リオネル・メッシという選手にしか出来ない役割

先日、データスタジアムでサッカーのアナリストとして活躍されている久永さんと、フェンシング日本代表のアナリストを務めながら、日本スポーツアナリスト協会の理事としても活動されている千葉さんと食事をしたときの話です。

久永さんのサンフレッチェ広島が2連覇した時の分析担当コーチだった時の話や、千葉さんのフェンシングの分析に関する話など、4時間もの間、話が尽きることはなかったのですが、3人で話していた時、ふとした思いつきで僕が話したことについて、書きたいと思います。それは、「リオネル・メッシの役割」です。

メッシが望むなら守備でも世界最高の選手になれる

リオネル・メッシという選手の力に疑問の余地はありません。10年近く世界最高の選手の1人として活躍し続け、数多くのタイトルを獲得してきました。記憶に新しいところでは、2018年ロシアワールドカップへの出場が危ぶまれたアルゼンチン代表を、負けたら予算敗退という最終戦でハットトリックを達成し、チームをワールドカップ出場に導く活躍を披露しました。

メッシという選手があまりにも素晴らしい選手なので、どうにかしてケチをつけようとする人がいます。守備をしない、全力で走らないなど、メッシのプレースタイルを批判する人は、世界中にいます。確かに攻め込んでくる相手選手を追いかけるメッシの姿をほとんど観たことがありませんし、メッシのプレーを想像する時、ボールを取り返すメッシを思い浮かべる人はほとんどいません。ただ、メッシについて、昨シーズンまでFCバルセロナの監督を務めていたルイス・エンリケは「メッシが望むなら守備でも世界最高の選手になれる」と語っていたことは、付け加えたいと思います。

メッシの役割は「相手の得意技を打ち砕くこと」

では、メッシの役割は何か。メッシという選手は、何を求められているのか。僕が久永さんと千葉さんに話したメッシの役割は、「相手の得意技を打ち砕くこと」です。

メッシという選手の凄さを証明したのは、2016-17シーズンリーガエスパニョーラ第33節のレアル・マドリー戦です。戦前の予想ではレアル・マドリー有利と言われた試合で、メッシはフィールド中央に位置取り、ある選手との対決を積極的に挑みます。ある選手とは、ブラジル代表のカゼミーロ。現在世界最高のMFの1人です。

ボールが奪えて、ヘディングも上手く、ボール扱いも上手い。中央のMFとしては、文句がつけがたい選手です。現在世界最強と言われているブラジル代表を支えているのは、ネイマールではなく、カゼミーロです。レアル・マドリーの強さを支えているのは、ボールを奪えるカゼミーロの存在が大きいと、僕は感じています。

レアル・マドリーの方が強いことが分かっていたFCバルセロナは、敢えてメッシをカゼミーロにぶつけます。相手の強みであるカゼミーロに対して、自分たちの最強の武器であるメッシをぶつけ、相手の強みを打ち砕こうとしたのです。カゼミーロを打ち砕けば、レアル・マドリーというチームの強みも崩れる。そう考えたのだと思います。

メッシは見事期待に応えてみせます。カゼミーロに積極的にドリブルで勝負を挑み、何度も抜き去ってみせます。カゼミーロは前半13分にイエローカードをもらってしまい、メッシに強くアプローチ出来なくなります。これによって、レアル・マドリーは普段のプレーが出来ず、次第にFCバルセロナが望んでいた乱戦に持ち込まれてしまいます。終了間際に決勝点を奪ったのはメッシ。まさに、メッシの凄さを見せつけた試合となりました。

勝負で大切なのは「弱点をつく」ことではなく「武器で勝負する」こと

優位に戦おうと考えると、自分たちの強みを相手の弱点にぶつけようと考えがちです。一発勝負ではそういう戦い方もありですが、一番相手にダメージを与えられる戦い方は、「相手の得意技を打ち砕くこと」です。

どんなにマークされていても、どんなに警戒されていても、対応出来ない武器で相手の得意技を打ち砕く。力がある選手やチームにしか出来ない戦い方ですが、この戦い方が一番相手にとってダメージを与えられます。勝負はじゃんけんのように単純ではありません。強いチョキが、弱いグーを切り裂くこともあるのです。

以前イチローが「相手の勝負球を狙って打ちにいく」と語っていたことがあります。野茂英雄が強打者相手にストレートで勝負を挑んでいたことがありますが、あれは「ストレートで相手をねじ伏せたら、相手にダメージを与えられる」と考えていたからだと思います。「二度と自分には勝てない」と思わせるくらい、徹底的に自分の武器を使って、差を見せつける必要があるのが、勝負の世界です。メッシは、それをカゼミーロに仕掛けてみせたのです。

メッシ対策を打ち破られるのが一番相手にダメージが残る

メッシという選手は、10年近くもの間、様々な相手チームの対策を受けてきました。その度に、自らのプレーの引き出しを使って、相手のメッシ対策を打ち破ってきました。メッシに求められているのは、相手がどれほどのメッシ対策を打ち破ってきても、それを打ち破り、ゴールを決めること。それは、相手の得意技や相手の準備を打ち砕くことでもあり、相手にとって最もダメージを与えることでもあります。メッシという選手はその事が分かっていますし、チームメイトもメッシの凄さを理解しています。だからこそ、チームメイトはメッシが走らなくても、守備をしなくても、我慢出来るのです。

今日はエル・クラシコが放送されます。僕がエル・クラシコで注目しているのは、「メッシは再びカゼミーロを打ち砕くのか」それだけです。メッシがカゼミーロを打ち砕けば、FCバルセロナの勝ち。カゼミーロがメッシを封じれば、レアル・マドリーの勝ち。カゼミーロだって、前回あれだけやられて黙ってはいないはずです。

どんな試合になるのか、楽しみです。

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