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スタジオジブリとは鈴木敏夫そのものである。書評「風に吹かれて」(鈴木敏夫)

      2014/09/06

風に吹かれて

宮崎駿さんや高畑勲さんの凄さは、様々な所で語られてきました。しかし、この男がいなければ、宮崎駿も高畑勲もここまで作品が評価されることはなかったかもしれません。本書「風に吹かれて」は『rockin’on』『CUT』などを創刊してきた音楽評論家・編集者 渋谷陽一さんによる、スタジオジブリ プロデューサーの鈴木敏夫さんへのインタビューをまとめた1冊です。

自分の居場所がどこにもない

本書には、鈴木さんの半生を振り返るインタビュー(ロッキング・オン・ジャパンの読者なら、「2万字インタビュー」という名前でお馴染みの企画です)が掲載されています。これまで、鈴木さんの仕事や映画に対する考え方をまとめた書籍は出版されてきましたが、鈴木さんの半生が語られているテキストは、初めて読みました。

鈴木さんのインタビューを読み進めていると、ある時期まで「自分の居場所がない」という思いを抱えてきたことに気付かされます。
地頭はよいが、勉強したくない。勉強したくないから、不良のようなメンバーとつるんでみるけれど、どうも居心地が悪い。大学に入学し全共闘に参加してみるけれど、心から乗りきれない自分がいる、といった具合に、ずっと居心地の悪さ、自分の居場所がどこにもない、という思いを抱えた生きてきた人なのです。

高畑勲と宮崎駿に認められたい

ずっと「居場所がない」という思いを抱えて生きてきた鈴木さんに、人生の転機が訪れます。それが、高畑勲さんと宮崎駿さんとの出会いです。2人に出会った鈴木さんは、これまで出会った人物と異なる興味を抱きます。出会った当初、鈴木さんの事を2人は認めてくれませんでした。そこで、鈴木さんは、なんとかして2人に認められようと努力します。それは、鈴木さんにとってこれまでとは違った意味あいを持った努力だったと思うのです。

これまでの鈴木さんは、「居場所がない」という思いを抱えて生きてきたものの、自分の居場所を積極的に作るための努力はほとんどしていませんでした。しかし、2人に認められようと努力した結果、「2人の作品を作りたい」という思いが芽生え、結果的に2人の作品を作るための場所を作ることになるのです。こうして生まれたのが、スタジオジブリなのです。スタジオジブリを作ったことで、鈴木さんは初めて自分の居場所を手に入れたのです。

居場所がない男が作った居場所「スタジオジブリ」

スタジオジブリは、宮崎駿さんと高畑勲さんの作品を作るために生まれたスタジオなのですが、もしかしたら2人が作品を作るのに、スタジオジブリは絶対に必要ではないのかもしれません。しかし、鈴木敏夫さんにとっては、スタジオジブリが絶対に必要なのです。

なぜなら、スタジオジブリは「自分の居場所がない」という思いを抱えて生きてきた男が、初めて自分の意志で作った居場所だからです。鈴木さんは、これまで様々な映画を作り、その度に様々なプロモーションを仕掛け、大ヒットさせてきましたが、それは全て自分が作った居場所を守りたくてやってきたことなのかもしれない、と言ったら言いすぎでしょうか。

本書には、今まで語られてこなかった素顔の鈴木敏夫が語られています。
スタジオジブリの作品に興味がある人や、スタジオジブリの仕事に興味がある人に、ぜひ読んでいただきたい1冊です。

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