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全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2016決勝ラウンド第2節 FC今治対ヴィアティン三重 レビュー「小さなスキを見せない戦い方とは、こういう戦い方だ」

   

全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2016決勝ラウンド第2節 FC今治対ヴィアティン三重は、3-0でFC今治が勝ちました。第2試合の結果によって、FC今治の2位以内が確定し、来季のJFL昇格の条件を得ました。(正式には12月の理事会で決定)

ヴィアティン三重の攻撃をおさえたFC今治の守備

この試合を観る前に僕が注目していたのは、FC今治がヴィアティン三重の攻撃をどう抑えるかでした。ヴィアティン三重のFWには、藤牧という選手がいます。182cmという身長と、82kgという体重からもわかるように、身体の強さ、ヘディングの高さを活かしたプレーをする選手です。全国地域サッカーチャンピオンズリーグの1次ラウンドでは、FC今治はヴィアティン三重に0-3で敗れているのですが、攻撃の時に藤牧に競り負け、競り負けたこぼれ球を決められたり、他の選手のマークを外して失点してしまったそうです。

FC今治はヴィアティン三重の攻撃への対策として、183cmの斎藤をスタメンで起用し、藤牧をマークさせました。FC今治の対策はそれだけではありません。普段のFC今治は、4-1-2-3というフォーメーションで守ります。しかし、この試合は斎藤を中央においた、5-4-1というフォーメーションで守りました。斎藤が藤牧と競り合い、こぼれ球をセンターバックの2人がカバーします。ヴィアティン三重がサイドから攻撃しようとしても、5人のDFで横幅68mをカバーすることで、スペースを与えずに守備をし、サイドからチャンスも作らせませんでした。普段はやらない、この試合のためのフォーメーションを採用したのですが、この守備が見事に機能しました。同じ相手に、同じ手ではやられない。FC今治の意地が感じられました。

この試合のFC今治は、本当に守備が素晴らしかったです。試合開始当初は、ボールを奪われた後の守備の動きが遅く、相手にボールをキープされてしまっていましたが、試合が進むに連れて、ボールを奪われた後の動きが早くなり、ボールを奪われた後、素早く奪い返せるようになりました。天皇杯のカマタマーレ讃岐戦と比べると、守備はすごく良くなったと思います。

規則正しく守る相手に、規則正しくない選手をぶつけて崩す

FC今治は、攻撃でもヴィアティン三重に対する対策を用意していました。変えたのは、FWです。普段はMFで起用される上村を右FWで起用し、前回のヴィアティン三重戦ではスタメンではなかった長島を左FWに起用し、普段は左FWの桑島を中央のFWで起用しました。

上村は普段は中央のMFでプレーする選手で、FC今治の攻撃のテンポをコントロールする選手です。FC今治はパスをつなぐのが得意なチームですが、攻撃のテンポを変えられるのは、上村だけです。本来なら中央でプレーしたほうが良いと思われる上村が、右FWでプレーした理由は、2つ考えられます。

1つ目は、上村のコンディションです。怪我をかかえていたと伝えられており、動きも普段よりはよくありませんでした。ただ、上村はFC今治の中心選手です。前回の対戦時には、上村は不在でした。どうにか起用したいけど、動きが悪いと、相手のロングパスのこぼれ球を追いかける役割は期待出来ません。そこで、守備のときに負担の少ないサイドで起用したのだと思います。

2つ目は、ヴィアティン三重の守備を崩すためです。ヴィアティン三重は、4-4-2で守ります。規則正しく守備者が4-4のラインで並んで守るので、一見素晴らしい守備をしているように思えますが、この守備には弱点があります。規則正しく守るため、相手選手が「不規則な動き」をしたら、対応出来ないのです。4-4の間で、誰もマーク出来ないスペースに人が立ったら、誰がマークしていいのか混乱します。この役割を担ったのが、上村です。

試合開始当初はサイドに張り付いていましたが、次第にサイドバックとボランチとサイドハーフの間にポジションを取るようになります。間に入って、ボールを受けて、少ないタッチで次の味方にパスをする。何気ないプレーなのですが、守備者は、誰がマークにいかなきゃいけないのか都度判断しなければなりませんし、上村についた後、ボールが動いたら、改めて自分のポジションに戻らなければなりません。この動きを繰り返される事で、次第に規則正しかったヴィアティン三重の守備が崩れてきました。

上村が少し中に入ってプレーする反面、左FWの長島はタッチライン近くでプレーします。長島は、素早いドリブルで何度も相手の守備を突破してみせました。上村が中央に入っても、長島が左サイドのタッチライン際に位置し、右サイドはサイドバックの片岡がタッチライン際に位置しているため、相手の選手間の距離を広げようという工夫もされていました。ヴィアティン三重の守備はボール付近の守備者は連動して動けていましたが、ボールがある反対サイドの選手の動きは連動して動けておらず、FC今治のパスが回り始めると、少しずつ守備者の動きが空いてくるようになりました。

ヴィアティン三重の不用意なハンドから得たFKを、上村が中野にあわせて先制したのですが、中野をマークしていた選手は背が中野より小さく、1人ボールとは反対サイドに動いた中野を、しっかりとマーク出来ていませんでした。また、長島を止められなかったヴィアティン三重の田中は、前半42分に2枚目のイエローカードをもらって退場。ヴィアティン三重は、10人になったことで、4-4-1のフォーメーションに変更。藤牧の周りに人がいなくなり、ボールをキープしようとしても、周りに選手がいないため、なかなか攻撃出来なくなってしまいました。

吉武監督と岡田武史さんの関係がみえた選手交代

後半FC今治は右に長島、左に桑島、中央に上村と、FWのポジションを変更します。僕は上村にボールを触ってもらいたいという狙いと、守備の時の身体の向きが悪く、背中をとりやすかった、ヴィアティン三重の左サイドバックの背後を狙いたくて、長島を右にしたのだと思います。ただ、この狙いは上手くいきませんでした。上村はボールをなかなか受けられず、ミスを連発。長島にもパスが集まらなかったため、攻撃のテンポが上がらず、ヴィアティン三重に攻められてしまいました。

FC今治は上村が本調子ではないと判断し、64分に上村と長尾を交代。長尾を右、桑島を中央、長島を左に変更します。長尾が何度も相手左サイドバックの背後を狙ったことで、相手の左サイドバックが長尾の動きだけ警戒してしまい、センターバックとの距離が空くようになりました。空いたスペースを狙って、FC今治は何度も攻撃を仕掛ける事が出来るようになり、ヴィアティン三重のペースになりかけた試合の流れを戻してみせました。

面白かったのは、交代に至るまでのベンチの動きです。上村がミスをした時、岡田武史さんがダッシュでテクニカルエリアで観ていた吉武監督をベンチに呼び寄せて、「交代させよう!」と提案したことです。岡田さんとしては、上村をこのままプレーさせておくと流れが変わる。そう感じたのだと思います。吉武さんも岡田さんの判断に同意し、交代を準備しました。岡田さんの動きを見た時は「どっちが監督だよ!」と思いましたが、岡田さんが何かを吉武さんに伝えたのは、交代のタイミングくらいです。2人のコミュニケーションが上手くとれているなとも感じました。

小さなスキを見せないとは、こういう戦い方だ

岡田さんが、チャンピオンシップ準決勝を評して、「小さなスキを見せないことが勝負を分ける大きな要因」と語っていましたが、FC今治の試合を観て、川崎フロンターレのサッカーを追い続けてきた者としては、岡田さんに「こうやるんだよ」という手本を見せられた気分です。相手の強みを消し、自分たちの強みを活かし、相手に勝つには、どんな事をしたらよいのか。そして、「小さなスキを見せない」とはどういうことなのか。この試合のFC今治は教えてくれたような気がします。

吉武さんはまったく満足してなさそうです。何度か選手が判断ミスをした時、首を横に振る時がありました。もっとよいサッカーが出来るし、その手応えも、青写真も、吉武さんの頭の中にあるのだと思います。引き続きFC今治の戦いに注目したいと思います。

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