日常を旅する楽しさ。書評「居ごこちのよい旅」(松浦 弥太郎 )

2014/09/30

「ドアを一歩出れば旅である」。

本書のあとがきに掲載されていた言葉を、僕は他の本で誰かが語っていたのを読んだことがある。箭内道彦さんは、「僕にとって原宿から渋谷に移動するのは、東京からニューヨークに移動するようなものだ」というようなことを語っていました。

暮しというのは、旅で出来ているのかもしれない。そんな事を感じさせてくれるのが、本書「居ごこちのよい旅」です。本書は、2005年からおよそ2年間、雑誌「COYOTE」に連載されていた松浦弥太郎さんの文章と、若木信吾さんの写真による紀行エッセイ「グッディ!」をまとめた1冊です。

日常の旅

「グッディ!」の副題は、「地図は自分で歩いて作る」。ガイドブックやインターネットを使わず、待ちを訪れ、1時間もあるけばひと回りできるような狭いエリアを何日もかけて歩き、聞いたこと、出合ったこと、観察したことを地図に描き、文章に残し、写真に残しています。

サンフランシスコ、ハワイ、ニューヨーク、パリ、バークレー、プリムフィールド、中目黒、バンクーバー、ロサンゼルス、台湾、ロンドン。街を歩き、行き交う人々の声に耳を傾け、お気に入りのカフェや古本屋を探す。そんな行動から描かれているのは、華やかな観光スポットではなく、日常の風景です。

「ブラタモリ」が教えてくれたこと

本書を読んでいると、旅に距離は関係ないのかもしれないと思ったりします。以前、NHKで「ブラタモリ」という番組が放送されてました。古地図を手に、東京や横浜の街を歩き、独自の視点によるユニークな街歩きを紹介した番組で、僕は毎回放送を楽しみにしていました。

「ブラタモリ」が教えてくれたのは、普段の自分たちの生活も、見方を変えれば、面白いものになるということ。歩いて、見て、聞いて、感じて、日々の暮らしそのものを、豊かにする。それは、十分に旅と言えるのだ。そんな事を感じたのです。

そんな、「ブラタモリ」に通ずる楽しさを、本書は教えてくれます。派手な観光地や、絶景が出てくるわけではありませんが、読み終えると旅に出たくなる。そんな1冊です。

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