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2016年Jリーグチャンピオンシップ準決勝 川崎フロンターレ対鹿島アントラーズ レビュー「勝つために必要なこと」

   

2016年Jリーグチャンピオンシップ準決勝、川崎フロンターレ対鹿島アントラーズは0-1で鹿島アントラーズが勝ちました。川崎フロンターレは準決勝で敗退したため、リーグ優勝を達成する事は出来ませんでした。

ターニングポイントとなった長谷川の負傷交代

この試合のターニングポイントは、前半21分の長谷川の負傷交代でした。長谷川の負傷交代がターニングポイントになった理由は、3点あります。

1点目は、守備です。長谷川が守備のときに積極的に奪いにいくため、長谷川の動きが合図となり、他の選手も積極的に動きを起こす事が出来ていました。長谷川が負傷交代するまでは、鹿島アントラーズのDFにロングパスを蹴らせ、鹿島アントラーズの攻撃の手段を制限する事に成功していました。しかし、長谷川が負傷交代してからは、鹿島アントラーズのDFに対してボールを奪いにいく動きを起こす人がいなくなり、鹿島アントラーズのDFは楽にボールが保持できるようになり、攻撃しやすくなりました。

2点目は、攻撃です。長谷川がDFの背後を狙う事で、鹿島アントラーズのDFラインが下がり、MFとDFの間にはスペースが生まれていました。そのスペースを大久保と三好が活用し、攻撃を仕掛ける。それが、川崎フロンターレの狙いでした。しかし、長谷川が負傷交代した事で、大久保が長谷川のポジションに入ります。長谷川のように背後を狙う選手がいなくなった事、そして大久保が長谷川の代わりにFWに入った事で、DFとMFの間で受ける選手が、三好しかいなくなってしまいました。

3点目は、中村のプレーが良くなかった事です。この試合が負傷明けという事で、コンディションは良くないと思っていませんでしたが、予想以上に悪かったです。セカンドステージの第8節以降、川崎フロンターレは5敗しているのですが、その要因の1つは、中村のプレーです。4ゴール挙げていますが、ボールを受ける動き、外す動きの数が目に見えて減りました。そして、守備のときにボールを奪い返す動きの数も、目に見えて減りました。足首、太もも、股関節と怪我をかかえながらのプレーだったのも要因だったと思いますが、怪我人が多すぎて、36歳の中村に負担がかかってしまった事が、ツケとして回ってきてしまいました。

中村のパフォーマンスがよくなかった事は、他の選手の動きに大きく影響しました。エドゥアルド・ネットや板倉がボールを持っても、中村がボールを受けてくれないので、なかなか縦方向にパスが出せません。鹿島アントラーズの守備もよいので、横方向や後ろへのパスが増えてしまいました。中央でパスを受けようと、サイドから三好が動いたり、大久保が下がった事で、中央の狭いエリアは余計に狭くなり、攻撃のテンポがますます悪くなってしまいました。

よく研究していた鹿島アントラーズ

鹿島アントラーズは、川崎フロンターレをよく研究し、対策してきていました。戦い方としては、0-3で敗れたセカンドステージ第14節のヴィッセル神戸の戦い方に近いと思いました。FWは積極的にボールを奪う動きをしつつ、パスコースを限定しようと動きます。狙いはやはり、田坂とエドゥアルドです。谷口と車屋にはパスが回らないようにパスコースを切り、田坂がボールを持ったら、ドリブルさせるように促す。エドゥアルドがボールをもつときは、出来るだけ右足でプレーさせようという意図が感じられました。

FWが積極的にボールを奪う動きをさせる事で、MFも連動してボールを奪いにいく事が出来ます。永木、小笠原の2人は、パスコースが限定されているので、躊躇なく、板倉とエドゥアルド・ネットに対してボールを奪いにいく事が出来ていました。特に板倉に狙いを定め、前を振り向かせないようにするプレーは素晴らしかったです。板倉はプレッシャーに負けて、縦方向にパスが出せなくなってしまいました。板倉が機能していれば、中村を早い時間で交代出場させる事もなかったと思います。

鹿島アントラーズの対策によって、抑えられてしまった選手の1人が、三好です。三好に対する鹿島アントラーズの対策は、1人が三好に対してボールを奪いにいき、三好がドリブルでスピードを上げようとする瞬間を狙って、身体を寄せて、ボールを奪うというものでした。ボールを持たれても、左足のコースは切って、シュートや正確なパスは出させない。鹿島アントラーズの守備によって、積極的にシュートを打つ三好が、シュートゼロに抑えられてしまいました。

そして、鹿島アントラーズは徹底的に川崎フロンターレの右サイドを狙ってきました。田坂とエウシーニョの守備力を考え、徹底的に田坂を狙ってロングパスを蹴り、金崎や土居に競らせて、攻撃の起点を作りました。また、山本が攻撃参加する事でエウシーニョに守備をさせる事で、川崎フロンターレの攻撃力を削ぐ事にも成功していました。当然、エウシーニョの下手な守備を狙うという狙いもあったと思います。金崎の決勝ゴールは、エドゥアルドの右足のクリアミスと、エウシーニョの軽率な守備によるものでした。

鹿島アントラーズが特に警戒していると感じたのは、車屋です。車屋がボールを持つと、遠藤が下がってきて対応し、西がサポートするといった具合に、必ず2人で対応していました。遠藤は守備を頑張った影響で、攻撃ではいいプレーは出来ませんでしたが、車屋のクロスからチャンスを作らせないように徹底していました。

川崎フロンターレとしては、鹿島アントラーズの狙いを読んだ上で、登里を交代出場させます。登里は期待に応えて何度もチャンスを作ってみせました。車屋だけをおさえればよかった鹿島アントラーズの右サイドが対応しきれていなかった時間帯にゴールを奪えなかった事が悔やまれます。鹿島アントラーズは右サイドの守備を強化するために、三竿を交代出場させて、永木を右サイドに配置します。この交代によって、川崎フロンターレは攻め手を失ってしまいました。

最後はロングパスに活路を見出しますが、鹿島アントラーズは植田を交代出場させて、エドゥアルドをマークさせて、最後まで隙なく戦ってみせました。ロングパスを戦うなら板倉を残すという考えもありましたが、車屋と登里の連携を失いたくはなかったのだと思います。意図はわかりますが、ロングパスで得点を奪いにいくなら、板倉を残しておいても良かったと思います。鹿島アントラーズとは対象的に、川崎フロンターレは最後までチグハグな戦いをしてしまいました。

勝つためにすべき事は、特別な事ではない

僕はこの試合、試合開始前から「負けるな」と思ってました。なぜなら、勝ちたいと思ってやった事だと思いますが、勝つために必要な事とは、逆の行動をしていたからです。やった事がないホームゲームの前泊、メディアを活用した試合前のプロモーション、「#いざ決戦」と煽ったキャンペーンなど、試合を盛り上げて、選手の力に変えようという思いからの行動だったと思いますが、僕は違和感を覚えていました。

本当に勝つチームは、やるべき事を淡々とやります。相手の力を分析し、勝つために最善の策を練り、試合でやるべき事をやる。勝つための雰囲気というのは、特別な事をやる事ではなく、淡々とやるべき事をきちんとやる事で、作り出されていくものだと、僕は思います。無理やり作り出すものではありません。風間監督が試合後の記者会見で、「初優勝はひっそりとするもの」と語りましたが、無理やり作り出した雰囲気は、自分たちも慣れていないため、雰囲気をコントロール出来ない事があります。勝った経験のないチームは、特別な事をやらなければ勝てないと思いがちですが、特別な事をやるのではなく、勝つために小さな事をきちんとやる事が、勝利につながるのだと僕は思います。川崎フロンターレというチームの、良くも悪くも「プロフェッショナルっぽくない」チームの体質が、勝負所での勝利を逃しているのだとしたら、僕は残念でなりません。自滅だったと思います。

繰り返しますが、勝つために必要なのは、経験でも、文化でもないと、僕は思います。日頃から、やるべきことを、淡々と、黙々と、やるだけです。日頃の行動の差が、大きな舞台の結果を左右するのだと、この試合を観ていて、改めて感じました。

あとこれは言っておきたいので、言います。川崎フロンターレというチームを見ていて、常々疑問を感じていたのが、怪我をした選手が、予定されていた期間で復帰しない事です。特に怪我した選手が、予定していた全治の期間で治らず、1ヶ月も2ヶ月も遅れて復帰し、挙句の果てには再度同じ箇所を怪我して、再手術するという事例が何度もありました。スタッフは頑張っているのでしょうが、外から見ていると、なぜそうなるのか理解出来ません。決められた期間で復帰する、再発させずに復帰させる。そして、そもそも怪我人を出さない。怪我する選手も、いつも同じです。この試合の中村のプレーが良くなかったのは、シーズン通して中村に負担をかけてしまったことも、大きな要因だと思います。こうしたチームの力の差も、大一番で露わになってしまいました。

この5年間で、川崎フロンターレというチームの力は、すごく上がったと思います。しかし、相手のチームを上回るために、もっと必要な事があると思います。鹿島アントラーズは、最初から今の鹿島アントラーズだったわけではありません。プロとして必要なこと、勝つために必要なことを、分かっている人がしつこいくらいに言い続け、今の鹿島アントラーズを作り上げました。

勝つために必要な事を言い続けてくれた、風間監督や大久保が2017年シーズンはいません。残りは天皇杯です。天皇杯で「勝つ」ために必要な事を、川崎フロンターレの選手、スタッフ、そしてサポーターはどう考えて実行するのか。僕は注目しています。

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