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書評「footballista 2017年8月号「U-20の世界」

   

最近のサッカーは10代後半の選手の活躍が注目されています。16歳8ヶ月という異例の若さでACミラントップチームデビューを飾り、再契約問題が話題となったGKのジャンルイジ・ドンナルンマ。2016-17シーズンのチャンピオンズリーグで6戦6ゴールを決め、モナコのリーグ・アン制覇とチャンピオンズリーグベスト4の貢献したキリアン・ムバッペ。

彼らのように10代後半にもかかわらず、トップレベルの経験を積んだ選手たちに対しては、20代中盤の成熟した選手より高い価値がついています。日本でも、15歳でトップチームデビューを果たした久保建英という選手が出てきました。今後、選手の適性を見極めた上で、10代後半から経験を積み、20代前半にはトップレベルの経験を積んだ選手たちがたくさん出てくるはずです。もしかしたら、サッカーもフィギュアスケートのように平均年齢が下がってくるのかもしれません。

10代後半から20代前半の選手が注目される理由として、僕は「プレースピードが速くなった」こと、「身につけるべき技術レベルが上がった」こと、そして「試合数の増加」を挙げたいと思います。サッカーというスポーツのプレースピードが上がり、試合数が増えた事で、選手に求められる負荷は年々上がっています。回復力が高い若い世代に注目されるのは、必然のような気がします。そして、試合に勝つために相手にあわせて、フォーメーションや自分のプレーする場所を臨機応変に変えて対応しなければならないので、選択出来るプレーの質を高め、都度的確にプレーを選択する事が求められています。

footballista8月号の特集は「U-20の世界」。各国のサッカー協会、サッカークラブが選手の育成にどのように取り組んでいるのかまとめています。

日本選手の良さは「即興でプレーできること」

本書を読む前に、Sportivaに横浜F・マリノスからアンデルレヒトにコーチとして派遣されている坪倉進弥さんのインタビュー記事に掲載されていた言葉を紹介したいと思います。坪倉さんはオランダのアヤックスでビデオ分析アナリストして活躍している白井裕之さんからこんな言葉を聞いたそうです。

日本の選手のよさとして、瞬間、瞬間で即興のプレーができる。お互いわかりあえるし、隣の人のことを気にかける習慣ができているから、隣の人の動きを気にしながらやるということはすぐできる。サッカーにおいてもその特徴が出て、アヤックスの指導者がJリーグ選抜とアヤックスの試合を見た時に、『いつも思うけど、どうして日本人は即興の連続でプレーできるんだ?』と言うらしいのです。

どういうことかというと、『オランダのサッカーはある程度「型」がある。その中でプレーしているから、15歳、16歳でそれと全く違うことを日本人にやられると、対応しきれない』ということなんです。速くてつかまえられないと感じる。だから年齢が若いと対応できないのだけれど、18歳くらいを過ぎると、トップに残っているのはインテリジェンスもある選手だから、だんだん対応できてくるらしいのです。そうなってくると日本は打つ手がない。

欧州派遣Jコーチに聞く「日本人選手が10代後半で伸びなくなる理由」

僕が考えるサッカーの「型」とは

意外に思うかもしれないのは、オランダのサッカーに「型」があるという事です。白井さんは本書のインタビューで、オランダサッカーがどのように「型」を身に着けていくかを紹介しています。日本人は、伝統芸能の習得にあたって「型」を身に着けようとしますが、僕はサッカーでは「型」を身に着けようとしていないように感じます。

FC今治のように、オーナーの岡田武史さんによる「岡田メソッド」という「型」を提唱しているクラブもありますが、FC今治が提唱している「型」と、オランダサッカーの「型」とは異なると、僕は感じています。年代別に身に着けておくべきことの事を「型」をいい、各チーム固有の文化に基づいた解釈は「型」とは言わない気がします。歌舞伎なら演目によって、身に着けるべき「型」がガイドラインとしてあり、流派によって異なる解釈をすることで、全く違う演目として表現しています。そう考えると、日本のサッカーは「型」がもしかしたらないのかもしれません。そんな事を本書を読んで感じました。

U-20イタリア代表はGPSデータをいかに活用していたのか

本書で語られている育成論とは異なりますが、印象に残ったのはイタリア代表育成難題統括コーディネーターのマウリツィオ・ビシディのインタビューで語られていた、テクノロジーの活用についてです。ビシディは先日行われたU-20W杯で、イタリア代表がどのようにテクノロジーを活用していたのか語っています。

今回のU-20W杯には、フィジカルコーチだけでなく運動生理学者も帯同して、GPSを使って取得した移動距離やスピードなどの位置情報から試合を通じてのプレー負荷、エネルギー消費や疲労度を正確に把握・分析し、トレーニング負荷のコントロールやターンオーバーの判断に活用していた。

そして、「GPSの使用が試合でも許可されて、負荷やエネルギー消費、疲労度が把握出来るようになったのは大きなメリットがあったのでは?」という質問に対しては、こう答えています。

これまでもビデオ分析によってある程度のデータは取れていたけれど、GPSでその精度が大きく高まった。いずれにしても、選手交代やターンオーバーに関しては、今やこうしたデータを使うことが当然になっている。対戦相手の分析などはもちろんだけど、こうしたコンディショニングなどについても、GPSのデータが無いということ自体ももはや考えられない。

最近のfootballistaの特集は面白い!

本書を読み終えて、サッカーという競技に求められる要素はどんどん増えていると、改めて感じました。日本が遅れているという事ではないと思いますが、他の国は違う手を考え、素早く変化し、次々と実行にうつしています。実は本書をバスケットボールの関係者のMLに紹介しました。この特集はサッカーファンだけでなく、多くのスポーツファンに読んでもらいたいし、教育に興味がある人もぜひ読んでもらいたい特集です。最近のfootballistaの特集は面白い!次回も楽しみです。

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