サッカークラブは「ハッカソン」や「アクセラレータプログラム」をやろう

先日、イングランド・プレミアリーグに所属するアーセナルが、「ARSENAL INNOVATION LAB」という、アクセラレータプログラムを実施すると発表しました。

アクセラレータプログラムとは

アクセラレータプログラムとは、以下のようなプログラムの事を指します。

アクセラレータープログラムは大抵、期間があらかじめ設定されており、個々の企業が数週間から数カ月かけてメンターのグループと協力し、自分たちのビジネスを構築して、そのプロセスで生じる問題に対処する。
(中略)
アクセラレータープログラムの最後には、投資家やメディアが出席するデモイベントが開催され、特定のグループのスタートアップ全てが売り込みを行う。この時点で、ビジネスがさらに発展し、入念に検討されていることが期待される。

ZDNet Japan「アクセラレーターとインキュベーターの違いは?–スタートアップ企業の基礎知識」より

アーセナルが実施するアクセラレータプログラムの内訳は、以下の4点です。

  • Improving matchday experience
  • Engaging our fans globally
  • Transforming our partner offering
  • Building a retail operation for the future
  • Wildcard

既に募集期間は終わっていますが、上記テーマに基づいて各社が申し込んできた内容を審査し、11月21日に「PITCH DAY」という説明の機会を設け、チャンスを得た企業は、2018年1月15日から実際にアーセナルとの取り組みをスタートし、10週間という期間の間に取り組んだ成果を、2018年5月に発表するというプログラムです。

クラブには「人」「モノ」「金」が不足している。

このプログラムは、アーセナルと「L MARKS」現地のスタートアップを支援する投資会社が共同で行っています。なぜ、アーセナルがこのようなプログラムを実施するのかというと、アーセナルには「人」「モノ」「金」が集まる場所を持っていますが、実際にビジネスを大きくしていくために使える「人」「モノ」「金」は、他の産業を支えている企業と比べたら不足していますし、特に優秀な人材は他の産業を支えている企業と比べたら、まだまだ不足しています。(それでも、Webサイトに掲載されている「Strategy Manager」や「Head of Fan Services」といった役職の方がいる事を考えると、Jリーグのチームと比較すると事業部門の人材が多いことが読み取れます。)

だからこそ、アーセナルというフットボールクラブに興味があり、実際に活躍する場を求めているスタートアップ企業を募って、自社のサービスの発展につながるようなパートナーを発掘したり、支援したいと考えているのだと思います。とても良い試みです。

他のスポーツクラブの取り組み

アメリカでアーセナルと同じような取り組みをしているのが、ロサンゼルス・ドジャースです。ドジャースは「Dodgers Accelerator」というアクセラレータプログラムを、アーセナル同様に現地のスタートアップを支援する投資会社と実施しています。

日本では、DeNAベイスターズが「THE BAYS」という場所に企業を誘致し、「Sports x Creative」をテーマに、新しいビジネスを生み出す場が作れないか、模索しています。「THE BAYS」は、ライゾマティクスやIBMといった企業がスペースを借りていると聞きました。

他には、FC今治が今治市で実行委員会を立ち上げ、地域の人々と連携しながら運営している、学生向けのインキュベーションプログラム「BARI CHALLENGE UNIVERCITY」や、日本スポーツアナリスト協会が実施する「スポーツアナリティクス甲子園」のように、ビジネスアイディアを考えるイベントはありますが、日本ではまだまだ「スタートアップの企業を、スポーツクラブが支援する」ようなプログラムは、あまり実施されていません。

ハッカソンの事例も少なく、パ・リーグTVが実施した「パッカソン」というイベントでパ・リーグTVのAPIを活用したハッカソンが行われたり、読売ジャイアンツが「GIANTS HACKASON」というイベントを実施しましたが、サッカークラブでは例がありません。

サッカークラブは「アクセラレータプログラム」や、「ハッカソン」を実施した方がよい

僕は、サッカークラブは「アクセラレータプログラム」や、「ハッカソン」を、もっと実施した方がよいと思います。

「ハッカソン」も面白いイベントが増えていていて、浜松市が先日実施した「ハママチューン」というハッカソンは、「音」をテーマにしたハッカソン。協賛企業に、地元浜松市を拠点にしている、河合楽器やヤマハ楽器といった企業だけでなく、Amazon Web Service(AWS)、Spotifyといった興味深いサービスを提供している企業も協賛し、参加者にサービスやAPIを提供していました。

こうした、「アクセラレータプログラム」や「ハッカソン」をサッカークラブが実施した方がよいと思う理由は、スポーツクラブが不足しているリソースを補うきっかけが作れるだけでなく、新しいサービスや製品を作ろうとしている、野心と技術と夢をもっている若者や、新しいサービスを作ろうと模索している企業の接点を作る事が出来るからです。そして、サッカークラブは「金」は無いクラブが多いのですが、「人」と「モノ」を集めやすいという特徴があります。

「BARI CHALLENGE UNIVERCITY」は地元企業の有志の方と、FC今治のスタッフた協力して運営していると聞きました。地域の方を巻き込んだり、アーセナルのようにパートナーとなる企業を起用してしまうのも1つの方法です。「ハママチューン」も運営をサポートしている企業が、協賛企業として加わっていました。

当然、こうしたプログラムを実施するのは手間です。「サッカークラブもスタートアップじゃないか」という意見もあると思います。ただ、僕はそんな考えを持つ人にこそ「だからこそ、やる意味がある」と言いたいです。観客のデータ、グッズの売上データを共有し、改善策を考えてもらうことで、新たなビジネスのきっかけが見つかるかもしれません。日々忙しい中で、考える時間がないのであれば、人に考えてもらえばいいのです。「人を巻き込む」事は、サッカークラブを運営するには大切な事だと思います。

「金」はないけれど、「人」と「モノ」を集めるきっかけは作れる。こうした、サッカークラブの特徴を活かせば、「アクセラレータプログラム」「ハッカソン」といったイベントは、新しいサービスや製品を作るきっかけになると思います。ぜひ実施するクラブが増えて欲しいです。

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