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勝敗を分けたベンチの温度差。UEFAチャンピオンズリーグ決勝 アトレティコ・マドリー対レアル・マドリー レビュー

      2014/07/22

UEFAチャンピオンズリーグの決勝戦は、アトレティコ・マドリーとレアル・マドリーのマドリードダービー。史上初の同じ都市に本拠地を持つチーム同士の対決です。

レアル・マドリーは怪我を抱えているぺぺはベンチでしたが、クリスティアーノ・ロナウドは先発。出場停止のシャビ・アロンソのポジションには、ケディラが入りました。アトレティコ・マドリーは、怪我で出場が危ぶまれたジエゴ・コスタはしましたが、アルダ・トゥランは欠場。それ以外は、いつものメンバーが名を連ねました。

アトレティコ・マドリーの守備の凄さ

まず、主導権を握ったのはアトレティコ・マドリーの守備でした。レアル・マドリーが攻撃を仕掛けようというポイントに素早くアプローチを仕掛け、ボールを満足につながせませんでした。

アトレティコ・マドリーの守備が凄い点は、僕からみて2点あります。1つ目は、ボールを奪いにいくタイミングです。そのタイミングは、攻撃の選手が、トラップしてボールを足から離した瞬間と、それとボールしかみておらず、相手の状況が把握できていない時です。その瞬間を見逃さず、相手との距離を縮めます。それも1人ではなく、2人、3人と。

このスピードと、連動性がアトレティコ・マドリーの凄さです。そして、一気にボールを奪ってしまう。モウリーニョ時代のインテル以来、「守備でゲームを作る」チームが現れたのだと感じました。後半の15分にレアルが選手交代をしてくるまでは、完璧にアトレティコ・マドリーがゲームを支配していました。アトレティコ・マドリーの守備に、レアル・マドリーの選手たちがイライラする場面が前半は特に見られました。

流れを変えたアンチェロッティの采配

しかし、アンチェロッティの采配と交代策が、流れを変えました。

まずはハーフタイムで選手を落ち着かせ、冷静に対応するように指示したのだと思います。後半からレアル・マドリーは、アトレティコ・マドリーの守備に冷静に対応し始めます。そして、チームが落ち着いたことを確認してから、ケディラとコエントランを下げて、一気にマルセロとイスコを投入。これ以降、レアル・マドリーが優位にゲームを進められるようになります。

この試合は、シャビ・アロンソが出場停止のため、ケディラが代役を務めましたが、効果的なプレーは出来ませんでした。シャビ・アロンソは効果的なパス回しでレアル・マドリーの攻撃の起点になれる、心臓とも呼べる選手です。ケディラは、どちらかというと豊富な運動量でチームを活性化させる選手で、選手のタイプが異なります。ケディラがうまくボールをもらえず、シャビ・アロンソのようにパスを回せないため、なかなか効果的な攻撃が出来ませんでした。

しかし、ケディラに代わってイスコを投入し、ケディラのポジションにモドリッチを入れたことで、ボールがスムーズに動くようになりました。イスコとモドリッチが近くで短いパスを交換することで、守備が動かされます。また、イスコはアトレティコ・マドリーの守備の間でボールを受け、ロングパスをサイドの選手に散らすことで、守備が広がり、相手との距離を詰めることが出来なくなっていきます。

そして、マルセロの投入も効果的でした。この試合はディマリアが絶好調で、レアル・マドリーから見て左サイドから何度かチャンスを作ることが出来ていました。マルセロは攻撃の時にモドリッチに近いポジションをとり、イスコとモドリッチをサポートします。1点を先制した後、4-5-1で守っていたアトレティコ・マドリー。中央のエリアは3人の選手で守っていましたが、攻撃の時にマルセロが中央に入ってくることで、中央のエリアの人数が同数になり、守備が混乱し始めました。

そして、マルセロが入って以降、ディマリアはドリブルで仕掛けるのではなく、左サイドからクロスボールを送るプレーを増やします。これも、アトレティコ・マドリーの守備の特徴である「距離を縮める」守備を広げるという狙いがみえました。相手が距離を詰めて来る前に、攻めてしまおうというのが狙いです。

中央で細かくボールを回してマークをずらし、サイドに展開して右に左に振り回す。辛抱強くこうした攻撃を続けた結果、ロスタイムのセルヒオ・ラモスのゴールにつながりました。

猛攻を支えたレアル・マドリーのセンターバック

レアル・マドリーの後半ラスト15分の攻撃の迫力を生んだ陰の立役者は、僕はセルヒオ・ラモスとラファエル・バランの2人のセンターバックだと思います。セルヒオ・ラモスのCKを生んだ一連の攻撃も、バランのパスカットから始まりました。セルヒオ・ラモスは、相手のクリアボールを拾うため、ほとんどボランチの位置でプレーし、アトレティコ・マドリーの1トップのビジャには、バランが1人で対応します。

1つ間違えれば大ピンチになる局面で、この2人のセンターバックはミスなくアトレティコ・マドリーの陣地でボールを奪い続け、レアル・マドリーの猛攻を支え続けました。ボールを前で奪う能力と、絶対にボールを奪おうとする気持ちの両方がなければ、出来ません。世界のセンターバックのレベルの高さを、改めて感じました。

ベンチの選手が戦ってなかったアトレティコ・マドリー

最後は、延長線に入って動けなくなったアトレティコ・マドリーに対して、レアル・マドリーが個人技で局面を打開し、3得点を奪取し勝負を決めました。気になったのは、アトレティコ・マドリーとレアル・マドリーのベンチの温度差です。

レアル・マドリーのベンチは、控えの選手もベンチから立ち上がって声援をおくり、ピッチの一挙手一投足に大きなアクションで反応を示していました。ベンチも一緒になって戦っている。テレビで観ていても、レアル・マドリーの選手たちが心からタイトルを欲している気持ちが伝わってきました。

一方、アトレティコ・マドリーのベンチを観ていると、シメオネ監督の強烈なアクションは目についたものの、ベンチにいる選手は、じっと座って動きません。そんなシーンが幾度と無く目につきました。レアル・マドリーと比べると、アトレティコ・マドリーのベンチのアクションは、対照的でした。

アトレティコ・マドリーの選手のリアクションを見ていると、怪我をおして強行出場したジエゴ・コスタの件が大きく影響している気がしました。アトレティコ・マドリーは、11人全員がハードワークすることで、相手チームを凌駕してきたチームです。特別扱いされている選手は、誰一人存在しませんでした。この試合までは。

しかし、怪我で万全のコンディションではないジエゴ・コスタが、強行出場。そして、10分で交代。これは、アトレティコ・マドリーの選手に、小さくない影響を与えたはずです。最後の最後で、シメオネは選手を特別扱いしてしまいました。シメオネが選手を特別扱いしたことが、ジエゴ・コスタに比べてコンディションのよい選手のモチベーションを下げたのではないか。僕は、そう感じました。

こういうビッグゲームでは、ベンチメンバーのリアクションといったディテールが勝敗を分けます。チームの力を結集して戦ってきたアトレティコ・マドリーが、最後の最後にチーム一丸となって戦えなかった。それが、アトレティコ・マドリーの敗因のような気がしています

相手が戦術を変更すれば、柔軟に対応する選手と監督。見どころのある決勝戦でした。
最後の最後に冷静さを取り戻し、強さをみせつけたレアル・マドリーと、持てる限りの力を尽くしたアトレティコ・マドリー。
チャンピオンズリーグのファイナルにふさわしい試合でした。

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