Jリーグのチームはなぜクラウドファンディングを活用しないのか

先日、Jリーグ関連でクラブの経営難に関するニュースが、立て続けに報道されました。

栃木SC、債務超過 2013年度1億4600万円(朝日新聞)
【Jリーグ】 J2福岡、資金繰り悪化、経営危機 クラブ資格に影響も(MSN産経ニュース)

Jリーグが発足して20年。横浜フリューゲルスの消滅、清水エスパルスや東京ヴェルディの経営危機、最近では、現在J1の首位である横浜Fマリノスの債務超過の話題が報道されるなど、20年の間に、Jリーグのクラブは幾多の経営危機に直面しています。

少額の支援なら集まる

ただ、今回の経営難の中には明るいニュースもあります。

明太子がアビスパを救う?スポンサー「ふくや」が支援商品販売へ(スポニチ)

博多名物の明太子の老舗「ふくや」が、スポンサーをしているアビスパ福岡のために特別商品を販売し、売上金全額をアビスパ福岡のために寄付するという企画です。11月1日販売を開始したところ、2296セットを完売。さらに、追加で2960セットの販売が決定しました。この商品は、1セット3,150円。現時点で、600万円以上の寄付金が集まっている事になります。

明太子とあわせて、アビスパ福岡の選手のトレーディングカードがついてくるというこの商品は、商品の中身というより、「アビスパ福岡を支援したい」「ふくやの心意気に感銘を受けた」という人の共感を呼んだ結果、ヒット商品になっているのだと思います。

このニュースを聞いた時、こうした取組をなぜ経営難になる前に出来なかったのかと思わずにはいられませんでしたが、こうも思いました。少額の支援を集めるための手段を、スポーツチームはもっと効果的に活用すべきではないかと。

少額の支援を効果的に集まる仕組み”クラウドファンディング”

そこで活用したいのが、”クラウドファンディング”という仕組みです。クラウドファンディングとは、不特定多数の人がインターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行う仕組みのことです。防災や市民ジャーナリズム、ファンによるアーティストの支援、政治運動、ベンチャー企業への出資 、映画、フリーソフトウェアの開発、発明品の開発、科学研究、個人・事業会社・プロジェクトへの貸付など、幅広い分野への出資に活用されており、多くの投資家から株式を募集することによる企業の資金調達の手法としても注目されています。

日本でも、東日本大震災を機に注目されるようになり、「READY FOR?」や「CAMPFIRE」といったクラウドファンディングのサービスを提供しているWebサイトには、様々なプロジェクトが掲載されています。中には、800万円以上の資金をクラウドファンディングで集めたプロジェクトもあります。まだ小規模ですが「Sportie Fund」というスポーツに特化したクラウドファンディングのサービスを提供しているWebサイトもあります。

僕個人がクラウドファンディングのメリットだと思っている点は、クレジットカードで決済が出来る点です。現金振込みに比べると、クレジットカードの方が支援者にとっては、手間がかかりません。東日本大震災に関連する支援では、「JustGiving」というWebサイトも話題になりました。僕も活用しましたが、クレジットカードを使った決済の手軽さに感心したことを思いだhします。

大口なスポンサーの獲得は益々困難に

なぜ、クラウドファンディングをJリーグのチームが活用するべきなのかというと、今後益々、大口のスポンサーの獲得は、難しくなるんじゃないかと思うからです。市場の動向が短期間で変動するだけでなく、SNSの普及によって、1人の従業員の行動によって、企業の評判が下がったり、経営に影響する世の中になっていくなか、企業が万が一の時に備えて、内部留保を強化していこうと思うのは、当然の流れだと思うのです。

少額のお金を集めてチームを運営している事例

クラウドファンディングを活用した資金集めの事例は、残念ながらほとんどありませんが、少額のお金を集めてチームを運営している事例がありますので、紹介します。

セレッソ大阪は、「ハナサカクラブ」という育成サポートクラブ(個人協賛会)を発足。1口3,000円の協賛金は、育成組織をクラブとともに長期的にサポートするために使用されます。特典はピンバッチのみですが、2012年度は単独会費として290,000円、年間パスポートや年間チケットの費用とあわせて、1300万円以上の協賛金を集めています。

ハナサカクラブの1期生が、現在日本代表にも選ばれている山口螢です。柿谷、山口、杉本、丸橋、南野といった優秀な若手選手を次々と輩出するセレッソ大阪の育成組織は、こうした草の根の支援活動にも支えられているのです。

海外の事例も紹介しておきたいと思います。
NFLのグリーンベイ・パッカーズは一般市民が保有する株式会社(パブリック・オーナーシップ)であることで、アメリカ4大スポーツで唯一パブリック・オーナーシップを実現している球団です。かつて3回倒産の危機に瀕したパッカーズですが、その度に市民が株を買って支えてきたという歴史があります。

NFLのグリーンベイ・パッカーズの株は、一般企業の株と違い、配当金もなければシーズンチケットの優先購入権もありません。1923年に資金難に陥り、創設者兼ヘッドコーチ兼選手だったカーリー・ランボーと4人の地元ビジネスマン(ハングリー・ファイブ)が株式会社グリーンベイ・フットボールを設立し、1株5ドルの株を1000株販売したことが始まりです。

グリーンベイ・パッカーズは数回の株式公募を行っているが、株主数は11万を超えます。グリーンベイ市の人口が約10万人であることを考えると、驚くべき数字です。2011年の株式公募の際には、株式発売後2日間で18万5000株以上を販売し、4630万ドルを調達しました。

グリーンベイ・パッカーズはいざというときにも球団が存続して競争力を保てるように”Packers Franchise Preservation Fund”(パッカーズ存続維持基金)という基金を設け、将来の危機に備えているのだそうです。なお、グリーンベイ・パッカーズのスタッフは球団社長以下全員無給。しかしながら、企業価値は上がっており、2009年度の収入は2億48000万ドル、利益も2001万ドルを計上しているそうです。

サッカークラブに求められる”支援するメリット”を伝える情報発信

では、クラウドファンディングなどの仕組みを使って、多くの人々から少額の支援を得るにはどうしたら良いのでしょうか。

結論を言うと身もふたもないのですが、「支援する価値があるチームであることを、認知させる」ための活動をすることが必要なのだと思うのです。これは、クラウドファンディングだろうが、企業のスポンサーを募るときも同じだと思います。クラウドファンディングでは、支援者に対して、資金額によって様々な特典を提供していますが、結局は、特典も含めたプロジェクトとしての魅力があるかどうかだと思うのです。

鹿島アントラーズは、長年「トステム」と「YellowHat」がユニフォームスポンサーになっています。両社の結びつきは強く、カシマスタジアムのビジネスシートでは、両社の関係者が一緒に試合を観ながら商談を行うということもあるそうです。イングランドのスタジアムは、社交場としての役割もあり、ビジネスシートには協賛する企業の関係者だけでなく、地元の名士も集まります。こうしたスポンサーや名士の結びつきを強め、双方のビジネスに貢献する場を作るのも、今後サッカークラブの役割として求められていくのだと思うのです。これも、地域貢献活動の1つの形だと思います。

今後、サッカークラブには、地域に密着した自分たちの強みや活動を、より多くの人に理解してもらうための情報発信が求められていると思います。

活動はローカライゼーション、発信はグローバライゼーション

クラウドファンディングなど活用した少額の支援は、こうした流れの一環として、今後も有効に活用して欲しいと思う次第です。

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