2016年J1セカンドステージ第17節 川崎フロンターレ対ガンバ大阪 レビュー「ようやく披露された面白いサッカーに満足」

2016年Jリーグセカンドステージ第17節、川崎フロンターレ対ガンバ大阪は2-3でガンバ大阪が勝ちました、この結果、川崎フロンターレは2016年シーズンの年間順位は2位になりました。

60分まで2016年シーズン通じて最高の出来

この試合の川崎フロンターレは、60分まで2016年シーズン通じて、最高の出来でした。この試合のプレビューで、「最近の川崎フロンターレはつまらない」と書いたのですが、この試合の60分までのプレーは、とてもとても面白かったです。2016年初めて楽しい川崎フロンターレの試合が観れました。要因は、○点あるいます。

1点目は、スタメンでプレーした、三好と長谷川のプレーです。2人共共通してよかったのは、ボールを持ったら、前を向いて、ゴールに向ってプレーしていた事です。ボールを持ったら、行ける所まで行く。そんな前に前に向かおうとするプレーが、最近の川崎フロンターレの試合でみられた、「ボールを失いたくない」「じっくり攻めたい」という考えゆえに生じていた、攻撃のスピードの低下という問題を、解決してくれていました。特に三好は、相手のMFとDFの間で常に受けるために、相手のサイドバックにわざと近づいてから、中盤まで下がってボールを受ける動きで、何度も攻撃の起点になっていました。素晴らしいプレーでした。

2点目は、大久保のプレーです。大久保は2016年シーズン通じて、「自分にボールを早いタイミングで渡して欲しい」「自分の近くでプレーして欲しい」と言い続けてきました。前節の鹿島アントラーズ戦の後半から、「自分にボールを早いタイミングで渡して欲しい」という問題は解決しかけているような印象を受けました、この試合の60分までは、長谷川、三好、エウシーニョといった選手が自分の近くでプレーしてくれたことで、大久保のプレーの選択肢が増え、相手に捕まらず、楽しそうにプレー出来ていました。この試合では久しぶりに、ペナルティエリアの外からミドルシュートを打つ大久保を見られました。

3点目は、DFラインのパス回しです。この試合の川崎フロンターレは、田坂、谷口、車屋、登里という4人をDFに並べました。試合前の予想では、DFは3人が予想されていましたので、風間監督としては相手の狙いを外そうという考えもあったのだと思います。それ以外にも、この4人がDFとしてプレーしたことで、攻撃時のパス回しのテンポが、今までの試合に比べて明らかに早くなりました。

前節まで出場していたエドゥアルドは、守備の時には強みを発揮しますが、攻撃時に川崎フロンターレのテンポの速いパス回しに対応出来ておらず、パスを出すタイミングが他の選手に比べるとわずかに遅れます。車屋がセンターバックに入ったことで、DFからボランチへのパスのテンポが、かなり早くなりました。そして、登里と田坂というMFでもプレーできる選手がサイドバックに入ったことで、攻撃時のパス出しでテンポが悪くなることが減りました。特に登里はボールを運ぶとき、パスをするときミスがほとんどなく、パスを出す方向、強弱でテンポを調整する役割も担っていました。最近のサッカーは、「ゲームを作るのはサイドバック」と言われますが、登里のプレーは現代のサイドバックに求められるプレーを、見事に表現してくれました。

ガンバ大阪の対応

後手に回ったガンバ大阪は、様々な変更を用いて対応しようとします。まずは、遠藤をボランチに下げ、大久保をマークさせようとします。ただ、遠藤が下がったことでボールは回るようになりましたが、アデミウソンの近くでプレーする選手がいないため、攻撃が上手く機能しません。そして、DFラインが長谷川の動きを警戒して、後ろに下がってしまうので、岩下を替えて今野をセンターバックにし、ボランチに倉田を移動させます。あと、今野はエドゥアルド・ネットの挑発にのってイライラしていたので、このままボランチにおいておくと、イエローカードをもらいそうな雰囲気でした。今野に冷静にプレーさせるために下げたという狙いもあったと思います。

ガンバ大阪のボランチは井手口と今野が務めていましたが、ボランチに倉田が入るまでは、この2人の強みが弱みになっていました。2人ともボールを奪う能力が高い選手なのですが、ボールを奪う能力が高い反面、ボールと人の動きにつられやすく、本来自分が守るべきエリアを空けてプレーしてしまう事があります。川崎フロンターレは、井手口と今野がボールに食いつく癖を逆手にとって、空いた場所に選手が移動して、パスをつなぎ続けました。

なお、井手口の評価が高いので敢えてコメントしておくと、僕は彼は「ボランチ」ではないと思います。まだ、ボランチに操られるタイプの選手です。ボールを奪うプレーと、攻撃時に前に出ていくプレーは素晴らしいですが、自分の守るべき場所を外してしまう事があるし、外した後に戻る動きが遅い時があります。あと、ボランチとしてプレーするなら、攻撃の時に、ミスなく味方にパスをするだけじゃなく、相手を崩すためにどこにパスを出さなきゃならないか、考えてプレーして欲しいと思います。今の井手口は、ただ空いている選手にミスなくパスをするだけの選手で、これはボランチのプレーではありません。ボランチは、自分が動くのではなく、味方を動かすポジションです。味方を動かそうという意志は、まだ井手口からは感じられません。

ガンバ大阪には遠藤という、素晴らしいお手本がいます。遠藤が攻撃の時に何を考えているのか。遅いパスと速いパスを使い分けて、どこを崩そうとしているのか。また、守備の時にどこを守ろうとしているのか。井手口はまだまだ学ぶ事がたくさんあります。いい選手だと思いますが、足りないところも多い選手なので、今後もよいプレーが出来るか、注目したいと思います。

後半からガンバ大阪は、少し戦い方を変えます。今野をセンターバックにして、後ろに下がらないようにする。三好はオ・ジェソクにマークさせる代わりに、攻撃時に藤春を高い位置にプレーさせて、人の動きにつられやすいエウシーニョを、DFラインまで下げさせる。そして、左サイドは倉田にサポートさせることで、数的優位を作りながら、攻撃を仕掛ける。そんな狙いがみてとれました。攻撃の起点が作れるようになっただけでなく、長谷川が試合から消え始めたことで、次第にガンバ大阪ペースになっていきます。

押し込み続ける事が出来ず

川崎フロンターレとしては、3点目を取れずに試合を決められなかったことが、試合を難しくしてしまいました。長谷川、三好、エウシーニョ、大久保とチャンスはありましたが、決めきれませんでした。特にエウシーニョが岩下のパスをカットしてシュートしたプレーは、冷静に中央の長谷川にパスをしていれば、3点目を奪えていたはずです。こういうチャンスをきちんと決めずに、横柄にプレーすると、必ずしっぺ返しが来ます。

ガンバ大阪がDFラインの位置を高くしたので、DFラインの背後は空いていました。その背後の位置を狙ってパスをしたり、相手が止められなかった三好を上手く使って攻撃し、相手を押し込み続ければ、危険な攻撃を受ける場面は減ったと思いますが、押しこんでから攻撃のスピードを上げたままプレーしてミスをしたり(なぜいけないかはこちら)、空いている場所をみつけられず、相手のプレッシャーに負けて近くの選手にパスをしたりして、次第にパスのテンポが遅くなっていきました。なお、中村の動きが重く、中村を経由するとパスのテンポが遅くなっていたのが気になりました。

ガンバ大阪が狙っていた左サイドを崩された1失点目は、新井が前の2試合と同じパフォーマンスが出来ていれば、止められた気がします。厳しい言い方を許してもらえるなら、東口なら止めてくれた気がします。3試合よいプレーが出来たら一流だと思いますが、新井はまだ3試合よいプレーが出来るほどではなかったということだと思います。

この試合は、交代で出場した森谷、中野、森本が揃っていいプレーが出来ませんでした。風間監督としては、三好と長谷川が90分プレー出来ない事を前提に、相手のペースになったら、経験がある選手を入れて、試合の主導権を奪い返したいという狙いがあったのですが、交代した選手が揃いも揃って、ボールを受けにいかず、受けてもプレーが遅く、よいテンポを阻害してしまいました。3人とも今後の試合で起用を考えさせられるプレーだったと思います。次の試合で、風間監督がどんな選択をするのかによって、3人の評価が分かると思います。注目したいと思います。

強いチーム相手に2勝1敗は上出来

残念ながら試合には負けてしまいましたが、サンフレッチェ広島、鹿島アントラーズ、ガンバ大阪との3連戦を2勝1敗で終えられたのは、上出来だと思います。チャンピオンシップまで全勝というのは考えづらかったので、ここで負けたことと、2016年シーズンで一番よいサッカーを、60分間みれただけでも良かったと思います。悲観する試合でも、監督や選手を批判する試合ではありません。ましてや、チョン・ソンリョン、奈良、大島、小林、エドゥアルドがいなくて、これだけの試合が出来たのは、チーム力が上がったことを証明しています。

次は天皇杯の浦和レッズ戦です。この試合で、負傷していた選手がどのくらい戻ってくるのか。それによって、チャンピオンシップの第1戦に起用できる選手が決まります。どんな試合をするのか、注目したいと思います。

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