ボランチの考えが分かれば、サッカーが分かる。書評「眼・術・戦 ヤット流ゲームメイクの極意」(遠藤保仁・西部謙司)

2014/08/05

2013-14シーズンのチャンピオンズリーグのベスト4の監督を調べてみると、あることに気がつきました。それは、モウリーニョ以外の監督にみられた1つの共通点です。それは、現役時代のポジションがボランチだということです。

ボランチ出身の監督が活躍する現代サッカー

アンチェロッティ、グアルディオラ、シメオネ。3人とも、現役時代は名ボランチとして代表でもクラブでも類まれな成績を残した選手たちです。ベスト4のチームに、ボランチ出身の監督が3人。これは、偶然でしょうか。

ボランチというポジションは、サッカーというスポーツで、攻守の要となる重要なポジションです。攻撃のことも、守備のことも、そしてチーム全体のバランスも考える必要があります。ボールをどう奪って、どう攻撃するのか。攻守を司るボランチというポジションを務めた選手は、監督として成功しやすいのかもしれません。

実際、Jリーグでもサンフレッチェ広島をリーグ2連覇に導いた森保一の現役時代のポジションは、ボランチでした。他にも、川崎フロンターレの風間八宏、鹿島アントラーズのトニーニョ・セレーゾといった、ボランチ出身の監督が活躍しています。

遠藤保仁は、10年以上日本のNo1ボランチとして、ガンバ大阪と日本代表で活躍してきました。攻守の要のポジションである遠藤の考え方、プレースタイルを分析すると、より日本代表やガンバ大阪が目指すサッカーを詳しく理解できるのではないか。そんな考え方を基に、遠藤本人の証言も交えて詳しくまとめられたのが、本書「眼・術・戦 ヤット流ゲームメイクの極意」です。

「ボールをとられない」前提でサッカーをする

本書を読んでいると、遠藤の考え方が普通の選手と違うことに驚かされます。

1つ例を挙げるとしたら、遠藤は攻撃を組み立てる時「ボールをとられない」という考え方が前提になっているのだそうだ。通常、いかに奪われたボールを奪い返すかを最初に練習します。なぜなら、ボールをとられないということは不可能なので、取られたらすぐに取り返すことで、ボールを保持する時間を長くしようと考えているのです。

しかし、遠藤は「ボールをとられない」という考えが前提で、サッカーをしています。相手が何をしてきても自分たちがボールをとられないと考え、相手を崩すためにどう動いたらいいか、どうパスを繋いだらよいのか。あくまで、主導権は自分にある。そういう考え方を基に、プレーしているのです。

「ボールを取られない」前提、「相手と同数なら守れる」等々。本書には、遠藤がどのように考えてプレーしているのか、よく分かります。サッカー好きが喜ぶような、マニアックな内容の1冊ですが、西部謙司さんが上手くまとめていて、読みやすい1冊になっています。

サッカーのことを詳しく知りたいと思っている人には、興味深く読める1冊です。

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