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書評「月刊footballista(フットボリスタ) 2016年4月号」-戦術パラダイムシフト-

   

最近、footballistaが面白い。2015年12月号に「「データ革命」現地レポート」という特集では、ヨーロッパサッカーのデータ活用の現状を徹底的に取材し、60Pにわたって特集しました。

そして、2016年4月号の特集は「戦術パラダイムシフト」。ヨーロッパサッカーの戦術トレンドを60P以上にわたって特集しています。この特集は、サッカーが好きな人、サッカーの戦術について詳しく知りたい人は、読んで損がない1冊です。なぜ、読んで損がないか。それは、ヨーロッパサッカーの戦術トレンドが、各国リーグ別に網羅され、これでもかというくらい、詳しく語られているからです。

僕なりに特集を読み終えて、現代のヨーロッパサッカーの戦術トレンドについて、どの国のトレンドにも共通していると感じたのは、以下の2点です。

  • 攻撃時と守備時のフォーメーションが異なる
  • ボールを奪われたら即ボールを奪った選手を囲んで奪取

攻撃時と守備時のフォーメーションが異なる

攻撃時と守備時のフォーメーションが異なるのは、どのチームも当たり前の事です。守備の時に「4-3-3」というフォーメーションでプレーするチームの場合、GKからパスをつないで攻めようと試みる時、センターバックが左右に開き、サイドバックはFWに近いポジションをとり、中央のMFがDFの位置まで下りてくることがあります。その時、フォーメーションは「2-1-4-3」というべきフォーメーションに変化します。

このように、ボールがどの位置にあるかによって、フォーメーションは変化します。ただ、縦方向のポジションチェンジであれば、基本と考えている「4-3-3」のうちと、従来は認識していました。ところが、バイエルン・ミュンヘンのように、攻撃時に左右のサイドバックがボランチの位置に移動したり、右サイドバックのラームだけボランチの位置に移動したり、縦方向のポジションチェンジではないポジションチェンジを行い、フォーメーションを変えているようにみせるチームが現れました。

特にグアルディオラ就任後のバイエルン・ミュンヘンは、相手チームの統率された守備を破壊するために、意図的に相手を混乱させるためのポジションチェンジを行っています。こうしたポジションチェンジをどんな意図で、どんな指示のもと実行されているのか、選手、他チームのコーチ、ライターといった識者が様々な視点で分析しています。

ボールを奪われたら即ボールを奪った選手を囲んで奪取

グアルディオラがFCバルセロナの監督に就任後、世界中のサッカーファンに衝撃を与えたのは、FCバルセロナの攻撃より守備かもしれません。ボールを奪われた後、「ボール狩り」と言われるほど、奪った相手を囲いこんでボールを奪う守備は、衝撃を受けました。僕は2008-09年シーズンにFCバルセロナの試合を現地で観た時に体感した、守備のスピードの速さを忘れることが出来ません。

しかし、2015-16年シーズン現在、グアルディオラが実践した「ボール狩り」は、今は他のチームが様々な形で実践するようになりました。特に、極端に選手間の距離を縮め、ボールを奪いにくるロジャー・シュミット監督率いるレバークーゼン、「ゲーゲンプレス」という言葉を世に広めたドルトムント、そしてロジャー・シュミットや現在ドルトムントを率いるトーマス・トゥヘルに大きな影響を与えた、ラルフ・ラングニック監督RBライプツィヒなど、ドイツには「ボール狩り」を実践するチームが増えました。

トレンドは「シームレスなサッカー」

そして、そんなドイツ流のプレッシングサッカーを日本で体現している、湘南ベルマーレの曺貴裁監督のインタビューも読み応えがあります。曺監督はヨーロッパサッカーの戦術トレンドについて、こんな意見を述べています。

もう攻守の切り替えという概念時代がなくなっていくと思います。切り替えも何もない常にハイテンポでシームレス(継ぎ目がない)なサッカー。「今、攻撃が終わりました。はい切り替えて」ではもう遅い。攻撃時にすでにボールを取られた後の準備をしてすぐに取り返さなければならないし、取り返した後ここで受けるという予測まで必要。

曺監督が語っている通り、ヨーロッパサッカーの戦術のトレンドは、「シームレスなサッカー」なのだと思います。攻撃と守備を一体で考えなければなりません。だから、攻撃だけの練習、守備だけの練習というのは、今後サッカーの現場からどんどんなくなっていくと思います。そして、攻撃時と守備時に変更されるフォーメーションは「シームレスなサッカー」を実行するための手段なのです。

監督自身に明確な個性や哲学が必要になってくる

では、「シームレスなサッカー」を実行するために必要なことは何か。監督にどんなことが求められるのか。曺監督はこのように語っています。

結果が出なかったら3試合でクビではなく、どんなプロセスを分で、どういうふうにチームを作ってきたかを見るGMが増えてきているし、欧州サッカーもJリーグもそうなっていくのではないのでしょうか。今の世の中の流れを見ていると、一発逆転で株の値上がりを待つのではなく、地道にどの株が優良銘柄で今下がっているけどやっているプロセスは正しいからいつかは上がってくる、というふうな読みが重要ですね。株や投資信託でもプロが今やっているようなことが、サッカー界でも当たり前になる。だから、監督として求められる仕事は勝つだけではなく、何を目指しているのかが見られるようになっていくでしょう。
(中略)
だから、監督自身に明確な個性や哲学が必要になってきます。

本書には、明確な個性や哲学をもつ監督たちの、個性豊かな戦術が詳しく紹介されています。「どう勝つか」「どう負けるか」。結果だけでなく、サッカーで表現される個性や哲学を理解するためにも、必読の1冊です。

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