書評「千葉ジェッツの奇跡 Bリーグ集客ナンバー1クラブの秘密」(島田 慎二)

2016年に開幕したBリーグで、年間観客動員数13万5000人を突破し、1試合7327人という最多動員数を誇るのが千葉ジェッツです。「GO JETS!」の大きな声が船橋アリーナに響き渡るのは当たり前の光景のように感じますが、5年半前、クラブは経営不振の中にあり、クラブの銀行口座にはほとんどお金が残っていない状況でした。そんなクラブ立て直しのため社長に就任したのが、コンサルタントの立場でかかわっていた島田慎二さんです。

島田さんはいかにして倒産寸前のスポーツクラブを立て直し、いかにして人気クラブに育て上げたのか。5年間でいかにしてチームを変えたのか。本書「千葉ジェッツの奇跡 Bリーグ集客ナンバー1クラブの秘密」は、島田さんが実践してきた経営手法と、チームがどのように変わっていったのかについて描かれた1冊です。

きちんとチームを経営する

島田さんがチームを再建するために行ったことは、特別な事ではありません。

会社を運営していくからには、まずは経営を安定させ、社員に給料をしっかり支払うという責任を果たすことを最優先にしなくてはならない。また、地域との関わりを密にしながら会社やチームの社会的な価値を上げ、サポートを得られる体制を構築すべきなのだ。バスケットボールのクラブ運営は、これらをすべて行って、初めてビジネスとして成立する。

島田さんが行った事は、経営者であれば、多くの経営者が実行している事だと思います。ただ、島田さんは、丁寧に、着実に実行したのです。そこが他の人と違うところかもしれません。

経営とは、目標設定をし、現況を見極めてプロセス管理を行い、やるべきことを1つずつこなして成果を上げていくことだ。この連続で会社は成り立っている。

経営手法を選手やコーチングスタッフのマネジメントに用いる

千葉ジェッツは、選手・コーチングスタッフのマネジメントにも、経営の手法を用いています。目指すべきチームの理念を定め、目標を設定し、やるべき事を明確にし、実行する。千葉ジェッツが素晴らしいのは、チームの理念、目標、やるべき事を、Webサイトに公開し、誰にでも見れるようにしている事です。千葉ジェッツのバスケスタイルを「アグレッシブなディフェンスから走る」と定義し、「勝利のために」「スタンス」「練習」「自信」「目標設定」という5つの項目に対して、チームやスタッフがやるべき事を明確にしています。

スポーツクラブは経営者で変わる!

島田さんの著書を読んでいると、スポーツクラブであろうが、製造業であろうが、会社を経営するということにおいて、必要な事は同じなのではないかと感じました。最近、スポーツクラブによるスタッフ募集の求人情報を目にする機会が増えました。しかし、求人内容を確認すると、募集する人財に何を求めているのか明確でない求人がほとんどで、ただ「手が足りない」から募集しているような求人が大半というのが現状です。

スポーツクラブこそ、セールス、イベント、プロモーション、チームサポートという各チームごとに担当を分けないといけないはずなのに、セールス担当者がイベントも企画し、プロモーションも手掛け、といった事が起こり、結果的に自分が何をしているのか分からかったり、どうしたら評価されるのか分からないという事につながりがちです。

島田さんは、普通の企業の経営と同じ事をスポーツクラブで実践しています。ただ、実践していることが他の企業よりきちんとしているので、観客動員数日本一といった具体的な成果として出ているのだと思います。昨今のスポーツクラブの運営を見ていると、行き当たりばったりで、適当にやっているクラブと、経営者がきちんと方針を定め、様々な施策を実行したことで、チームを立て直し、目に見える成果を出したチームが増えてきました。コンサドーレ札幌の野々村社長、V・ファーレン長崎の髙田社長、アルバルク東京の林社長、琉球ゴールデンキングスの木村社長、横浜DeNAベイスターズの池田元社長など、成果を出しつつある経営者もいます。スポーツクラブは経営者で変わるのです。

本書を読んでいると、スポーツクラブにおける経営者の大切さを改めて実感します。プロスポーツクラブだって、普通の会社です。軽視されがちな、スポーツクラブの経営者のという仕事の大切さを教えてくれる1冊です。