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書評「月刊footballista(フットボリスタ) 2016年8月号」-新世代メディアとサッカー-

   

今回のFootballistaの特集は、サッカーの特集だと思って読まない方がいいです。

今回のFootballistaの特集は、サッカーというコンテンツを切り口にした、メディアに関する特集です。雑誌、新聞、Web、動画など、メディアの業界では、コンテンツを配信するチャネルが多様化し、もはや専門領域が分からなくなりつつあります。新聞社が動画を配信し、Webで有料課金サービスを実施するし、Webメディアがタブロイド版を出したり、動画を配信することもあります。こうした、メディアとして、コンテンツを届ける情報が多様化する時代に、注目されているメディアのキーマンにインタビューし、海外や国内の最新情報を紹介しています。

最近のメディアのトレンド「分散型メディア」

最近のメディアのトレンドとして、「分散型メディア」という言葉を用いられる事があります。従来のメディアが自社のチャネル(新聞、雑誌、Webサイトなど)に来訪してもらうことを優先し、コンテンツは自社のWebサイトで配信していました。ところが、ソーシャルメディアサービスの発達により、コンテンツは自社のチャネルだけでなく、Facebook、Twitter、LINEといったSNSのプラットフォームに配信していくことが求められる時代になりました。ユーザーがSNSのプラットフォーム上にいるため、コンテンツを配信する側は、SNSのプラットフォーム上に出ていって、ユーザーを満足させる必要が出てきました。コンテンツを自社のプラットフォームだけでなく、他者のプラットフォームにも分散し、それぞれのプラットフォームに最適な形で配信する。これが、「分散型メディア」の概要です。

「分散型メディア」という考えを元に運営されているメディアの代表が、「Nowthis」です。「Nowthis」にいたっては、自社のWebサイトにコンテンツがほとんどありません。ユーザーとの接点をSNS上に特化し、SNSの特性にあわせて、コンテンツを配信させていくという方針には、一種潔いものを感じます。「分散化メディア」の考え方を上手く取り入れ、ブランドイメージを高めたのは、テイラー・スウィフトです。Facebook,Twitter,Instagramといった各サービスで、微妙にメッセージやトーンを変えてコンテンツを配信し、ファンを増やしてきました。

サッカーメディアもこうした現代のメディアのトレンドの影響を受けているということです。本書を読んでいて感じたのは、サッカーメディアの場合はトレンドによる影響を受けただけでなく、旧来のメディアに対するカウンターとして、生まれたメディアも多いということです。読むWebサイトとして誕生した「L’Ultimo Uomo」、移籍ビジネスだけを取り上げる「Transfermarkt」、そして、僕が愛読している試合分析サイト「Zonal Marking」などは、旧来の試合速報しか報じないメディアに対する一種のカウンターとして生まれたメディアたちです。

既存メディアに対するカウンターとして生まれたこのブログ

僕が運営している、「nishi19 breaking news」の川崎フロンターレに関する記事も、既存のメディアに対するカウンターとして書き始めた記事です。川崎フロンターレに風間監督が就任してから、僕は川崎フロンターレの動向に注目するようになりました。ところが、川崎フロンターレの取組をきちんと紹介してくれる記事は、木崎伸也さんがたまにNumber Webや雑誌に掲載してくれる程度。2013年シーズンの開幕直後に至っては、開幕から4戦勝ちなしというスタートになったととたん、解任を求めるような記事を書く記者が多数いました。番記者すら明確に支持を表明しなかったのを、僕は忘れません。

僕は、風間監督が取り組んでいることが成果として現れなければ、日本のサッカーは今後大きく成長することはないと思っていました。このタイミングで解任されて、プロジェクトが終わってしまうのは勿体無い。理解されていないのであれば、理解されるような平易な言葉を用いて、風間監督が取り組んでいること、川崎フロンターレが取り組んでいることについて、出来るだけ分かりやすく紹介しよう。そう考えて始めました。

あと、当時Twitterやブログを読んでいて、分かったように「トランジション」「デスマルケ」「ダイアゴナルラン」といった、専門用語を使ってサッカーを語る人が増えたように感じたことも、ブログを書き始めた要因でした。正しく用語を使えている人はいるのかもしれませんが、こうした単語を使うことによって、むしろ表現や定義が曖昧になり、結果的にサッカーに対する理解度を深める機会を減らしているんじゃないか。そんなことを考えたことも、ブログで書くきっかけでした。だから、このブログでは「トランジション」「デスマルケ」「ダイアゴナルラン」といった言葉は、使いません。出来るだけ、日本語で噛み砕いて表現することを心がけています。横文字に逃げない。それが僕の流儀であり、編集方針です。

正直、当時誰かが僕が考えていた事をやっていたら、僕が川崎フロンターレの記事を書くことはありませんでした。あれから3年が経ち、川崎フロンターレは「ほかのどこのチームも表現出来ない攻撃的なサッカー」を少しづつ表現しつつあります。3年が経過し、当初は批判ばかりだったブログに対するコメントも、少しづつ理解あるコメントが増えてきました。サポーターの目も揃ってきたのではないかと、感じています。もちろん、僕と同じように、レビューとプレビューの記事を書く記者も出ていますし、有料で配信していることも知ってます。

開始するとき、意識していたのは「Zonal Marking」と「サッカーの面白い戦術分析を心がけます」でした。「サッカーの面白い戦術分析を心がけます」は、とてもよく分析されているWebサイトなので、時折読んで参考にさせて頂いています。ただ、独特の文体が、僕は読みづらいと感じていました。あの文体が好きな人もいらっしゃるのでしょうが、僕の好みではありませんでした。

僕が参考にしたのは、「Zonal Marking」です。フィールド上で起こった事象を、丹念に、簡潔に、短い文章で紹介する。それを時系列で積み重ねていけば、詳細な試合の分析になる。その事を教えてくれました。「Zonal Marking」の文体をベースに、僕自身の仮説を私見たっぷりに盛りこんだ結果、今のnishi19 breaking newsによる、川崎フロンターレの分析記事が成り立っています。

本書の特集を読み終えて、僕自身はこのブログを始めたきっかけ、川崎フロンターレの記事を書き始めたきっかけを、改めて思い出させてくれました。そして、本書の特集を読みながら、今後はnishi19 breaking newsも、ブログを基盤に、本の出版、イベントへの参加、企画など、積極的に取り組んでいっても良いなと思いましたし、世界中にファンがいるサッカー分析サイトを目指しても良いかな。そんな事を考えさせてくれた特集でした。面白かったです。

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