2017年J1第19節 川崎フロンターレ対ジュビロ磐田 プレビュー「スローテンポ」

2017年Jリーグ第19節、川崎フロンターレの対戦相手はジュビロ磐田です。まず、第18節までのデータを基に、ジュビロ磐田のデータから分析した特徴を紹介します。

ジュビロ磐田は「スローテンポ」なチーム

Football-LABのデータによると、シュート数を攻撃回数で割った「チャンス構築率」は10.3%でリーグ11位。注目して欲しいのは、1試合平均の攻撃回数が117.1回でリーグ17位と攻撃回数が多いチームではないという点です。攻撃回数が少なくなるケースとして、相手に攻め込まれる時間が長くて攻撃出来ないというケースを考える人がいるかもしれませんが、攻撃回数が少なくなるのは他に理由があります。それは、相手陣内にボールを運ぶスピードが遅いからです。

攻撃回数が少ないチームは、ボールを奪ったら、まずはボールを保持するためにプレーします。ボールを保持して、自分たちの攻撃が仕掛けられる体勢が整ったら、攻撃を仕掛ける。こうしたプレーを選択することが多いチームは、「スローテンポ」なチームという印象を受ける事があるのですが、ジュビロ磐田は「スローテンポ」なチームです。この「スローテンポ」という言葉は、ジュビロ磐田というチームの攻撃、守備を象徴するキーワードでもあります。

ジュビロ磐田は、ゴール数をシュート数で割った「シュート成功率」は11.1%でリーグ6位。目安となる10%を超えています。自分たちの攻撃が仕掛けられる体勢が整ったら攻撃を仕掛けるということは、反面相手の守備が整ってから攻撃を仕掛けるという事を意味します。整っている状態の相手の守備を崩して得点を奪うのは簡単ではありません。では、どうやって得点を奪うのかというと、セットプレーです。

ジュビロ磐田の得点パターンのデータを分析すると、セットプレー関連のプレーが占める割合が44%を占めています。ジュビロ磐田のセットプレーのキッカーを務めるのは中村俊輔です。中村の正確なキックがジュビロ磐田の武器になっていることがよくわかります。また、中村は「スローテンポ」な攻撃を好む選手です。DFの近くでボールを受けても、正確なキックで長い距離のパスも通せる技術があるので、フィールドを自由に動いてボールを受けます。ただ、中村がボールを受けるためには、ボールを奪ってから素早く攻撃するというチームでは、中村がボールを受けられないので、強みが活きません。ジュビロ磐田は、中村の強みを活かすためにわざと「スローテンポ」な攻撃を仕掛けているのです。

ジュビロ磐田は現在J1で最も失点が少ないチームです。被シュート数を攻撃を受けた回数で割った「被チャンス構築率」は、9.5%でリーグ3位。1試合平均の被攻撃回数は119.7回でリーグ4位。ジュビロ磐田の特徴として「スローテンポ」という言葉を用いて説明しましたが、スローテンポなチームは自分たちが攻撃を仕掛ける回数も少ないのですが、相手から攻撃を受ける回数も少ないのが特徴です。被攻撃回数の少なさも「スローテンポ」という特徴を裏付けています。失点数をシュートを打たれた数で割った「被シュート成功率」は、7.3%でリーグ4位と、シュートも打たせず、シュートを打たれても中々失点しないチームです。

ジュビロ磐田の守備の特徴を示す上で興味深いデータがあります。それは間接フリーキックの数です。間接フリーキックの数は、1試合平均3.5回でリーグ2位。間接フリーキックが与えられるファウルというのは、ほとんどオフサイドを取った時です。したがって、間接フリーキックの数が多いということは、ジュビロ磐田の守備がいかにオフサイドを誘発しているかがわかります。

ただ、ジュビロ磐田の守備にも弱点があります。それは中村俊輔です。攻撃では中村の自由な動きは武器になりますが、守備の時はジュビロ磐田の弱点でもあります。中村が動く事で空く場所は、相手にとって攻めるべき場所だからです。第12節に対戦した時は、中村が守る位置を徹底的に攻撃してチャンスを作り出しました。ただ、前回対戦時に比べるとジュビロ磐田は「攻撃→守備」の動きが改善され、選手が守るべき位置に戻る動きが速くなっています。失点が少ないのは、「攻撃→守備」の動きが改善されていることも要因です。

中村が守るのはジュビロ磐田の右サイド、川崎フロンターレの左サイドです。車屋、登里といった選手は、役割を自由自在に変えながら、ボールを受けて運ぶプレーが得意な選手です。いかに中村が守る右サイドを崩すか、この試合は注目です。

中村憲剛が「1人のプレーヤー」として純粋にサッカーを楽しめるチームになった

この試合から2017年シーズンの後半戦がスタートしますが、僕が注目しているのは中村憲剛の扱い方です。プレーではなく、扱い方です。僕が2017年シーズンも川崎フロンターレの書くことにしたのは、中村憲剛という選手と川崎フロンターレがどのように向き合うのか知りたかったからです。それは、シーズンが開幕して5ヶ月が経過した現在も変わりません。

中村は2017年で37歳になります。長年川崎フロンターレの勝敗は中村のプレーの良し悪しで決まっていましたが、今の川崎フロンターレは中村のプレーが悪くても勝てるチームになりました。谷口、大島、車屋、小林といった選手が成長し、責任を担い、チームを勝たせるプレーが出来る選手になりました。そして、チョン・ソンリョンや阿部のように、「自分のプレーでチームを勝たせるのが当然」という意識をもった選手が加入し、中村が先頭に立ち、チームを引っ張り、全てを背負わなくてもよいチームになりました。そして、中村の控えとしては贅沢すぎるかもしれませんが、家長という選手もいます。家長は後半戦のキーマンの1人であるのですが、それは別の機会に。

今の中村は、責任を分担出来るようになったことで、久しぶりに「1人のプレーヤー」として、純粋にサッカーを楽しめる環境にあると思います。37歳になったことで身体は動かなくなる部分はあるかもしれませんが、思考や技術は深まり、より効果的なプレーが出来る選手になる可能性があります。今までは、攻撃の全てを中村が担わなければなりませんでした。しかし今の川崎フロンターレでは、中村は最後の仕上げにのみ集中してプレーすることも出来るはずです。相手の狙いを外して、ニヤリと笑うようなパスを出す。そんな中村のプレーが数多く観られるんじゃないか。僕は楽しみにしています。

おすすめ