書評「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」(渡辺 俊美)

1990年代にデビューし、日本のヒップホップを語る上で欠かせない存在なのが、TOKYO No.1 SOUL SET。独特の歌詞とおしゃれなトラックが組み合わさった音楽は、長年に渡って、多くのファンに支持されています。その、TOKYO No.1 SOUL SETのギター、ヴォーカル、サウンドプロダクションを担当しているのが、渡辺俊美さん。「猪苗代湖ズ」というバンドのメンバーとして、2011年には紅白歌合戦にも出演しました。

そんな渡辺さんが、2014年ある書籍を出版し、話題を集めました。渡辺さんには、1人息子がいました。2011年、当時シングルファーザーだった渡辺さんと高校に入学する1人息子は、ある約束を交わします。高校に入学する息子は、「一度決めたからには必ず3年間、休まず通って卒業する」。そして、渡辺さんは「3年間、毎日お弁当を作る!」と約束します。

今まで料理が好きだった渡辺さんですが、バンドマンという不規則な生活を余儀なくされる仕事に従事しているため、毎日お弁当を作るのは簡単ではありません。しかし、渡辺さんは息子との約束を見事に果たします。作ったお弁当は、3年間で461個。本書「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」は、渡辺さんが3年間にわたって1人息子に作ったお弁当にまつわる、エッセイ集です。

楽しみながらお弁当を作り続ける

本書を読んでいると、美味しそうなお弁当の写真に驚かされます。お弁当の写真だけをみていても飽きません。毎日作るのは簡単ではなかったはずです。渡辺さんも当初は惜しみなく時間とお金をかけてお弁当を作っていたそうですが、少しずつ疲弊せず、可能な限り美味しいものを作るために、「調理時間を40分以内」「1食にかける値段は300円いない」「おかずは材料から作る」といったルールを設けたりしながら、お弁当作りを続けていきます。

また、時にはお弁当の箱を変えたり、料理道具を工夫し、地方にライブに行けばお弁当のネタになる食材がないか調べたり、日々楽しみながら続けた事が、エッセイを読んでいると伝わってきます。

子育てに必要なこと

一番印象に残ったのは、お弁当を作った事が、父親と息子との会話のきっかけになっていたということです。「今日の弁当は美味しかった?」といった何気ない質問をきっかけに、色々な事を聞ける。ある時、1人息子が「お弁当の量を減らして欲しい」と伝えてきます。理由を聞くと「ダイエットしたいから」。好きだった女の子に体型をしてきされ、痩せようと努力したい。そして、父親に協力を要請する。そんな何気ないやり取りを読んでいると、思わずニンマリしてしまいます。

本書を読んでいると、子育てに必要なこと、子供の教育に何が必要なのかを、改めて考えさせられます。お金をかけ、子供の能力を高めるためのプログラムを受けさせる事も大切です。しかし、子育てに最も必要なのは、子供と向き合い、成長をサポートしようとする姿勢なのだという事を、本書は教えてくれます。

子育てに悩む方にこそ、ぜひ読んで頂きたい1冊です。

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