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2016年J1セカンドステージ第11節 川崎フロンターレ対アビスパ福岡 レビュー「遊び球とは何か」

   

2016年Jリーグセカンドステージ第11節、川崎フロンターレ対アビスパ福岡は、3-1で川崎フロンターレが勝ちました。

最近、風間監督のコメントで「遊び球」という言葉が使われる事があります。「遊び球」という言葉は、サッカーではあまり聞く言葉ではありません。では、どんな意味で使われる言葉なのでしょうか。僕なりの考えを書いておきたいと思います。

遊び球で相手の守備者を「コーン」にする

「遊び球」は、スルーパスという言葉で表現される「勝負球」の前に使用される、一見無駄に思える、ゆっくりしたパスや、短い距離で何本も交換するパスの事です。なぜ、一見無駄に思えるゆっくりしたパスや、短い距離で何本もパスを交換するのか。それは、相手の守備者を意図しない場所に動かせるからです。ゆっくりしたパスを目にすると、相手の守備者は「ボールを奪えるかもしれない」と思い、ボールを持っている選手に食いつきます。相手の守備者が食いついた瞬間、速いパスを相手の守備者が空けた場所に動いた選手に出すと、相手の守備を崩すことが出来るのです。

また、短い距離のパス交換も同じような効果があります。短い距離のパス交換は、素早く、少しずつ距離や方向を変えて行うと、相手の守備は目でボールを追いかけるだけになってしまい、相手の動きが止まります。相手の守備者は動きが止まったら、工事現場に立っている赤いコーンと同じです。そして、相手がコーンになってしまえば、プレー中とはいえ、ほとんどプレッシャーがない状態で、より正確にパスを出すことが出来ます。相手を「守備者」ではなく、「コーン」にしてしまう。これが、「遊び球」を効果的に使うことで得られる効果なのです。

「遊び球」は、縦方向と横方向の2つのパターンがあります。川崎フロンターレの攻撃で、横方向に何本もパスを繋いだ後、縦方向に速いパスを出すのは、横方向の遊び球を上手くつかった攻撃です。あと、縦方向にゆっくりしたパスをわざと出して、相手の守備を食いつかせて、空いた場所に選手が動いて、相手の守備を崩します。

「遊び球」を使う理由は、同じテンポ、同じ長さ、同じ方向のパスばかり使っていても、相手の守備は崩せないからです。相手もプロのチームなので、どの場所を守ればよいかというのは、頭で理解しています。ただ、サッカー選手の本能として、ボールを奪えそうなら、奪いたいと思って身体が動きます。あるいは、速いタイミングで横パスを繰り返していると、「攻撃してこないから、ポジションはこのままでよい」と判断して、動きを止めることがあります。こうした、サッカー選手の本能を利用して、相手を動かしたり、止めたりして、相手の守備を崩すのです。

速いパスだけじゃ、相手は崩せない

野球のピッチャーの配球に例えると分かりやすいのですが、150km/hのストレートだけじゃなくて、わざと120km/hのカーブを投げてみたり、ボールになる球を投げてみたり、150km/hのストレートと同じコースで少し変化する球を投げてみたりして、相手のバッターを打ち取ります。速い球を投げ続ければ、相手の打者を打ち取れるわけではありません。160km/hのストレートだって、プロは当てられます。速いボールと遅いボール、高低と横幅、良いピッチャーほど使い分けて、バッターを打ち取ります。

大抵のチームは、配球を考える選手は1人いれば良い方なのですが、川崎フロンターレは中村、エドゥアルド・ネット、大島と3人いますし、谷口も後方で遊び球の使い分けが出来るようになってきました。あとはFWでは大久保も使い分け出来ますし、小林やエウシーニョといった、「遊び球」も「勝負球」も受けられる選手がいます。パスの速さ、方向、上下。大分パスの使い分けが上手いチームになったと思います。

大久保の要求のレベルが上がっている

課題があるとすれば、もっとタイミングを合わせる事と、「勝負球」の正確性と球種をあわせる事だと思います。この試合、大久保が何度がボールを止められずにミスしていました。一見すると大久保のミスに見えますが、大久保は動きながらパスを受けたいのに、大久保がパスが出てこないと思って動きを止めた瞬間、パスが出てくるという場面の方が多かったです。動きを止めた瞬間というのは、身体が固まっている事が多く、ボールを止めるのに適した状態ではありません。コンマ何秒の世界ですが、もっとタイミングは合わせられると思いますし、右足に出すのか、左足に出すのか、どちらの足に出すのか、もっと正確性は高められるはずです。

あと、この試合では、大久保がパスを出した後、止まらずに動き続けてパスを受けようとしても、パスが出てこない事がありました。動き続けている選手に、正確にパスを合わせる事は簡単ではありません。大島もエドゥアルド・ネットも、パスの受け手が、相手のマークを外すために守備者から離れて、動きを止めた瞬間にパスを出すのは上手くなりました。ただ、動き続けている選手の足元に、正確につけるパスは、まだまだ改善の余地があります。大久保が最近要求し続けているのは、動き続けている自分をもっと見てパスを出せ、という事なのだと思います。さらに付け加えると、大久保は遊び球の数すらもっと減らせるんじゃないかと思っているのだと思います。

15年もの間、チェスのチャンピオンだったガルリ・カスパロフは、こう語っています。

“なぜ?”こそは、職務を果たすものだけのモノと先見性のある者を、単なる策士と偉大な戦略家を分かつ問いである。自分の戦略を理解し、発展させ、そのとおりに実行したいのなら、たえずこの問をいだかなければならない。

最近の川崎フロンターレのプレーは、本当に高い質の攻撃を実現させていますが、それでも「なぜ、こうなったのか」「なぜ、このプレーを選択したのか」を細かく見ていくと、まだまだ問題が発見できます。こうした問題を発見し、いかに改善させていくかが、チームを追いかけ続ける楽しみでもあります。「遊び球」も、まだまだ横方向の遊び球が多く、縦方向の遊び球を使えるようになると、もっと相手の守備を崩しやすくなるはずです。なお、この試合のレビューは、プレビューと併せて読んで頂けるとより深く理解出来るようになっているはずです。ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

パスの配球については、また機会をみつけて書きたいと思います。残りの試合は、ぜひ「遊び球」に注目してみてください。

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