パスサッカーなんてサッカーはない。

革命前夜 すべての人をサッカーの天才にする

サッカージャーナリストの後藤健生さんがJ SPORTSに連載している記事に、気になる言葉がありました。

ボールを前に運ぶことを忘れた川崎のサッカー

川崎フロンターレの試合(第4節のヴァンフォーレ甲府戦)を見ていたときだった。
川崎の風間八宏監督はパスサッカーの信奉者だ。
「手でボールを扱うスポーツのような」サッカーをしようとしている。

初めに断っておくと、この記事に書かれていることは、以下の箇所を除けば大筋正しい。

川崎の再建のためには、前線の選手の人選から考え直して、一からチーム作りを見直さなければならないだろう。

僕が引っかかったのは、”パスサッカー”という言葉についてです。結論から言うと、”パスサッカー”なんてサッカーはありません。ベテランで名前の知られていて、僕よりはるかにサッカーを観戦しているジャーナリストですら、簡単に”パスサッカー”なんて言葉使ってしまうんだ、と読みながら呆れてしまいました。

パスは相手を攻撃するための”手段”

繰り返しますが、”パスサッカー”なんてサッカーは、ありません。なぜなら、パスはあくまで”相手を攻撃するための手段”だからです。

パスを繋ぐことのメリットとしては、

  • 効率的にボールをゴールに向かって動かすことが出来る。
  • 相手を動かすことが出来る。
  • 攻撃するための権利を保持することが出来る。
  • 試合を運ぶ”テンポ”をコントロールすることが出来る。

といった点が挙げられます。
ここで重要なのは、”パスは数多く繋げばよい”というものではない、ということ。サッカーはゴールを奪った数を競うスポーツですから、1本のパスでもゴールに結びつけば、問題ありません。そのための手段として、パスを使用するのです。

パスという”手段”の用い方は、チームによって違います。FCバルセロナのように、人と人とが短く正確で速いパスを繋ぐことでゴールを奪うチームもあれば、レアル・マドリーのように、長くて速いパスを正確に繋ぐことで、相手のディフェンスが整わないうちにゴールを奪おうとするチームもあります。

僕が”パスサッカー”という言葉に違和感をもつのは、”パスサッカー”という言葉に”パスを繋ぐことだけのサッカー”という意味も含まれていて、受け取った人に誤解を生むと考えているからです。そういう意味では、取り上げた後藤健生さんの記事に書かれている内容は大筋正しいのですが、前提として挙げたラグビーの例えに対するオチが、”パスサッカー”という言葉を用いることで、台無しになっている気がしたのです。

風間監督が目指すサッカーは、メディアから正しく伝えられていない

後藤健生さんの記事を読んでいても思ったのですが、風間監督が川崎フロンターレで目指しているサッカーは、メディアによって正しく伝えられていないなぁと感じます。風間監督は「パスサッカーをやります」とか「ボールを保持する(ポゼッション)サッカーを目指します。」とは一言も言ってません。

メディアが伝える「パスサッカー(パスをつなぐこと)」や「ポゼッション」という言葉は、あくまで攻撃するための手段であって、それが目的かのように取り上げられていることで、多くのサポーターは、本当に川崎フロンターレが目指しているサッカーを、誤解しているのではないかと思うのです。

風間監督は就任記者会見で、自身の理想のサッカーについてこのように語っています。

一番は、もちろん90分間ボールを持ち続けて選手が楽しんでやること。
球技である以上、ボールを持たずに考えることはないですよね。
例えば手でやるスポーツで、ボールを持っていない、
ボールを取られることを考えるスポーツはないですよね?
だから堂々と自信を持って、ボールを持つサッカーをしていって欲しい。
そのなかで選手たちの発想が出てくる。何対何というのはありません。
その中で僕があれそっちに行くのと思うことがあって、まったく違う方向に行っても、
それでとんでもない結果を出してくれればそれは面白いと思う。
元から当てはめる気もないですし、
彼らが作っていくものにもっともっと大きくしていこうと考えています。
それが僕の理想だと思っています。

ここで重要なのは、風間監督が「ボールを持つこと」をあくまで攻撃するための”手段”と位置づけていること、しかし全く違う方法で結果を出してくれても構わないとおもっていること、元々何かに当てはめる気はないということ、この3つです。特に「ボールを持つこと」は選手たちの発想を活かすための前提手段であり、「選手の力を最大限に発揮した面白いサッカーを作り上げる」ことを目的としているのです。

風間監督のサッカーは、日本人が好きな「フォーメーション」や「チーム戦術」といったわかりやすい言葉で説明できるサッカーでないことは事実です。しかし、それを”パスサッカー”という手段を目的化したような言葉で、安易に語ってほしくない。そう思うのです。

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すべて目を通すと、風間監督が”ポゼッション”や”パスをつなぐこと”を攻撃するための手段と捉えていることが、よくわかります。