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書評「独裁力」(川淵三郎)

      2017/02/11

2016年9月に開幕したBリーグの開幕戦に、衝撃を受けた人も多いと思います。僕もその1人です。LEDコート、天井から吊り下げられたスクリーン、アーティストによるライブ、満員に埋まったアリーナは、今までバスケットボールを観たことがない人に、バスケットボールへの興味を促すのに十分なインパクトがありました。僕のブログを読んでくださっている方の中にも、Bリーグを観に行ったという人が、何人かいらっしゃいます。

開幕戦のクロージングセレモニーで、1人の人物が挨拶することになり、名前を呼ばれた時、残っていた観客から、自然とスタンディングオベーションがおきました。観客は皆知っています。この人がいなければ、Bリーグが開幕する事はなかったからです。名前を呼ばれたのは、川淵三郎さん。Jリーグの初代チェアマンでもあった川淵さんの尽力がなければ、Bリーグの開幕どころか、2016年リオデジャネイロ五輪で躍進したバスケットボール女子代表が、オリンピックに出場することも出来なかったかもしれません。

過去10年間に渡り国内に異なる2つのトップリーグが並立していた状態が問題視され、日本バスケットボールは、2014年11月に日本代表チームが国際試合への出場停止を命じられました。窮地の事態を受け、日本バスケットボール協会(JBA)は改革を迫られました。並立するリーグの統合、JBAのガバナンス整備をはじめ、団体間の軋轢などで長年にわたり停滞していた問題を短期間で解決させた裏側には、どんな物語があったのか。川淵さんは、直面する問題にどのように立ち向かったのか。そして、困難に直面した時、変革が必要な時に、リーダーとしてすべきことは何か。時に「独裁者」と呼ばれた川淵さんの考えをまとめたのが、本書「独裁者」です。

あるべき姿を示す

Bリーグ変革の経緯は、こちらのWebサイトを読んで頂くとして、川淵さんがBリーグの変革にあたって行ったことは、主に2点です。

1点目は、「あるべき姿(ビジョン)」を示した事です。Bリーグは理念として、以下の3点を掲げています。

世界に通用する選手やチームの輩出:日々、切磋琢磨する土俵を作り世界に通用する選手やチームを輩出することです。それがB.LEAGUEの使命であり、日本のバスケットボール競技力の底上げ・競技人口の裾野の拡大を図ります。

エンターテイメント性の追求:B.LEAGUEでは徹底的にエンターテイメント性を追求して参ります。勝っても負けても試合を見に行って楽しかった。「今日のあのプレーは良かったね」「今日のあの演出は良かったね」と言っていただけるようなエンターテイメント性を重視した演出に取り組んで参ります。

夢のアリーナの実現:体育館ではありません。「アリーナ」です。夢のアリーナを作り、地域に根差したスポーツクラブになっていく、非日常の空間を存分に楽しめる…試合を楽しむだけではなく、スポーツを通して人生を楽しむことができるような環境を提供し、B.LEAGUEを盛り上げて参ります。

B.LEAGUEの3つの使命」より

担当者の利害を超えて、誰もが憧れる姿、すなわち「あるべき姿」を掲げること。川淵さんは、目指すべき道標を掲げることを、まず最初に行いました。あるべき姿に向って進むことで、目の前の細かい問題も自ずと解決できる。そう考えたし、あるべき姿に向って進むほうが、人間はパワーが出る。その事を知っているからだと思います。なお、川淵さんは、あるべき姿を明文化するために、規約の策定には特に時間をかけているそうです。規約を細かく策定することで、不測の事態にも対応できる。そう考えているからです。

嫌われる事を恐れず、はっきりとメッセージを発信する

2点目は、「嫌われる事を恐れず、はっきりとメッセージを発信する」ことです。川淵さんは、はっきりとした物言いから、時にメディアやファンからバッシングを受ける事もあります。ただ、嫌われることやバッシングを恐れず、はっきりと語るからこそ、川淵さんのメッセージは心を打つのだと思います。以前、川崎フロンターレの風間監督が「孤立するくらい極端な事を言わないと、物事は変わらない」と語っていたことがあるのですが、川淵さんの発言からも、嫌われる事を恐れず、自分の信じる道を進もうとする強さを感じます。

私利私欲や功名心のために仕事をしない

なぜ、川淵さんは他の人には出来ないことが出来るのか。それは、川淵さんがお金のために、自分の功名心が最優先事項ではないからだと思います。目の前の問題を解決するために、もっとスポーツでよい社会にするために、何が出来るのか。純粋に考えられる人などと思います。本書を読んでいると、川淵さんが真っ直ぐに自分の信じる道を進もうとしてきた事が分かります。

川淵さんから、学べることはたくさんあります。ぜひ多くの人に読んで頂きたい1冊です。

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