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資本主義経済の奴隷にならない方法。書評「田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」」(渡辺格)

      2014/10/14

岡山県勝山に一風変わったパン屋があります。その名は、「タルマーリー」。岡山駅から電車で2時間以上かかる、人口8,000人ほどの小さな街にあるパン屋で売られているパンは、平均単価400円。コンビニで売られている100円のパンの4倍の単価で、売っているのです。

しかも、週に3日は休み。毎年1ヶ月の長期休暇をとる。これだけでも十分変わっていますが、そんなパン屋「タルマーリー」の店の経営理念は「利潤を出さない」こと。

なぜ、そんな考えに至ったのか。そこには、2つの要因がありました。1つは、パン作りの相棒である「菌」の声にしたがって、自分たちの仕事を組み立てたこと。もう1つは、資本主義という経済原理の元になった、マルクスの「資本論」の考えに基づいて、自分たちの仕事を組み直したこと。この2つの要因が、タルマーリーを他とは違う「どこにもない」パン屋にしているのです。

そんなタルマーリーが提唱するのが、「腐る経済」。「腐る経済」とはどういうことなのか。なぜ、「腐る経済」という考えに至ったのか。その事を丁寧に説明しているのが、本書「田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」」です。

※タルマーリーは、渡辺格さんの体調不良のため、現在一時休業中です。体調が回復して、営業が再開されるのを、首を長くして待ちたいと思います。

「商品」とはなにか

本書には、資本主義がどのような仕組みで成り立っているのか、丹念に説明しています。僕も読む前は頭で理解しているつもりでしたが、読み終えると「自分は資本主義の事を全くわかっていなかった」という事に気づかされました。

例えば、本書では「商品」とはなにか、下記のように説明しています。

1.使用価値があること

「商品」であるために重要なのは、誰かが欲しがってくれるということだ。この、「誰かが欲しがる、必要だと思う」という性質を、マルクスは、「商品」の「使用価値」と呼ぶ。パンで言うなら、「食べられる」という性質だ。

2.「労働」によってつくりだされていること

世の中には、「使用価値」はあっても、「商品じゃないもの」がある。その代表例が、空気だ。職人がつくったパンも、美容師が女性の髪を着るような、人に対して提供するサービスも、それが「商品」になるのは、そこに「労働」があるからだ。

3.「交換」されること

たとえば、「自分が食べるためにつくるパン」は「商品」ではない。「食べられる」という「使用価値」があり、「労働」によってつくりだされるけれど、そこに「交換」がないからだ。そして、つくったパンと「交換」するものの量の大きさを、マルクスは「交換価値」と呼ぶ。

「労働力」とはなにか

僕のようなサラリーマンにとっての「商品」は、「労働力」です。「労働力」は、お金と交換される「商品」の一種ではありますが、分けて考える必要があります。本書では、「労働力という商品の特徴」について、下記のように説明しています。

1.買い手は、資本家(経営者)に限られる

「労働力」という「商品」を買うのは資本家だけだ。その時資本家にとっての「使用価値」は、自分に代わって労働者が商品をつくってくれる、ということだ。「商品」をつくるための特殊で便利な「商品」が、「労働力」というわけだ。

2.「交換価値」は給料

「労働力」も「商品」である異常、「交換価値」をもっている。それは、「労働力」の「価格」、つまり「給料」だ。「給料」は、労働者とその家族の生活費と子育ての費用と技能習得にかかる費用を足しあわせた金額になっている。先進国と食らえて途上国の労働者の給料が安いのは、途上国のほうが先進国よりも生活費が安いからだ。

マルクスいわく、資本家は、「労働力」という「商品」をうまく使って「利潤」を手にしています。支払ったコストと、生産された「商品」の差額が利潤です。利潤を増やすには、「商品」の単価を上げるか、コストを下げるかしかありません。コストを下げる方法としては、労働者を同じ単価で長時間働かせるという方法もあります。つまり、労働者を長く働かせるということは、資本主義の論理に基づいて、利潤を増やそうと思ったら、当たり前のことだというわけです。

「生産手段」を持つ

マルクスいわく、資本主義経済の矛盾は、「生産手段」をもたない「労働者」が、自分の「労働力」を売り物にして、生きていくしかないという点にあるのだいいます。この考えを受けて、著者は、ひとりひとりが自前の「生産手段」を取り戻すことが、資本主義の奴隷にならないための有効な手段になるのではないかと語ります。

野菜を育てる、パンを作る、そばを打つ、など。自分の力で、生きるための糧を作る。こうして生まれた「生産手段」と「生産手段」とを繋ぐことで、地域の循環を作り、地域の食と環境と経済をまとめて豊かにする。それが、ひいては自分たちでコントロール出来る経済圏を作るということにつながる。そうすれば、資本主義の渦の中に巻き込まれる必要がないというわけだ。

ただ、「生産手段」を持つということは、簡単なことではありません。著者も疑問を持ちつつも何年も修行し、ようやくパン作りという「生産手段」を身につけました。生産手段を身につけるには時間がかかります。自分にとって「生産手段」というのは何か。本書を読んで、考えさせられました。

本書は、田舎に住むことを推奨する本ではありません。「資本主義経済」を自分たちの身の丈にあった形に置き換えて考え、どう生きていくべきかを考えさせてくれる1冊です。小難しい経済に関する本を読むより、本書を読むほうが、よっぽど理解できます。

資本主義経済を理解したいなら、オススメの1冊です。

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