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グローバル時代における公共放送の行方。書評「公共放送BBCの研究」

      2013/06/10

公共放送BBCの研究

世界中でBBC(英国放送協会)は公共放送のモデルであり世界最高峰のジャーナリズムの一つとして、知的で教養高い放送局として高く評価されています。また、近年BBCはテレビ、ラジオ、Web、携帯電話といったマルチプラットフォームによるコンテンツ提供を進め、イギリス国内向けにとどまらず、グローバルなメディア環境での展開も積極的に行っています。

本書はBBCについて専門分野に携わる執筆者がそれぞれ書いた「BBC論」をまとめた書籍です。

公衆が所有する放送局

BBCはイギリス国民の「受信許可料」が主な収入源であり、発足当初から受信機設置者は自ら登録して郵便局で受信許可料を払う必要があり、払わない人には罰則が適用されます。しかし、受信許可料を払うことで、BBCというテレビ局は「公衆が所有する」という概念の元で運営されていると考えられていて、特に「公衆が所有する」という意識は、同じ受信許可料を支払っている日本のNHKに比べても高いように思われます。

政府から独立した組織であることを示す「特許状」

BBCのもう1つの大きな特徴は「特許状」という、時の政府との間で結ぶ協定書の下で運営されている組織ということです。BBCの根拠法である特許状は、BBCの法人としての設立や目的を定めたもので、特許状によって設立された経営委員会(BBCトラスト)が、出資者である視聴者に代わって、BBCの事業活動を監督するという仕組みで運営されています。これにより、BBCは公共放送でありながら、政府から独立した組織として独自の視点で報道することが可能になっています。

グローバル時代における公共放送のあり方

しかし、BBCという組織が設立から現在まで、問題なく運営されてきたわけではありません。BBCという組織の柱となっている「受信許可料」と「特許状」については、常に国民の議論の対象になってきたこと、政府と独立した組織であるといっても、公共放送であるがゆえにナショナリズム昂揚させる番組も存在していること、など様々な問題を内包しながら、ここまで運営されてきたことがこの本を読むとよくわかります。

BBCは特許状を更新する際、自身の公共的目的として以下の6つを挙げています。

  1. 市民意識および市民社会の維持
  2. 教育および学習の推進
  3. 創造性および文化的特性の鼓舞
  4. 連合王国、その国民、地域、共同体の体現
  5. 連合王国と世界との相互関係の促進
  6. 新しい通信技術およびサービスの恩恵を講習に供与するとともに、デジタルテレビへの移行において主導的役割を果たすこと

ここでちょっと意外だったのは、「連合王国」という文字です。イギリスは「イングランド」「北アイルランド」「スコットランド」「ウェールズ」という4つの連邦王国から成り立っていますが、4つの連邦王国は縄張り意識が強く、イギリス全土に提供されているサービスは多くありませんが、BBCは連合王国全体にあまねく提供される数少ないサービスの1つでもあるのです。

しかし、BBCのサービス提供先は連合王国にとどまらず、メディアの発達に伴って、世界中に広がっています。したがって、イギリスという国に住む国民から受信許可料を徴収して成り立っているBBCが、世界中にサービスが提供されるという点は、今後公共放送として運営されてきたメディアが抱える大きな矛盾点だと思います。

BBCが締結している特許状の有効期限は2016年12月。3年後にBBCとイギリスという国はどのような決断を下すのか。本書を読んで興味が湧いてきました。テレビというメディアの行方を占う上でも、今後のBBCの展開に注目して行きたいと思います。

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