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書評「徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男」(木村元彦)

   

ようやく、読むことが出来ました。

風間八宏(名古屋グランパス監督)、高木琢也( V・ファーレン長崎監督)、森保一(サンフレッチェ広島監督)、松田浩(JFA地域ユースダイレクター兼JFAトレセンコーチ)、森山佳郎(サッカーU-17日本代表監督)、片野坂知宏(大分トリニータ監督)、などなど、名前を挙げた人物は皆サンフレッチェ広島で活躍した選手たちです。

現在、日本代表やJリーグで活躍する彼らの背後には、1人の人物の存在がありました。その名は、今西和男さん。サンフレッチェ広島で長年GMを務め、「人を育てて勝つ」サンフレッチェ広島の現在のチームの基盤を作った人物です。しかし、今西さんの人生は、サンフレッチェ広島のGM退任後に思わぬ方向に転がります。

2007年にFC岐阜のGMに就任し、2008年以降は社長も兼務。前任の経営陣の積み残した様々な負債を解消すべく、今西さんは東奔西走します。しかし、事態はなかなか好転せず、2012年のJリーグクラブライセンス導入前に、資金不足に陥る可能性があったということで、経営責任を問われ、今西さんは社長を解任されます。しかし、解任された際に、今西さんが個人保証で借りた1億5000万円の個人保証は外されていませんでした。

今西さんは日本サッカーにどのような功績を残したのか。そして、FC岐阜の在任期間中に今西さんの周りにはどんな事が起こっていたのか。本書「徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男」は、今西さんの足跡を辿りながら、日本サッカーが抱える問題点をあぶりだした1冊です。

光を理解するために、陰の物語を読む

本書の著者である木村元彦さんは、「オシムの言葉」や、我那覇和樹のドーピング冤罪事件、大分トリニータの溝畑元社長など、不遇を囲った人、逆風に立ち向かう人、そして世間から「失敗だ」「あいつのせいだ」とレッテルを貼られた人を、一貫して描いてきた。特に木村さんのJリーグに関する作品を読んでいると、日本サッカーはJリーグ開幕以降の隆盛によって、失ったものも大きいと感じます。

今西さんがFC岐阜を追われるきっかけは、クラブライセンス制度の導入です。本書には、Jリーグがクラブの経営について強く意見しただけでなく、クラブの人事に踏み込んだ事が指摘されています。ただ、本書を読んでいると、当時のJリーグは参画しているクラブの経営については改善点を指摘するだけで、改善をサポートしていく姿勢が希薄だったことがうかがえます。その結果、現場で改善に尽力していた今西さんは責任を問われ解任。顧問という形でチームに残ったものの、チームに席もなく、人生をかけて尽力したクラブを追われるようにして去ったのです。これまでの功績から考えると、あまりにも寂しい去り際でした。

クラブライセンス制度の導入を推進したのは、現在Bリーグのチェアマンを務めた大河正明さん。当然、BリーグにもJリーグの経験を踏まえて、ライセンス制度が導入されています。先日、B2の鹿児島レブナイズに対して、公式試合安定開催融資申請について審議し、1500万円を上限として承認したというニュースが報道されました。僕はこのニュースを聞いた時に思い出したのが、FC岐阜の件でした。Bリーグには、過去の経験を踏まえて、きちんと経営がサポートされることを望みます。そして、経営者の責任は問われても、人間性まで否定するようなことになってはならない。そう思うのです。

日本サッカーの歴史がきちんと伝えられていない

本書を読んで痛感したのは、日本リーグ時代から日本サッカーを支えた人が、お金がないけど必死に支えてくれた基盤によって、今の日本サッカーは成り立っているのですが、日本サッカーの歴史を知らない人は、歴史を作ってきた人を邪険に扱っていると感じる事があります。幸い、僕はぎりぎり日本リーグ時代を知っている人間です。初めて観に行ったサッカーの試合は奥寺康彦さんの引退試合でしたし(国立はメインスタンドも埋まってなかったと思う)、平塚競技場で観た日産対フジタの試合の芝生は黄色でした。こういう時代を支えてくれた人の話を、誰かが語り継がなきゃいけないし、僕も知っている話を少ししたほうがいいなと思いました。

日本サッカーに注目が集まることによる強烈な光は、強い陰も創り出します。僕は光の事も理解したいなら、陰の話も知らなければならない。そう思っています。ぜひ、多くのサッカーファンに読んでもらいたい1冊です。

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