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プロ野球の新たな魅力を教えてくれる1冊!書評「プロ野球死亡遊戯 そのブログ、凶暴につき」(中溝康隆)

   

仕事で毎週会っている広告代理店の担当者に、毎回ミニスカートを履いてくるきれいな女性がいます。

ある日、打ち合わせが始まる前に、彼女の方を見ていると、彼女のペンケースにキーホルダーに目が止まりました。目に止まったキーホルダーは、ジャイアンツのユニフォームの形をしていて、しかもそのユニフォームには、阿部でも、坂本でも、菅野でもなく、藤村の名前と背番号「0」と書かれていました。

藤村のキーホルダーは珍しいので、「藤村好きなんですか?」と聞くと、彼女は「はい!」と明るく返事した後、こう語りました。「2軍の試合が大好きで、よくジャイアンツ球場に行くんです!」と。それを聞いた僕は、もしかしたらと思って、こう聞いてみました。

「あのー、プロ野球死亡遊戯というブログ知ってます?」

すると、彼女はこう答えました。
「もちろん、知ってます!面白いですよね!!」

彼女の答えを聞いた時、僕は凄く羨ましかったのを思い出します。そして、改めて実感しました。「プロ野球死亡遊戯」というブログは、新しい野球ファンの開拓に貢献しているな、と。

本書「プロ野球死亡遊戯 そのブログ、凶暴につき」は、累計6000万PV突破のモンスターブログ「プロ野球死亡遊戯」の厳選された記事と、書きおろし、そして棚橋弘至、菅野智之、小山雄輝とのスペシャルインタビューを収録した、プロ野球ファン必読の1冊です。

語るべきは、村田のゲッツーであり、澤村の筋肉なのだ

「プロ野球死亡遊戯」に書かれているのは、単なる試合のレポートや、野球の技術論ではありません。

東京ドームで、巨人ファンのボルテージが上がるポイントが3つある。

試合終盤、代走職人・鈴木尚広がコールされると巨人ファンは若干前のめりだ。「行くぞ行くぞ二塁に行くぞ」と。接戦の勝負所で、代打・高橋由伸が颯爽と登場すると巨人ファンは身構える。「来るぞ来るぞヨシノブ来るぞ」と。そして、走者を一塁に置いて打席に村田修一が入ると巨人ファンはみんな半笑いだ。

「打つぞ打つぞゲッツー打つぞ」と。

(村田修一 超芸術的ゲッツーを打つ男【最優秀死亡遊戯】より)

澤村の筋肉を語る、それはラーメン屋の食器を語るようなものだ。

その大胸筋、投球に関係あるの?どんぶりのデザインにこだわるなら、スープの味を追求してくれよ。
(中略)
貯金はないけど、一緒にいて面白い男。こんな投手にハマったら幸せになれねえぞお嬢さん。投げる度に賛否両論を巻き起こす。そんな予測不能な「面白さ」がこの男の短所であり、最大の長所だ。

(澤村の筋肉はラーメン屋のどんぶりである。【読売制圧遊戯】)

そう。「プロ野球死亡遊戯」で語られるのは、村田のゲッツーであり、澤村の筋肉であり、坂本のポップフライなのだ。手の届かない存在だと勝手に思っていたプロ野球選手も、1人の人間だと思うと、こんな見方や楽しみ方が出来る。それを教えてくれるのが、「プロ野球死亡遊戯」なのです。

プロ野球選手だって1人の人間

プロ野球選手も1人の人間。そう考えるからこそ、「プロ野球死亡遊戯」では、選手が試合が終わって、1人の人間として抱えている葛藤も汲み取ってくれます。まるで、スパイダーマンのスーツを脱ぎ捨てたトビー・マグワイアが、自分の力がもたらす周囲への影響に苦悩するように。

実松は気付いてしまったのだろう。子どもの頃から憧れていたプロ野球は平等じゃないと。チャンスの数は人それぞれ。監督の好みだって当然ある。「なんであいつが」「俺の方が上なのに」恐らく、多くのプロ野球選手はそう思いながらベンチに座っている。
(中略)
男が仕事で年下に負けるのは、なによりも恐怖だ。今、実松はその恐怖と戦っている。いつの時代も、先輩を愚痴りながら飲む酒は上手い。けど、後輩をディスりながら飲む酒は惨めなんだホントに。
(中略)
そこで誰かのせいにして不貞腐れて投げ出すのか?ぐっと堪えていつ来るか分からないチャンスに備えて準備するのか?チームの連敗を3で止めた無口なヒーローは、ここ何年間か、控え捕手としてずっとその準備を続けている。黙々と文句も言わずに明日に向けて。尊敬するよ、その心のタフさを。

なぜ、著者にはこうしたプロ野球選手が抱える、心の葛藤が描けるのか。それは、著者自身が同じような思いを感じているからだと思います。スーパースターはごく一部。でも、大多数の選手は、スーパースターにはなれず、チームの歯車として、自分の力を発揮することを強いられます。そんなプロ野球選手の姿は、サラリーマンとして、会社の歯車となって働くことが求められる人と、なんら変わりません。プロ野球選手だって、1人の人間。そんなことを、本書は教えてくれます。

プロ野球はまだまだ終わらない

本書には、ブルーハーツの歌詞や、北野武映画のタイトルやセリフ、そしてプロレス的な表現がふんだんに盛り込まれていて、僕のような30代中盤の男性にとっては、たまらない1冊になっています。聖者になんてなれないんだ。バカ、まだ始まってもいねえよ。勝利も敗北もないまま、孤独なレースは続いていく。そんな世界観にひたっていると、あっという間によみ終えてしまいました。

地上波での放送が終わってしまい、サブカル化したと言われるプロ野球。でも、この本には、プロ野球の魅力がたくさんつまっています。スポーツが好きな人、野球が好きな人、ブルーハーツ、北野武の映画、プロレスが好きな人は、読んで損はない1冊です。

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