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一流のボクサーは負ける恐さを知っているから変えられる。書評「変えていく勇気 日本代表であり続けられる理由」(遠藤 保仁)

   

ジーコ、オシム、岡田、ザッケローニ、アギーレ……。サッカー観の異なる何人もの監督の下で、遠藤保仁は、何を変え、何を変えずにプレーしてきたのか。本書「変えていく勇気 日本代表であり続けられる理由」は、プロ17年目にして進化し続ける遠藤保仁が、自身の日本代表でのキャリアを振り返った1冊です。

俺にとっても、チームにとっても「難しいワールドカップ」になるな

本書では、遠藤が自身のプロサッカー生活を振り返って、自身が感じている事を語っていますが、記憶が鮮明だからでしょうか、直近のブラジルワールドカップに関する箇所が特に面白い。例えば、初戦のコートジボワール戦のスタメン発表について、遠藤はこう語っています。

4年間、監督の下でやってきて、前日練習の雰囲気で「くるな」と感じていた。対戦相手の情報も把握し、準備万端だった。

だが、モニターに映し出されたメンバーを見て、ハットした。
えっ?俺の名前が・・・ない。

それまでレギュラーだった今ちゃん(今野泰幸)の名前もスタメンになかった。
(中略)
俺の近くに座っていた今ちゃんは、明らかに落ち込んでいた。
(中略)
俺も落ち込むほどではないが、ガッカリはしていた。これまで試合に出続けていた選手なら誰でもそうだろう。この4年間、ワールドカップで試合に出るためにやってきたのだ。

遠藤がスタメンではなかったのは、前年に行われたオランダやベルギー戦での後半からの起用が成功したことが要因だと言われています。しかし、遠藤は自身の後半投入プランについて、こんな見解をもっていました。

これはワールドカップなのだ。
試合の後半、極端にスローダウンしたり、気が抜けたりする親善試合とはまったく別物だ。どの国も終了の笛が鳴るまで死に物狂いになって向かってくる。そういう試合でドリブラーやスピードのある個の強い選手が前線に入って流れを変えるパターンはよくあるが、ボランチが途中から入って「流れ」を変えるのは簡単なことではない。コンフェデレーションズカップのような公式戦で試しているならまだしも、親善試合でできたからといってワールドカップ本番で同じように機能するとは言い難いのだ。

遠藤は、スタジアムに向かうバスの中、直感的にこう思ったそうです。

俺にとっても、チームにとっても「難しいワールドカップ」になるな。

はからずも、遠藤の予感は的中することになります。

一流のボクサーは負ける恐さを知っている

遠藤は2011年から14年を振り返って、「もっとも難しい4年間だった」と語っています。

過去のどの時代よりもサッカーの事が理解できるようになり、自分のプレーについてだけでなく、サッカーが社会の中でどう受け入れられているか見えてきた反面、日本代表の結果がサッカーの未来やファンや子どもたちにどんな影響を与えるのかがわかってくると、自分の置かれている立場に恐さを感じるようにもなってきたというのです。そして、その恐さから逃げずに戦ってきた4年間だったと、遠藤は語っています。

遠藤は、岡田武史さんに言われたこの言葉が忘れられないと語っています。

一流のボクサーは負ける恐さを知っているから、自分がこれ以上出来ないと思う限界まで練習をして試合に挑む。三流のボクサーは負ける恐さを知らないから、そこまで自分を追い込めない

この言葉を胸に、遠藤は「やれることは全てやってきた」と語っています。そして、どんな結果になっても悔いはないと。

本書には、淡々とクールな印象がある遠藤の胸に秘めた熱い気持ちが読み取れる1冊です。こうした本から、読者は選手が胸に秘めている気持ちを理解し、選手が力を発揮するためにどうしたらよいのか。そして、もっと日本代表や日本のサッカー、そして日本のスポーツをよいものにするために、議論をしていくべきだと思うのです。

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