書評「バルミューダ 奇跡のデザイン経営」

2016年最も話題になった家電に、バルミューダという会社のトースターがあります。トースターに少しだけ水を入れ、普通の食パンを入れて焼くと、外はサクサク、中はふんわりとしたトーストが誰でも焼ける。このトースターで焼けるトーストの美味しさが話題を呼び、2万円以上するトースターは、異例の大ヒットを記録しました。(僕もつい買ってしまいました)

バルミューダは、トースターの前にも、画期的な製品を発売しています。自然の風に限りなく近い風を再現した扇風機、中身が見える加湿器など、新たな発明が生まれないとされていた家電業界において、バルミューダは他のメーカーでは出せない製品を次々と発表し、注目されています。

バルミューダはなぜ他のメーカーでは出せない製品を出せるのか。そして、洗練されたバルミューダのデザインはどのようにして生み出されるのか。本書「バルミューダ 奇跡のデザイン経営」は、注目されているバルミューダという会社を、社長の寺田さんのインタビューを中心に、「デザイン」という切り口で語った1冊です。

生活の問題を解決する道具を作る

バルミューダと他のメーカーの製品は、どこが違うのか。それは、製品を作る時のきっかけにあります。バルミューダは、「生活の問題を解決する道具を作る」というコンセプトで、製品を開発しています。「美味しいトースターが焼きたい」「夏をより涼しく過ごしたい」といった、生活における問題を解決するために製品を開発しています。

「モーターの性能がよくなったから製品を開発しよう」「温度管理機能の性能がよくなったから、トースターを開発しよう」といった、機能を基に製品を開発しているのではありません。これが、他のメーカーとバルミューダの大きな違いだと思います。そして、バルミューダは製品を開発するきっかけとなった問題をどう解決するか、そして解決するためにどんな体験を与えるか、徹底的にこだわっているのだと、本書を読んでいるとよく分かります。

センスは鍛えられる

印象に残っているのは、「センスを磨くために日々心がけていること」についてです。バルミューダはマーケティング・リサーチに基づいて、製品開発は行いません。個人の感覚や問題意識を基にして、製品開発を行います。したがって、個人個人のセンスに製品開発が大きく左右されるのです。

寺田さんは、「センスは鍛えられる」と考えているそうです。センスを鍛える上で日々心がけているのは、身の回りのモノをよく見ることだそうです。「観察しながら、本当に良いものは何か、皆が好きなものや多くの人が良いと感じる状態はどのようなものかを分析する」のだそうですが、具体的にはこんな方法でセンスを鍛えていると、寺田さんは語っています。

「自分自身が心地よいと感じ、嬉しい気分になったとき、自分に何が生じているのかという原因を考える。例えば、陽気のよい春の日に公園に出て、団子を買って食べたとする。そこで気持ちいいなぁと感じたら、その時の団子の味、匂い、木の香りや葉のさざめき、町の音や空を飛ぶ飛行機の音、足裏の触感などを覚えておく」

僕はセンスを磨くのに有効なのは、「感覚を文字に残す」事だと思っています。自分の頭の中にある感覚は、どういう事なのか。文字に起こしておくと、感覚がより具体的になり、人に説明出来るようになります。人に説明出来るようになると、(修練を積めば)同じ感覚や行動を再現出来る可能性が高まっていきます。こうして、人にはない感覚を具体的に表現し、人の心を動かすアウトプットを作り出せる人の事を、「センスがよい人」だというのだと、僕は思っています。

バルミューダの製品は、見た目も美しく、使うことで毎日の生活が楽しくなるような製品ばかりです。素敵な製品を生み出している人の思考を知ることは、自分自身の仕事だけでなく、日々の生活をよりよくするヒントを知ることナノではないかと思います。

バルミューダの製品に興味を持っている人や、バルミューダの製品を既に購入しファンになっている人は、ぜひ読んで欲しい1冊です。

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