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書評「〆切本」

   

〆切を守る。約束を守る。期限を守る。社会人として、人として、きちんと守るべきと言われている事を、守れない人が多い仕事があります。それは、作家。原稿の締め切りを守らない。逃げる。逃げないように、別荘やホテルに止まって書く。それでも間に合わない。そしてあろうことか作家たちは、そんな自分たちの「締め切り守らない自慢」をエッセイにして、人々を楽しませてきました。僕も、「人としてダメじゃないか」と思いつつも、そんな作家たちが〆切を前に七転八倒する姿を、楽しんできた1人です。

どんな作家をも苦しませる「〆切」。そんな〆切にまつわる作家の文章を集めてみたら、1冊の本になるんじゃないか。そんな事を考えた人が、面白い本を出版しました。本書「〆切本」は、夏目漱石, 江戸川乱歩, 星新一, 村上春樹, 藤子不二雄Ⓐ, 野坂昭如といった総勢90人以上の作家の「〆切」にまつわる苦悩、おかしみを描いたエッセイや漫画を、1冊の書籍にまとめた1冊です。

もう一人の主人公

本書には、登場人物が2人います。もちろん原稿を書く作家が主人公ですが、もう一人の登場人物こそ、本書の存在を面白くさせています。それは、編集者です。なんとか作家に原稿を書いてもらおうと、あの手この手を尽くす。そんな編集者の姿も、本書では詳しく描かれています。そして、本書を作ったのも、編集者です。作家の原稿を集め、構成を考え、1冊の書籍としてまとめる。編集者の力がなくては、書籍は成り立たない。そんな編集者の声が聞こえてきそうです。

人間の魅力

本を読む人が減ったと言われています。紙の本は年々売上を減らしているそうです。しかし、文字や漫画というコンテンツで人を楽しませる作家や、作家が書いたコンテンツをより面白くさせる編集者の存在は、仕事の仕方は変わるかもしれませんが、当分なくならないのではないかと、本書を読んでいて感じました。

機械は情報を入力すれば、自動的に計算し、アウトプットしてくれます。しかし、人間は機械とは違って、簡単にアウトプットを作ってはくれません。人間はサボるし、日によって成果が違います。システムに人間をあわせようとすると、人間が持つ「あいまいさ」は邪魔になります。しかし、人間のもつ「あいまいさ」が、未来の世の中を考える上で、人間の武器になっていくんじゃないかと思うのです。一見無駄に思えたり、不必要に思える事にこそ価値があり、武器になる。僕はそんな気がしていますし、本書を読んでいると、人間のもつおかしみに気付かされます。

直接仕事に役立つ書籍ではありません。ただ、読み終わると、なぜかホッとしたきもちになる。そんな1冊です。

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