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革命前夜-FC今治が日本サッカーを変えるか-(後編)

   

今年、川崎フロンターレ以外に僕が注目しているクラブがあります。そのチームとは、FC今治。まだJリーグにも加盟していない、四国サッカーリーグのチームは、ある人物が突如オーナーになったことで、全国から注目を集めるチームになりました。

その人物とは、岡田武史さん。日本代表の監督として、2度のワールドカップの出場を果たし、2010年のワールドカップでは日本代表をベスト16に導いた、多くの日本人に知られる存在です。そんな、岡田さんが、昨年の11月にFC今治の株式の51%を取得し、オーナーに就任しました。前編では、FC今治の岡田さんオーナー就任後の動きと、目指していることを紹介しました。FC今治は、日本サッカーを変えようとしています。そんな、日本サッカーを変えるかもしれないFC今治の取組が成功するためのポイントについて、自分なりに考えてみました。

今治タオルに学ぼう

FC今治がこれから取り組んでいくことについて、最高のお手本が身近にあります。それは、スポンサーの一つでもある「今治タオル」のブランド名で知られる、四国タオル工業組合の取組です。今治タオルは、数年前まで瀕死の状態でした。それが、佐藤可士和さんをクリエイティブ・ディレクターに迎え、元々持っていた商品の価値を引き出し、きちんとイメージを伝え続けた結果、いまや全国的に知られるブランドとなり、ヨーロッパやアジアの市場へと進出しようとしています。これは、FC今治が目指す道と同じだと、僕は思うのです。

実は、こんな事を考えていたら、お正月に岡田武史さんと佐藤可士和さんの対談が、NHKで放送されていました。

世界で戦うために必要なものは

この対談の中で、2人はこんなことを語っています。今治タオルのブランディングのキーファクターは、「安心・安全・高品質」です。その事を伝えるために、佐藤可士和さんは、キーファクターが伝わるロゴマークを作るだけでなく、ブランディングを伝えるキープロダクトとして、「白いタオル」を設定しました。これは、キーファクターである「安心・安全・高品質」をより際立たせるための戦略でした。そして、様々なメーカーが作った白いタオルを、展示会や店舗で展示したのです。白いタオルといっても、各メーカー毎に、厚みや色は微妙に違います。そして、どれも一度手にとったら「使ってみたい」と思わせるクオリティを備えていたのです。

佐藤
「(今治タオルの人たちは)『織り』だとか『染め』だとか、たぶんそっちに行かないと差別化できないんじゃないかと思ってた。ところが、僕は本質はそうじゃないと思って、やっぱりずば抜けた品質感・品質力があるんだから、それをそのまま…。」
岡田
「出せばいい。」
佐藤
「やらせたほうがいいんじゃないかという。」
岡田
「中にいると見えなくなるんですね。」
佐藤
「そうですね。」
岡田
「ちょっと教えてもらいたいんですけどね。今の白いタオルというようなものを1つ作れば良いんですよね、きっと。必ず全員ができる…。」
佐藤
「そうですね、はい。」
岡田
「そうか、わかったわかった、じゃあそういうメソッドの中の目玉、これだけはみんなで共有しましょうよっていうものを作ればいいんだよね。」

今治タオルのキーファクター「安心・安全・高品質」は、元々今治タオルが持っていたものでした。それを、佐藤さんは引き出して、伝わりやすくしました。岡田さんが考えているメソッドの中の目玉が何なのか、楽しみにしたいと思いますし、FC今治が目指すクラブづくりには、佐藤さんのようなクリエイティブディレクターの力を借りても良いのではないかと思います。

情報を発信し続けよう

FC今治に求められるのは、自分たちの取組を発信し続けることです。特に地元では、FC今治を歓迎する人もいれば、冷ややかな目で見ている人もいると思います。だからこそ、周囲の協力を取り付けるために、何度も何度も自分たちの考えを、繰り返し繰り返し発信し続ける必要があります。

情報を発信しなければならないのは、地元だけではありません。むしろ、FC今治の取組は、今治の以外の人々にこそ、繰り返し伝えていく必要があります。伝えるツールとして活用すべきなのは、Webサイトやアプリです。Webサイトにクラブのビジョン、理念を掲載するだけでなく、現在の取組を余すことなく発信していく。スマートフォンでも閲覧できる必要がありますし、当然、SNSの活用は不可欠です。顧客との接点拡大に、アプリを活用することも増えてくるでしょう。こうしたテクノロジーをクラブの情報発信に効果的に使うことについて、Jリーグのクラブはヨーロッパやアメリカのクラブに比べると、遅れています。ソーシャルメディア担当がいるクラブがないのが、Jリーグの現状を現しています。

また、情報を発信するのは、日本だけではなく、海外に向けても発信していくべきです。海外に情報を発信するなら、英語や中国語といった多言語の対応も必要でしょう。たとえば、FacebookやTwitterやInstagramで情報を発信するときも、日本語と英語と中国語で、それぞれ情報を発信してもいいかもしれません。むしろ、多言語対応はJリーグのクラブは遅れていますので、FC今治が率先して取り組めば、よい結果が出るはずです。

佐藤さんと、岡田さんも情報発信がいかに大切かは、よくご存知です。

佐藤
「やっぱりすごく日本人って、そこがすごく不得意なところなんですけども、やっぱり国民性、そこが良いところでもあるんですけど、例えば『謙譲の美徳』とか、言わないことが美徳だと、『あまりべらべら言うのは格好悪いよな、まだやってもいないのに』とか、すごくそこが深いカルチャーであるんですけど、それが今の世の中、だいぶグローバル化しちゃったので。」
岡田
「なんかドキっとするな。やっぱり僕なんてもう58で、ちょっと頭が固いのかもしれないけど、『良いサッカーやってりゃ(人が)来るだろう』っていうようなタイプだったんですよ。」
佐藤
「今、岡田さんがおっしゃったことって、まさに日本企業が抱える一番の問題だったりして、全部じゃないんですけど、どっかで高度経済成長のときの記憶がまだあって、やっぱり良いものを作っていれば絶対売れるって思っているんです。それは良いものじゃなきゃ売れないんですけど、今僕がやっているお仕事っていうのは、たぶん良いものを作っているところを正しく伝えるっていいますか。」
岡田
「なるほどね、良いものを作ってりゃ良いじゃなくて、ちゃんと伝えないと売れなくなっちゃうもんね。ちょっとメモしておきたいな。なんかすごい今日は来て良かった。」

若い人材や素人を活用しよう

FC今治のスタッフとして、現在名前が挙がっているのは、実績や知識のある方々ばかりです。でも、実績のある方々ばかりいても、新しいことを成功させるには不十分だと思います。むしろ、僕は実績がまだない、若い人材をどれだけ活用できるかが、成功のカギを握っていると思います。

新しいこと、誰もやったことないことをやろうと思ったら、困難にぶつかりながらも、一歩一歩前に進んでいくパワーが必要です。こうしたパワーは、若い人材の方が備えていますし、むしろ実績や知識があることが、前に進んでいく際の障害になることもありえます。学生のインターンや、ボランティアにも協力してもらい、物事を進めていくのも、若い力を上手く取り入れるための方法の1つです。

実績や知識がないという意味では、その分野のプロフェッショナルだけでなく、素人として何も知らない人がメンバーにいても良いのかもしれません。むしろ、何も知らないからこそ、今まで当たり前だと捉えていたことに、「なぜこうするのか」と考え、思いもよらない解決策を考えてくれるかもしれません。

上手くいかないときほど、手厚いサポートを

最後に、FC今治に関わる人々や、FC今治の取組に興味を持っている人(僕)に、伝えておきたい事があります。それは、「上手くいかないときほど、手厚いサポートを」ということです。

FC今治でこれからやろうとしていることが実現できれば、日本におけるスポーツクラブにおける概念が変わる可能性があります。ただ、実現させるには、長い時間がかかります。実現させるまでには、様々な困難が待ち構えているはずです。当然、短期的には停滞する時期もあるはずです。

上手くいかない時は、周囲の目も厳しくなります。批判の声も強まります。そんなときこそ、ビジョンや理念に少しでも共感し、興味をもった方は、粘り強く活動をサポートして欲しいと思います。僕は、上手くいかないときほど、手厚いサポートをする大切さを、川崎フロンターレから学びました。風間さんを2年目の4月に解任していたら、今の川崎フロンターレはありません。あの時は、風間さんの取組に共感していたサポーターや記者の方々が、風間さんをサポートしました。風間さんが、粘り強く自分のサッカーに対するビジョンや取組を発信し続けたからこそ、共感する人々が現れたのです。

川崎フロンターレのプロモーションを企画する天野春果さんは、「プロサッカークラブは農業だ」と著書のなかで語っています。種をまき、肥料をやり、丹念に育てる。時に雨が降り、風が吹くことがあっても、粘り強く育て続け、花がひらくまで待つ。プロサッカークラブも同じだというのです。

FC今治は、これから畑を耕し、種をまいていくチームです。どんな花がさくのか。一人のサッカーファンとして楽しみにしたいと思いますし、僕自身も微力ではありますが、何かできることがあれば、積極的にサポートしていきたいと思っております。

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