フットボールエリート育成の仕組みを学べる1冊。書評「フランスの育成はなぜ欧州各国にコピーされるのか―世界最先端フットボール育成バイブル」(結城 麻里)

本書の冒頭で、興味深いデータが紹介されています。2012年時点で、ヨーロッパ31カ国のサッカートップリーグを対象に選手の国籍を調査したところ、フランスがブラジルに次ぐ世界2位の供給大国だというのです。しかも、1位のブラジルの選手数が524人から515人に減少しているが、フランスは245人から269人に増加しています。

フランスの選手育成機関は、よく日本でも紹介されてきました。フランスサッカーの育成を語る時、よく名前を聞くのが「クレールフォンテーヌ」です。フランス中から集められた、サッカーの優秀な12歳〜15歳の少年を育成する機関は、日本にもJFAアカデミーとして導入されました。

しかし、フランスの育成は、クレールフォンテーヌが全てではありません。協会、地域、クラブが密接に連携し、選手の育成基準や個人のデータを共有し、常に適切なサポートを行うことで、よい選手を育成してきました。そんなフランスサッカーの育成の秘密がまとめられているのが、本書「フランスの育成はなぜ欧州各国にコピーされるのか―世界最先端フットボール育成バイブル」です。

育成の土台となっている高等職業教育のメソッド

元々、フランスは高等教育専門機関として名高い、「グランゼコール」があります。グランゼコールを卒業した卒業生には、サルトル、フーコー、シラク元大統領、カルロス・ゴーンなどがいます。グランゼコールは、即戦力として活躍できるような人材を育成するための、高等職業専門学校です。本書を読んでいると、グランゼコールが始まったのは、1747年。ルイ15世の時代です。日本が江戸時代の頃から、フランスはエリート教育に力を入れてきました。フランスサッカーの育成のベースには、「グランゼコール」という高等職業技術専門校を通じて、長年蓄積された高等職業技術教育のメソッドや考え方が、土台にある気がします。

専門教育が必要な時代

今は、入りたい会社や、やりたい仕事があれば、高いレベルで専門的な教育を受けることが求められます。「トイ・ストーリー」「ファインディング・ニモ」を制作しているPixarという会社は、特定の大学や高校の出身者を多く採用するのだそうです。これは、入社する前に、既に社員として働くために必要なことは学んでもらい、正社員になったら、直ぐにバリバリ働けるようにするためだと聞いたことがあります。また、Googleも現在ドクター(博士課程)を取得した人物を、積極的に採用していると聞いたことがあります。

専門的になる選手の育成。取り残される日本

サッカーの世界も、競技レベルが上がるにつれて、育成期間に求められるレベルも高まってきていますし、より専門化していると感じます。だからこそ、各国は選手の育成に力を入れています。日本サッカーも、Jリーグが出来て20年。急速にレベルが上った要因は、トレセン制度によって、選手のレベルが飛躍的に高まったことが要因でした。

しかし、日本サッカーはU-17,U-20といった年代で、苦戦を強いられています。アジア各国が育成に力を入れたことで、日本との優位性がなくなってきたことが大きな要因だと思います。錦織圭という選手は、アメリカで育成されたからこそ、あそこまでの選手になりました。彼の活躍を喜びつつも、なぜ日本で錦織圭が生まれないのか、考える必要があると思います。日本から世界のトップで活躍する選手を育成するために、どうしたらよいのか。サッカーだけでなく、スポーツ、ならびに教育に携わる方に、広く読んで頂きたい1冊です。

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