川崎フロンターレのJリーグ2013シーズンを7つのポイントで振り返る

開幕6戦で勝ち点3しか獲得出来なかったチームが、ACLの出場権を獲得できるとは、誰が思ったでしょうか。最後の10試合を8勝2敗という素晴らしい成績で締めくくり、川崎フロンターレは2013年のJリーグで3位になって、ACLの出場権を獲得しました。

まだ天皇杯の3試合が残っているので早い気もしますが、僕なりに川崎フロンターレ2013年シーズンを、7つのポイントで振り返ってみました。

J1の得点王”川崎のヨシト”

大久保嘉人の移籍が決まった時、彼がここまで活躍すると思っていた人がどれだけいたでしょうか。10点、いや15点取ってくれればよい、と思っていた人が大半だったのではないのでしょうか。それが、大半の人の予想を上回る26ゴールを取っての得点王。ACL出場権の獲得は、大久保嘉人の活躍なしではありえませんでした。

第22節のアルビレックス新潟戦のミドルシュート、第23節の大宮アルディージャ戦のミドルシュートなど、スーパーなゴールも記録しましたが、記憶にも残る、チームを救うゴールも多く記録しました。初勝利を挙げた第4節ベガルタ仙台戦の4点目のミドルシュート、第13節アルビレックス新潟戦の中村憲剛のスルーパスに抜けだした決勝ゴール、そして第29節のジュビロ磐田戦、第33節の大分トリニータ戦のロスタイムでの決勝ゴール。チームを勝利に導く姿は、”エース”の名にふさわしい活躍ぶりでした。日本代表への復帰の話が出てくるのも当然です。

今が最高の中村憲剛

夏場に”今が最高の中村憲剛”という名言が出るほど、コンフェデレーションズカップから帰国後の中村憲剛の活躍は際立ってました。帰国後のベガルタ仙台戦で2ゴールを決めると、その後3試合連続ゴールを記録。夏場に苦しいチームを支えました。

33歳になりましたが、タイミングを見計らって裏に出すパスは健在です。さらに、以前はボランチでの起用が多かったですが、トップ下での起用も増えたことにより、ゴール前で決定的な仕事をする場面が増えました。相手を外してボールを受ける動きがうまくなったことも、トップ下での活躍の場面が増えた要因だと思います。来年34歳になりますが、さらなる進化が期待できそうです。

J最強の左サイドコンビ”レナト&登里”

2013シーズンでJ最強の左サイドハーフといえば、レナトの他にはいないでしょう。1人で2人以上を相手に出来るドリブルと、正確で威力のある左足は、相手チームの脅威となりました。そんなレナトの活躍を支えたのは、左サイドバックの登里です。

登里は元々左サイドハーフだった登里は、レナトが欲しいタイミングでボールを供給したり、レナトにマークが集中しているとみるや、DFラインからドリブルでボールを運んでみたりと、臨機応変な動きで相手を崩しました。レナトもそんな登里の動きを上手く使うことで、フリーになれるように工夫していました。この2人のコンビネーションによる左サイドの崩しは、観ていて楽しかったです。J最強の左サイドコンビと言っても、過言でもないと思います。

盤石のボランチコンビ”マサキ&イナ”

大久保嘉人の加入も大きかったですが、もしかしたらそれ以上に大きかったのは、山本真希の加入です。豊富な運動量で動きまわり、様々な局面で顔をだす山本真希のプレーは、チームに安定感をもたらしました。第9節の名古屋グランパス戦での山本真希のミドルシュートによる決勝ゴールがなかったら、川崎フロンターレはACLを獲得できなかったかもしれません。陰のMVPとも言える活躍ぶりでした。

昨年までは60分を超えると急激に運動量が落ちていた稲本潤一ですが、今年は90分通して安定感のあるプレーを披露していました。若い頃のようにゴール前に上がって得点に絡む場面はほとんどなくなりましたが、相手の攻撃を食い止め、ファウルせずにボールを奪う能力はJ屈指。個人的には、FC東京の米本より上だと思います。”マサキ&イナ”の2人が出場するようになってから、フロンターレのチーム状態は上向き始めました。破壊力のある攻撃陣に隠れがちですが、この2人の活躍なくして、ACL出場権獲得はありませんでした。

ジェシの復帰と安定したDFライン

2013年シーズンの川崎フロンターレを語る上で、忘れてはいけないエピソードがあります。5月にジェシが奥様の病気を理由に、一時帰国したことです。外国人選手が一時帰国した時、大抵退団してしまうことが多いのですが、8月にジェシはチームのために戻ってきました。ジェシの凄さは、クリーンにボールを奪うテクニック、高さのあるヘディング、正確な右足のパスなどありますが、1番の強みは、気持ちをプレーで表現できることだと思います。ジェシの気持ちの入ったプレーは、何度もチームを、サポーターを勇気づけました。

シーズン終盤、ジェシのパートナーに井川が固定できたのもディフェンスが安定した大きな要因です。井川が左のセンターバックを務めることで、相手がプレッシャーをかけてきても外すことが出来るようになり、攻撃の幅が広がりました。

逆に、シーズン序盤はレギュラーでプレーしていた實藤と中澤は、ポジションを奪われる結果になりました。特に、實藤は風間監督に期待され、ミスをしても我慢して起用しているように見えました。一番悔しいのは本人でしょうが、能力はある選手なので、来シーズンは巻き返して欲しいと思います。

次世代のフロンターレを担う大島僚太

第34節のFマリノス戦で、持っている能力の高さを見せつけたのが、大島僚太です。大島僚太の魅力は、相手を外す能力に長けていることです。相手にプレッシャーをかけられても、正確なコントロールで相手を外すことが出来ます。また、ボールをもらう前のフェイントで相手を外すのもうまく、狭いエリアでも正確にプレーできるのも大きな特徴です。

技術の高さ以外に、僕が高く評価しているのが、彼のメンタルです。一見すると優男のように見えるのですが、相手のプレッシャーにひるまず、狭いエリアにボールをコントロールし、相手の懐に飛び込んでいくプレーは、気持ちの強さがなければ、出来るプレーではありません。

次世代のフロンターレを支えるのは、間違いなく彼だと思います。来年は21歳になる大島僚太の活躍に、益々期待したいと思います。

我慢強くチームを立て直した風間監督

風間監督の就任後の川崎フロンターレをずっと追い続けていたのですが、現在のような状態まで進化するのは、簡単なことではありませんでした。風間監督は、3歩進んで2歩下がるような愚直な歩みを繰り返しながら、粘り強く、粘り強く、選手を信頼しながら、攻撃的なサッカーを進化させていきました。

風間監督の采配の特徴として、選手交代が少ないことが挙げられます。風間監督はスタメンを選んだら、「ベストの11人としてお前たちを選んだのだから、うまくいかなくても自分たちで解決しろ!」という考えを持っているのだと思います。こうした考え方は、結果的にスタメンに選ばれた選手の信頼につながると思います。

風間監督は、ミスをしてもすぐに選手を代えるような采配はしません。積極的なミスは、むしろ評価しているくらいだと思います。しかし、消極的なミスやプレーをした選手は、遠慮なくスタメンから外します。わかり易い例で言うと、第30節の鹿島アントラーズ戦で先制点につながる軽率なミスをした田中裕介は、次の試合で先発を外されました。選手を評価する基準は、シーズンを通して一貫していました。

選手を評価する基準とあわせて、選手を平等に見ようとする姿勢も印象に残りました。今シーズン、風間監督はGKの高木と新井、故障で戦列を離れていた園田以外の選手を公式戦で使いました。平等に見た上で、適切なタイミングでチャンスを与える。チャンスをものにした選手が、スタメンで出られる。外からみていて、健全な競争原理の働くチームになったと感じます。こうしたチームマネジメントにこそ、僕は風間監督の手腕を感じます。

最後に、風間監督が就任会見で話した言葉を紹介したいと思います。
川崎フロンターレのサッカーはまだまだ発展途上です。
これから、どのように、どこまで発展するのか。
残り少ない今シーズンと、来シーズンが楽しみです。

正直言うと、理想はありません。
なぜかというと、それは選手の中で決めることで僕がやることではないですから。
一番は、もちろん90分間ボールを持ち続けて選手が楽しんでやること。
球技である以上、ボールを持たずに考えることはないですよね。
例えば手でやるスポーツで、ボールを持っていない、ボールを取られることを考えるスポーツはないですよね?
だから堂々と自信を持って、ボールを持つサッカーをしていって欲しい。
そのなかで選手たちの発想が出てくる。何対何というのはありません。
その中で僕があれそっちに行くのと思うことがあって、まったく違う方向に行っても、
それでとんでもない結果を出してくれればそれは面白いと思う。
元から当てはめる気もないですし、彼らが作っていくものにもっともっと大きくしていこうと考えています。
それが僕の理想だと思っています。

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