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書評「野球×統計は最強のバッテリーである – セイバーメトリクスとトラッキングの世界」-ビッグデータが野球を変える-

   

プロ野球をデータで分析してみよう。そんな一見マニアックな書籍が発売されたので、読んでみました。

本書「野球×統計は最強のバッテリーである – セイバーメトリクスとトラッキングの世界」は、野球ファンの間に広く浸透しつつあるセイバーメトリクスという分析手法と、メジャーリーグで導入されているシステムを用いて、投手が投げる「キレとノビ」といった今まで感覚的に感じていた要素に対して、データを切り口に野球への理解度を深めようと試みた1冊です。

セイバーメトリクスがもたらした変化

本書のタイトルにもなっている「セイバーメトリクス」とは、野球においてデータを統計学的見地から客観的に分析し、選手の評価や戦略を考える分析手法のことです。セイバーメトリクスでは、大まかに分けて、次の4点が分かります。

  1. 得点と失点のデータがあれば、およそ何勝するかわかる
  2. 得点を増やすには打率よりも出塁率や長打率が重要
  3. 投手は「運」によって成績が変わりやすい
  4. 「打点」にはそれほど意味が無い

本書では、セイバーメトリクスを考える「指標」と指標を測るためのシステム「トラッキングシステム」の可能性について、詳しくまとめられています。

指標としても、野球好きではなければあまり耳にしない「出塁率」「OPS(アウトにならない確率)」といった指標が紹介されていて、選手やチームの新たな評価の仕方を紹介しています。また、「PITCHf/x」というトラッキングシステムを使って、野球の投手の投球速度や投球軌道を追跡し、選手の球種や曲がり具合からどんな特徴があるピッチャーなのか、データをもとに紹介しています。そして、「PITCHf/x」のようなシステムをバッターに適用すれば、スイングと打球の関係性から、どんなバッターなのか詳細な分析が可能な気がします。

今までのプロ野球は、打者なら「打率」「打点」「本塁打」、投手なら「勝利数」、「防御率」、「勝率」といった、比較的取得しやすい「ベーシックデータ」のみで選手を評価していました。ところが現在では、様々な指標とトラッキングデータを駆使して、ベーシックデータ以外の「アドバンスデータ」が取得出来るようになりました。つまり、より実際のプレーに即したデータを取得し、分析出来るようになったのです。

今後、データ指標の評価が変われば、プロ野球の個人成績を判断する指標が変わるかもしれません。もしかしたら、三冠王も「打点」「打率」「本塁打」ではなく。「OBS」「ISO(純粋な長打力」「wRAA(この選手のおかげでどれだけ得点が入ったのか」となるのかもしれません。

野球はビッグデータを活用できていない

ただ、本書を読んでいると、現状の日本の野球および日本のスポーツが、現実には膨大なトラッキックデータの使い方が分からず、データを持て余しているという事もよく理解できます。膨大なデータを指導の現場、ゲームの戦術、チームの戦略、実際のマーケティング、または審判の技術向上といった分野に、いかに活用していくのか。この点は、大きな課題だと思います。

個人的には、バレーボールやフェンシングなど、アナリストを上手く活用している競技にヒントがある気がします。女子バレーボール日本代表は、アナリストの渡辺啓太さんがベンチに入って、監督にデータの傾向を基にして、戦い方をアドバイスしているそうです。こうした、データを読み解いて、チームの改善策を提案できる人材が、本当の「サイバーメトリシャン」であり、アナリストなのかもしれません。

スポーツアナリストの需要は高まり、役割も細分化する

今後スポーツ業界では「問題をデータから導き出して、改善策を提案できる」アナリストの需要が、どんどん高くなると思います。そして、指導のアナリスト、戦術を考えるアナリスト、マーケティングのアナリストと、今後業務も細分化されていくはずです。スポーツの現場に近くなるほど、コーチとして役割が高まり、チーム編成に近くなるほどGMのような役割を担い、チーム運営に近くなるほど、マーケッターや営業との距離が近くなる。ビジネスの世界で起こっていることが、スポーツの世界でも近いうちに起こるはずです。

本書は野球に関するマニアックな指標を紹介しているので、コアな野球ファン向けに書かれている本に感じるかもしれません。しかし、本書はサッカー、バスケットボールといった野球以外のスポーツに興味がある人、そして、ビジネスのデータ活用を日々模索している人が読んでも、とても面白い1冊だと思います。

スポーツとデータ。今後益々親和性が高くなる分野を理解するのに、現時点では最もおすすめの1冊です。

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