第97回天皇杯4回戦 川崎フロンターレ対柏レイソル レビュー「Be Professional Be Special」

第97回天皇杯4回戦、川崎フロンターレ対柏レイソルは1-0で柏レイソルが勝ちました。

僕はこの試合のプレビューのタイトルを、「Be Professional」とつけました。「苦しいときにチームのために頑張る」のではなく、「苦しいときほど自分のベストプレーを出す」事が出来るかを、この試合のポイントとして挙げました。

この試合の川崎フロンターレは、サンフレッチェ広島戦からスターティングメンバーを7人入れ替えて臨んだ事もあり、「出して、受ける」アクションのタイミングがあいません。
アクションのタイミングがあわないためパスを出すのが遅れ、縦方向にパスを出しても、ボールが止まらず、相手を外せていないためボールを奪われる事も多く、ボールを奪われなくても後ろにボールを戻してしまう。特に前半はこの繰り返しで、なかなか相手ゴール方向にボールが運べませんでした。

味方がどうプレーするのか分からない

川崎フロンターレの選手たちは、誰が、どこに、どのタイミングでボールを受けるのか分からないし、パスを出したら、どのタイミングでパスが返ってくるのかが分からない。そんな事を考えながらプレーしていた気がします。特に森本、ハイネル、知念といった選手にパスをした直後、他の選手のアクションが止まってしまう場面が何度もありました。

前半30分以降に相手ゴール方向にボールが運べるようになったのは、柏レイソルの守備のアクションが遅くなったのも要因ですが、家長と森谷が、「出して、受ける」プレーではなく、「運ぶ」プレーを選択するようになったからです。

ただ、普段の川崎フロンターレのように「出して、受ける」プレーの繰り返しで相手を動かし、相手を自陣深くに押し込んで攻撃し続ける事が出来ていないので、相手の体力を奪い、相手の配置を崩すまでには至りませんでした。

僕も経験があるのですが、一緒に試合でプレーした経験が少ないメンバーで試合に臨む時、「出して、受ける」のタイミングをあわせるのは簡単ではありません。

「ここでパスが来る」と思って動いてパスが受けられないと、「どう動いたらパスが受けられるのだろう」と考えてしまいます。サッカー選手は、次に起こすアクションが選択出来ないと、アクションが止まってしまいます。

この試合で川崎フロンターレの選手を見ていて、「アクションが止まっている」と感じた人もいるかもしれませんが、その要因は「何をすれば良いのだ?」と選手が迷ってしまい、プレーの度に考えながらプレーしていたからだと思います。

なお、相手がボールを持っている時、自分から遠い位置にボールが動くと、「ボールの動きにあわせて移動する」のではなく、「その場に止まる」プレーを選択する選手が多いのも気になりました。

特に森本、ハイネル、知念といった選手は、ボールが奪えないと感じた時や、ボールが自分の守備範囲と思われる範囲から遠ざかったら、アクションを止めて、休んでしまう事がありました。一旦休んでしまうと、再び自分の守備範囲にボールが戻ってきた時、素早くアクションを起こすのは簡単ではありません。柏レイソルは「出して、受ける」プレーが上手いチームなので、パス交換を繰り返しながら、川崎フロンターレの選手が動きを止めた瞬間に、守備者の間に素早く動いてボールを受け、相手ゴール方向にボールを進めることに成功しました。

連携がはかれない時は自分の技術で味方を楽にする

一緒に試合でプレーした経験が少ないメンバーで試合に臨む時、上手く試合をする方法はいくつかあります。

1つは「普段より動く」事。パスが受けられないと思っても、何も考えずに、とりあえず動き続けるという方法です。動き続けていれば、相手の守備者は動いている選手に対して対応しなければならないので、知らず知らずのうちに相手の守備が崩れてくる事があります。

もう1つは、この試合で家長や森谷が選択したように、「運ぶ」プレーを多用して、相手の守備を崩し、相手の守備を引きつけ、味方をより楽な状態でプレーさせる事です。

先日、レアル・マドリー対エイバルの試合を観ていたのですが、エイバルは11人が統制のとれた動きをしていました。レアル・マドリーはメンバーを入れ替えているため、「出して、受ける」プレーのタイミングがあわず、なかなか相手ゴール方向にボールが運べません。しかし、レアル・マドリーはイスコ、モドリッチという2人が、統制の取れた相手の守備を技術でかいくぐり、ボールを相手ゴール方向に運んでいきます。イスコとモドリッチはボールを奪われないので、エイバルの選手がボールを奪おうと2人、3人と人数をかけてボールを奪おうとするのですが、イスコとモドリッチは自分に相手が引きつけられた瞬間を見逃さず、空いた選手にパスを出すことで、味方にプレーしやすい環境を作り、相手の統制のとれた守備を崩していきました。

レアル・マドリーの守備はエイバルのように統制がとれておらず、なかなかパスコースを消すような守備が出来ません。したがって、エイバルがパス交換を繰り返して、レアル・マドリーのゴール方向にボールを運べる場面が何度もありました。しかし、ボールは運べても、カゼミーロ、バラン、セルヒオ・ラモスという3人の守備範囲が広く、自分の守備範囲に入ったら、味方が守っているエリアにもかかわらず、簡単に1対1の争いに持ち込みボールを奪ってしまうので、統制がとれた守備が出来なくても問題になりません。この繰り返しで、エイバルの攻撃をねじ伏せてしまいました。

メンバーが変われば、統制がとれたプレーが出来ないのは、どこも同じです。しかし、強いチームは統制がとれていなくてもカバーできる選手がいます。この試合の川崎フロンターレの選手たちからは、「ベストプレーを披露しよう」という気持ちは感じられたのですが、選手同士の連携をカバーしてしまうほどの技術を持った選手はいませんでした。

家長、森谷、奈良といった選手からはそのような意識が感じられましたし、プレーで表現していましたが、柏レイソルとの差を埋めるほどではありませんでした。

外国籍選手に求められるのは「スペシャル」なプレー

残念だったのは、エドゥアルド、エドゥアルド・ネット、ハイネルのプレーです。
3人の外国籍選手に期待されているのは、残酷なことをいうなら、「他の日本人選手には出来ないプレー」です。他の日本人選手がつかまっていても、3人がボールを持った時のプレーヤ、ボールを奪う時のプレーで、相手の選手を上回る質を披露していれば、もっと違う試合になったと思います。少なくとも、柏レイソルのクリスティアーノやキム・ボギュンのプレーとは差を感じました。

特に残念だったのは、エドゥワルド・ネットのプレーです。

エドゥワルド・ネットの事はここにも書きましたが、Jリーグの中ではとても能力の高い選手です。

しかし、最近の試合を観ていると、エドゥワルド・ネットは以前のように質が高いプレーが出来ていないと感じます。ボールが止まらず、プレーの選択が遅れ、ミスを繰り返す。パスを出した後のアクションが遅く、「出して、受ける」プレーのテンポが遅れる。守備の時にも、自分の守備範囲から遠ざかったら、アクションを止めてしまう。そんなプレーが目立ちました。

サッカーというスポーツは、中央のMFのプレーによって、他の選手のプレーの質まで変わってしまう事があります。中央のMFのプレーが遅ければ、他の選手のプレーも遅くなります。この試合を通じて、川崎フロンターレの「出して、受ける」動きのテンポが遅いと感じたかもしれませんが、エドゥワルド・ネットのプレーのテンポが遅かった事も要因だと、僕は感じました。

きちんと準備していたが、まだまだ足りない事がある

この試合のエドゥワルド・ネットのプレーの出来は、悩ましい問題をチームにもたらしました。それは、谷口を起用するポジションです。

この試合のエドゥワルド・ネットのプレーであれば、谷口を中央のMFで起用した方が良いプレーをすると思います。ただ、谷口が中央のMFでプレーするならば、奈良とエドゥワルドが中央のDFでプレーする事になります。奈良とエドゥワルドの二人は、攻撃時に味方にパスを出すのが上手い選手ではありません。谷口が中央のDFにいることで、パスで相手の守備を外す事が出来ますが、谷口をMFでプレーさせると、川崎フロンターレの強みを一つ失う事にもなります。

エドゥワルド・ネットのプレーの質が下がっているのは、疲労かと思ったのですが、出場停止明けの試合でのプレーとしてはあまりにも低く、言い訳が出来ないレベルのプレーでした。他の選手はもっと酷かったので90分出場しましたが、このレベルのプレーで満足してもらっては困ります。

もし今週末にルヴァンカップの決勝が行われるなら、外国籍選手は、エウシーニョ、エドゥワルド、ハイネルの3人になるかもしれません。

僕なら、今のエドゥワルド・ネットよりは、交代した直後に悔しそうな顔をしていたハイネルに期待したくなります。ハイネルはこの試合で自分に求められていた事はよく理解していたのだなと、プレーを観ていて感じました。ただ、自分に求められる事、自分が出来る事、チームとしてプレーする時にすべき事の狭間に苦しんでいたようにも見えました。ルヴァンカップの決勝で想定される、1点取りたい場面での起用のように、求められるプレーが明確ならば、良いプレーが出来る気がします。

この試合を振り返ると、選手はきちんと準備していたと思いますが、まだまだ足りない事があると突きつけられた試合だと思います。

同じ対戦相手との試合が、中3日でやってきます。限られた時間でチームがどう修正し、試合まで準備するのか。そして、鬼木監督はどのような決断を下すのか。注目したいと思います。

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