書評「BRUTUS 山下達郎のBRUTUS SONGBOOK」

マガジンハウスWebサイトより

1993年、TOKYO FMで、日曜日14時から一つのラジオ番組が始まりました。

そのラジオ番組とは、「山下達郎のサンデーソングブック」。「古くても良質な音楽」を、山下達郎さんが自ら音質を調整した上で、「最高の選曲。最高の音質」で届けるこの番組は、いまや、TOKYO FMの人気番組として、山下達郎ファンだけでなく、音楽好きの支持を集めています。僕もこの番組の大ファンで、ハガキは投稿した事はありませんが、毎週日曜日14時に家にいれば必ず聴きますし、生で聴けなくても、radikoで必ず聴いています。

流行りの音楽はかからないし、ファンからの投稿はメールでもSNSでもなくハガキのみ。ファンからの質問には「そんな事を聞いてどうするの」と半ば呆れつつ、誠実に、出来る事をやる。本人の都合で放送が中止になったことが一度もないという事からも、この番組に対する山下達郎さんの姿勢が伝わってきます。

そんな、「山下達郎のサンデーソングブック」の25周年を記念して、1冊の本が出ました。BRUTUSによるサンデーソングブック特集、その名も「山下達郎のBRUTUS SONGBOOK」。山下達郎さんが取り上げたソングライターやミュージシャンに関する詳細な解説、山下達郎へのインタビュー、サンデーソングブックのスタッフによる座談会など、サンデーソングブックのリスナーにとっては、永久保存版ともいってよい1冊です。

「Oldies but Goodies」

サンデーソングブックが教えてくれるのは、流行りでもないし、新しくもないけれど、人の心を打つ音楽があるということです。テクノロジーの発達により、リズムも機械で合わせ、歌の音程は調整するのが当たり前。そんな現代からすると、一発録音で、歌も演奏も同時に録音し、テープ録音だから音も歪むような環境で録音された音楽は、むしろ新しく感じます。

時代の波を乗り越える音楽とは、どのようなものなのか。作っては捨て、忘れられる音楽が大多数なのに、長く人々に愛される音楽とは何か。もしかしたら、山下達郎さんは、この番組を続けながら、自身が作る音楽を、「長く愛される音楽か」「自分の音楽はこの番組で選曲する音楽と比べて恥ずかしくないか」と比較しながら、ミュージシャンとしての活動を続けてきたのではないか。そんな事を考えました。

常に等身大の姿でリスナーに接する

そして、山下達郎さんは、サンデーソングブックというラジオ番組をやっていなければ、現在のような熱い支持を受けていなかった気がします。

山下達郎さんは、テレビに出ない、本は書かない、武道館でやらない(一度だけイベントでライブをやりましたが)という、ポリシーを掲げ、決して多くの人に支持されやすい活動を続けてきたミュージシャンではありません。

しかし、毎週日曜日に、良質な音楽とともに、夏になれば「さよなら夏の日」をかけ、冬になれば「クリスマスイブ」をかけるといった具合に、自身の音楽をかける事が、山下達郎というミュージシャンの音楽を、人々の心につなぎとめる効果があったような気がします。

最近、番組には20代のリスナーが増えているそうですが、本書を読んでいると、その理由がよく分かります。

メインストリームではなくとも、長くミュージシャンとしての活動を続けていくにはどうしたらよいのか。広く、長く、ファンに支持されるためにはどうしたらよいのか。自分自身がやると決めたことをやり続けていくにはどうしたらよいのか。多くの人が様々な意見を述べますが、多くの人が憧れるような生き方をしているのが、山下達郎さんだからではないのでしょうか。

そして、山下達郎さんは、決して偉そうに振る舞ったり、上から目線で物事を語る人ではありません。常に1人の市民としての目線で、冷静で、時に熱く、そして時に(ちょっと)皮肉を交えて、物事を語る。そんな等身大の姿勢も、愛される秘密だと思います。

僕も、サンデーソングブックを通じて、山下達郎さんから多くの事を学びました。そして、これからも、多くの事を学べるはずですし、何よりごきげんな音楽が日曜日の14時に聴けることを、これからも楽しみにしたいと思います。

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