起こったと思うか」といった、専門家ではしないような質問をぶつけ続け、金融業界で働く人々の事を紹介したコラムをまとめた1冊です。本書の基になった連載は、The Guardianに連載された「Banking Blog」というブログです。僕はこのブログを拙い英語力をフル活用して読んでいたのですが、日本語でまとめられた本書を読んで、ようやく著者の意図が理解出来たような気がします。

聞きたいことは専門家に直接聞く

本書で興味深かったのは、金融業界で働く人の声や実態よりは、著者の話を聞き出す方法です。自分がやりたい事をブログで発表し、聞きたい事があれば、直接専門家に会って話を聞く。そして、聞いたことはブログにまとめて発表し、発表内容に興味を持った専門家が問い合わせてくれるので、会って話を聞く。そして、ブログにまとめる。この繰り返しで、著者は金融業界に関する知識を身につけ、次第に専門家とも話せるようになっていったというのです。

丁寧に自分の言葉で書く

本書は「専門家にならなければ、発言してはいけないというわけではない」という事を教えてくれます。ただし、専門家でないのですから、腰は低く、言葉は丁寧に。相手の言うことを受け止め、自分が感じた事を、嘘がないように丁寧に書き続けてきたからこそ、著者のブログは注目を集めたのではないかと思いました。

強い言葉で、自分の姿を大きく見せようとするのではなく、丁寧に自分の言葉で質問し、感じた事を嘘偽りなく書く。地道ではありますが、最も自分の意図が伝わるコミュニケーション方法は、こんな方法なのかもしれません。分かっていたつもりだけれど忘れていた大切なことを、改めて教えてくれた1冊です。

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