育成年代で学ぶべき「時間の使い方」。書評「日本はバルサを超えられるか —真のサッカー大国に向けて「育成」が果たすべき役割とは」(村松尚登・小澤一郎)

2015/06/14

現在のサッカーをリードするFCバルセロナ。人気も実力も兼ね備えたスペインの名門クラブの人気の秘密は、クラブを貫く哲学にあります。「mes que un club(クラブ以上の存在)」というスローガンの基に、サッカークラブ以上の存在であろうとする姿勢が、人々を惹きつけています。

本書は、「育成環境」「指導者」「保護者」「Jリーグ」「メディア」といった多角的なテーマにそって、けして他国の模倣ではなく、日本の強みを活かした日本オリジナルの育成システムづくりに関して多角的に検証・提案し、日本がFCバルセロナを代表とするヨーロッパの強豪国や強豪クラブをどうしたら超えられるのか書かれた1冊です。

オフシーズンがない

僕が本書で最も印象に残ったのは、オフシーズンに関する考え方です。現在、育成年代のカレンダーには明確にオフシーズンは設けられていません。それは、サッカーに限ったことではありません。今まで、練習をすることが技術や体力を高める、あるいは、活動をしていない間に何か生徒が問題を起こすとまずいという考えから、オフシーズンを設けてこなかったのだと思います。付け加えるなら、休日がない部活動も未だにあるのではないのでしょうか。

1年間365日スポーツに打ち込むことは、今まで美徳として捉えられてきましたが、果たしてその方が効率的だったのか。著者の2人は、そのことについて疑問を投げかけています。

オフシーズンを設けるメリット

オフシーズンを設けたほうがよい理由は、2つあります。1つ目は、サッカーから離れる時間を作ることによって、サッカーへの集中力をより高められるからです。集中力が高まることによって、効率的な練習が出来るからです。僕自身も経験上休日明けの練習の方が、いい動きが出来るという印象があります。

2つ目は、サッカー以外の時間の使い方を充実させることが、実は、サッカーの技術の向上につながるからです。サッカーをしない時間をどう過ごすのか。子供は何をするのか、自分で考えて行動しなくてはなりません。その時間を友達と遊ぶ時間に使ってもいいし、勉強の時間にあててもいいし、長期のオフシーズンがあれば、海外にホームステイしてもいいと思います。大切なのは、「自分の時間をどう使うのか」です。

タイムマネジメントの重要性を学ばずに社会に放り出される

社会で働く自分自身実感することですが、学生時代は学校に行けば授業の時間割が決まっているし、部活動に所属していれば予定が勝手に埋まっていくので、自分の時間をどう使うのか、きちんと考えたことはありませんでした。しかし、社会に出ると、仕事も含めた自分の時間をどう使うのか、誰も教えてくれません。

しかし、仕事の質を決めるのは、実は仕事以外の時間の過ごし方だったりします。仕事以外の時間をどう過ごすのか。その事の重要性がわかったのは、自分自身30代になってからでした。だからこそ、育成年代の子供たちには、オフシーズンを設けることで、「サッカー以外の時間の過ごし方を充実させることが、サッカーがうまくなることに繋がる」ことを、指導者はきちんと伝え、勇気をもってオフを設けて欲しいと思うのです。

育成年代の問題は日本社会の問題でもある

本書には、オフシーズン以外にも育成年代の問題に対する提言が紹介されていますが、育成年代の問題を書いていくと、必ず日本社会の問題とぶつかります。学業とスポーツとの両立、タイムマネジメントと効率化、ソーシャルメディアと子供、進路選択、など。

本書を読むことは、日本社会の問題点を理解することにも繋がると感じました。
サッカーをきっかけに、今の日本社会はどうなっているのか。そんなことを考えるにも、よいきっかけとなれる1冊です。

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