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2016年J1セカンドステージ第5節 川崎フロンターレ対FC東京 レビュー「FC東京の問題とGKとストライカーの価値」

   

2016年Jリーグセカンドステージ第5節、川崎フロンターレ対FC東京は1-0で川崎フロンターレが勝ちました。

問題だらけだったFC東京の守備

この試合のポイントは、FC東京の守備にどう対応するかでした。ファーストステージに対決した時、FC東京はDFとFWの縦の距離、横に並んだ選手同士の横の距離を短く保ち、川崎フロンターレが得意とする「外す」「受ける」動きを制限し、中央のエリアでボールを奪おうとしてきました。ただ、DFとFWの縦の距離を短くしたことで、GKとDFの間には大きなスペースが空いていました。空いているスペースを見つけた大久保と、見逃さずにパスを見つけてパスを出した中村の関係で奪ってみせた1点目のように、DFとGKの背後は、選手間の距離を狭くして守ってくる相手を攻略するために、活用していくのではないか。そう考えていましたが、実際はそうなりませんでした。

DFとGKの背後のスペースを使わなかった理由は、FC東京が川崎フロンターレのDFがボールを持った時、ボールを奪いにこなかったからです。DFとGKの間にスペースはありましたが、それ以上に中央にスペースがありましたし、FC東京の守備時の動きが連動していませんでした。FWのムリキとバーンズ(特にバーンズ)は、守備の時にパスコースを切ることも奪いにいくこともしないで、ただ立っているだけでした。

FWの守備以上に問題だったのは、ボランチの守備です。FC東京のボランチは橋本と米本がスタメンで起用されましたが、2人とも「人を見て対応する」守備は得意です。身体も強く、ボールを奪う能力に長けています。しかし、2人とも「守らなければならない場所」を守れない選手です。人を見ることばかりに注力してしまい、空けてはならない場所を空けてしまうことがよくあります。空けてはならない場所を空けてボールを奪いに行くなら、せめてパスコースを塞ぎながら出ていかなければならないのですが、橋本も米本もパスコースを塞ぐ、という考え方が守備の時の動きから感じられません。したがって、中央のスペースが空いていたので、前節のジュビロ磐田戦のように、無理してDFとGKの間のスペースを狙わずとも、攻撃を仕掛けることが出来ていました。前半35分までは。

高橋の出場によって難しくなった試合

FC東京にとって、不幸中の幸いだったのは、米本の負傷交代によって、高橋が入った事です。高橋は人も場所も守れるボランチです。高橋が入ってから、FC東京は中央のスペースが空く時間が、明らかに減りました。橋本のポジションをこまめに修正させながら、川崎フロンターレのFWのポジションを確認しつつ、パスの出し手と受け手のコースを塞ぐポジション取りはさすがでした。高橋が入らなかったら、もっと大差で勝利出来ていたと思います。

そして、高橋が入るまでのFC東京はボールを奪っても、簡単に失う場面が多かったのですが、高橋は無理せず、空いている選手を冷静に見つけ出し、チームが攻撃出来る時間を作っていました。FC東京は横に横にパスを出すだけで、縦方向に全然パスを入れることが出来ませんでした。パスが出てこないのので、ムリキが引いてきてパスを強引に引き出し、時間を作ってはくれていましたが、ムリキが欲しいタイミングでパスを出せる選手がいませんでした。高橋が入ってから、ようやく縦方向にパスが入るようになり、FC東京が効果的に攻撃出来るようになりました。高橋のパスからムリキが決定機を作ったのは、偶然ではありません。この2人のコンビネーションしか、正直この試合のFC東京はチャンスは作れないなと思っていたら、一番まずい形でチャンスを作られてしまいました。

チョン・ソンリョンのビッグセーブで勝負あり

この試合の勝敗を分けたのは、チョン・ソンリョンがムリキのシュートを止めた場面です。チョン・ソンリョンがすごかったのは、「動かなかった」のではなく、「リラックスしてどこにでも動ける状態」を保ちながら、少しづつ動いて距離を縮め、ムリキの選択肢を減らしてみせた事です。1対1の場面で、GKは動かないことが求められるとよく言われます。

しかし、「動かない」と「動けない」は違います。大抵のGKは、動かないを「動けない」と勘違いして、身体を固めてしまいます。チョン・ソンリョンは、あの極限の緊張状態で、「どこにでも動ける」リラックスした状態に身体を保ちながら、シュートを止めてくれたことです。そして、チョン・ソンリョンはビッグセーブしても、表情を変えません。あれは本当に嫌なものです。ただ、ムリキも流石で、シュートを外してもあまり表情を変えず、「次は決める」という決意が感じられる表情をしていました。さすが、広州恒大で活躍していただけはあります。

ファーストステージ第6節のサガン鳥栖戦でも、チョン・ソンリョンが1対1を止めて、勝利を引き寄せました。2015年シーズンまでなら、ムリキのシュートを決められて負ける、そんな試合の方が多かったのですが、2016年シーズンは違います。よいGKは勝ち点15の価値があると言われていますが、チョン・ソンリョンは自らの実力で、その価値を証明しています。1得点に相当するビッグプレーでした。

大久保が苛立つ理由はファーストステージとは違う

試合後、大久保がこんな事を語っていました。2016年シーズンに入ってから、大久保の主張は首尾一貫しています。中央のエリアを攻略する機会が減っただけでなく、トライすることが少くなったのではないかということです。大久保が主張する理由は、自分が得点を奪いたいからです。大久保は背が高い選手ではありません。俊敏ですが、特別足が速い選手ではありません。スーパーなテクニックがあるわけではありません。したがって、得点を獲るためには、ボールを奪われるリスクを承知で、中央の狭いエリアでパスを受ける必要がありました。自分がゴールを上げることが、勝利につながる。大久保はそんな考えから、自らの要望を味方に伝え、時に厳しく、時に優しく、繰り返し繰り返し伝えてきました。

2016年シーズンの川崎フロンターレは、中央からの攻撃回数が減っているわけではありません。開幕当初は明らかに少なかったのですが、大塚がスタメンで定着するようになってからは、中央縦方向のパスが増えました。そして、この試合スタメンに入った橋本はサイドから中央に入る動きを繰り返し、何度も何度も中央を攻略しようとトライしてくれました。開幕当初の「攻撃のクオリティが低い」という問題は、大分解消しつつあると、僕は思います。

では、大久保は何が不満なのか。それは、「自分がファーストチョイスではなくなりつつある」という事を実感しているからではないかと、僕は推測します。これまでは、縦パスを出す時はまずは大久保に出す、サイドからのクロスは大久保めがけて、低くて速いパスを出す。チーム全員が大久保が得点を奪えるように、大久保をまず見てパスを出してきました。ところが、今は少し違うと僕は感じています。今までだと、大久保が下がってボールを受けた後、チームは大久保がゴール前に入る時間を作っていました。ところが、今は小林や大塚やエウシーニョがよいポジションにいたら、大久保がゴール前にいなくても、パスをしてしまいます。実際、小林が5試合連続得点を決められているのは、大久保がDFを引き寄せて生まれたスペースを、効果的に使って決めている得点が多いと、僕は感じています。大久保がいなければ、小林がこれほど得点を奪えていたかは、分かりません。

しかし、大久保としては面白くありません。中盤に下がっていたのは、自分が最後に得点を奪うためです。得点が奪えなければ、ゴール前で待っていたいところですが、背が低いストライカーがただゴール前で待っていても、パスを出すのは簡単ではありません。今までの大久保にとって、個人の利益とチームの利益が一致している状態でした。ところが、チーム力が上がったことで、チームメイトが他の選択肢を選択出来るようになったことで、皮肉にも欲しいタイミングでパスがこなくなった。そう感じている気がします。

僕は常々、川崎フロンターレがタイトルを獲るには、大久保と中村頼みではいけないと書いてきました。すでに中村の役割は、攻撃時の最後の仕上げのみに限定されつつあります。この試合のエドゥアルドの投入、ムリキの決定機以降の3-4-3へのシステム変更は、怪我を恐れて前にいかない中村のポジションを動かしながら、いかに攻撃をスムーズにさせるかという、風間監督の苦労がみてとれました。中村の影響力は、確実に下がっています。本人も自覚しており、他の選手には出来なプレーに力を集中させているような感じがします。

大久保はまだそこまで割りきれていないのだと思います。それは、ストライカーというポジションの選手だからなのかもしれません。今まで小林は大久保にとってかわいい弟分のような選手でしたが、いざ自分が守り続けてきたエースの座を脅かすようになってきたとき、大久保の心に焦りが生まれても不思議ではありません。僕は大久保が語る「中央からの攻撃が少ない」というコメントについては、ファーストステージとセカンドステージとでは、意味が違うと捉えています。

こうした個人個人のプライドから生まれる関係も、監督はある程度コントロールしなければなりません。チームは一見好調に見えますが、小さな問題がくすぶりながら、いつ芽を出してもおかしくない状態にあります。風間監督はその事を分かった上で、先を見据えて、中村をフォーメーションを変えながら90分使ったり、エドゥアルドを途中から起用したり、エウシーニョを90分使って復調させたりしているのです。つくづく大変な仕事だと思います。

次節は湘南ベルマーレ戦です。ボールをうさぎに例えるほど、前からおいかけてくるチームにどう対応するのか。そして、大久保の望む攻撃は実現されるのか。引き続き注目したいと思います。

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