AIでサッカーの指導はどう変わる?

日本スポーツアナリスト協会のメールマガジンに、面白いサービスのプレスリリースが添付されていたので、ご紹介したいと思います。(以下はプレスリリースを一部抜粋しました。)

サッカーのジュニアスクール運営、指導者支援、海外へのフットボール留学支援を事業とする株式会社LEGROとAIによる熟達者ノウハウの技能継承サービスを提供する株式会社LIGHTzは、LEGROの持つ選手育成メソドロジー「セクタービジョン」とLIGHTzが開発するAI「ORINAS(オリナス)」を連携させたサッカーのゲーム分析、選手育成ソリューション【FINED(ファインド)】を共同開発することを発表しました。

FINEDという名称は、「課題の解決策を見つけることができる(FIND)」と、その結果として「プレーの質を上げることができる(FINED)」という二つのキーワードが由来となっています。両社は、2017年7月から本システムを用いた育成支援サービス、情報提供サービスを開始する予定だそうです。

LEGROは、ジュニア年代の選手・指導者のための支援・研究機関「グロシアス・サッカーアカデミー」を運営する中で培った指導のノウハウや蓄積されたデータを体系化し、LIGHTzと共に、サッカーの次世代プレーヤー育成に有用な新しいAIシステムを開発します。

LIGHTzは、既に進出しているフェンシング、バレーボール分野でのスポーツAI事業の経験をこの開発に提供します。LIGHTzの乙部さんは、日本スポーツアナリスト協会のイベント「SAJ2016」でも講演してくださいましたが、元々はスペシャリストの技術をAIの力を借りて、他の人にも身につけられるような仕組み作りを手掛けている会社です。

AIと評価システムを組み合わせて期待できる効果

今回2社が発表した、「FINED」では、こんな効果が期待できるそうです。

1.有効な「スペース」を発見でき、指導に活かせる

「パスが通るスペースを見つける」、「空いたスペースに走りこむ」、「味方のために有効なスペースを作る」等、サッカーの指導の現場では、スペースという言葉が頻繁に使われます。しかしながら、そのほとんどが、各々の感性(センス)や勘、独自の経験に依ったものとなっており、選手と指導者が同じ目線でこの考え方を共有、指導要領化できている例は多くありませんが、「FINED」では、LEGROが作っていく評価軸をもとに、「スペース」の有効性を場面ごとに評価するシステムを開発するそうです。

2.様々な「選手能力」の「ゲームに対する影響」を把握でき、改善を目指せる

心技体という言葉がありますが、実際の試合には、技(スキル)や体(フィジカル)の要素だけではなく、心(メンタル、バイオリズム)の要素も大きく関係します。例えば、試合の緊迫度による緊張感の発生がその代表例ですが、調子(コンディション)や敵チームや選手同士の相性、チームワーク等、眼には見えない数多くのものが試合の流れを左右します。これらの特性の現れ方は選手や局面毎に様々で、その組み合わせは膨大ですがAIを活用することで、サッカーのゲーム展開と選手特性の現れ方をパターン化し、その複雑な結果と要因の関係を読み解き、どのパラメータが特に効いているのかを判別(寄与度判定)できるツールを作る予定です。

3.スモールデータからビッグデータを作り上げ、効果的な練習メニューを自動作成できる
スポーツ分野のデータアナリティクスの課題の一つは「分析データ数(N数)の少なさ」です。試合の結果は、運や展開の要素に左右されることも珍しくないため、1試合毎の実績を都度丁寧に分析していっても、傾向の違いが大きく、結果から統一見解が見出せないことがアナリストの悩みでした。今回開発するAIシステムには、パターンを任意に組合せたシミュレーションで分析データのN数を増やす機能を追加しました。計算量についてはまだ試行段階ですが、最終的には数億から数十億通りのパターンを導き出したいと考えているそうです。

この「スモールデータからどのようにビッグデータを作り出すのか」という増殖の考え方は非常に大事で、信頼性高い指標をもって行われなければならないため、サッカー分野における複数の見識者にヒアリングを行い、その思考回路をFINEDに入れていきます(ヒアリング対象となる方のプロフィールについては、追って発表させていただきます)。これらのビッグデータを使ってできることの一つが、「練習メニューの自動生成」です。FINEDは、複数の練習メニュー候補を指導者に示したり、指導者自身が立てた練習メニューとAIが立案した練習メニューを比較し、効果が表れない理由を指摘出来るようにするそうです。

AIに期待したいのは「課題解決」と「未来予測」

FINEDが面白いのは、「課題解決」に特化したことだと思います。サッカーで一番むずかしいのは、目の前で起こっている事象に対して、どんな解決策があるのか考える事だと思います。当事者ではない人たちが、目の前で起こっている事象に対して、好き勝手にああだこうだ言うのは勝手ですが、問題を特定して、解決策を導き出し、実行するのは簡単ではありません。特に、サッカーでは、攻撃の問題を解決するために、実は守備の練習をしなければならないといった具合に、目の前の事象に対して直接的にアプローチしたからといって、問題が解決するとは限らないのです。もしかしたら、FINEDなら、指導者が日々迷っている事に対するヒントを与えてくれるかもしれません。

僕がAIに期待しているのは、「未来予測」です。ある程度のデータを用いて、未来に起こりうる仮説を予測する。これが出来れば、計画、実行、検証、アクションというサイクルの「計画」の時に考える仮説を考える時間が圧倒的に短縮出来ます。仮説を立てないで物事を進めてしまっているチームもあるのかもしれませんが、仮説がなければ、修正も出来ません。解決策も導き出せません。

「課題解決」と「未来予測」。僕がAIに期待していた要素が盛り込まれたサービスなので、ご紹介させて頂きました。今後どう発展するのか楽しみです。

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