プロフェッショナルたちの孤独なレースは続いてく。2014年J1第33節 川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島 レビュー

2016/10/15

2014年第33節、川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島は1-1で引き分け。今日の引き分けで、今シーズンの川崎フロンターレの順位は6位以下が確定しました。

優勝争いも、残留争いも関係ない試合。だからこそ、意地とプライドをかけたプロフェッショナル同士の戦いを観ることが出来た試合でした。

これぞボランチというプレーをみせた稲本

稲本は第23節の徳島ヴォルティス戦以来の先発でしたが、本当に素晴らしいプレーを披露してくれました。フィールドの中央に、素晴らしいプレーヤーが1人いるだけで、これほどチームが変わるのか。特に前半のプレーを観ながら、そんな事を感じました。

特に凄かったのは、ボールを奪うプレーです。相手の背後から足を出して奪う、身体をぶつけて奪う、スライディングでパスをカットして奪う、相手がトラップした所を狙って奪う。バリエーションに富んだボールの奪い方は、圧巻でした。

ボールを奪ってからも、素早くFWに通すパスだけでなく、ゆっくりとした横パスも交え、攻撃のリズムを整えながら、サイドチェンジや味方の前進を促すようなパスを出し、ゲームのリズムをコントロールしてみせました。ボランチは、ポルトガル語で「ハンドル」という意味なのですが、今日の稲本は「ボランチ」という言葉が相応しいプレーぶりでした。

流れを変えた佐藤と高萩

川崎フロンターレペースで進んでいた試合の流れが変わったのは、後半10分に佐藤寿人と高萩洋次郎が入ってからです。2人が入るまで、サンフレッチェ広島は攻撃のリズムが悪く、ほとんどチャンスを作っていなかったのですが、経験と実力のある2人が流れを変えました。

サンフレッチェ広島の攻撃のリズムが悪かった要因は、皆川、野津田、浅野の3人です。3人は、攻撃の時にほとんど相手を外すアクションを起こさないため、DFに常に捕まっていました。捕まっている相手にパスは出せないので、縦パスを出したくても出せないサンフレッチェ広島は、なかなか攻撃のスイッチを入れることが出来ずにいました。

佐藤寿人は、まずCBの谷口を動きで崩してみせます。味方がトラップした瞬間、DFの背後を狙う動きをみせ、DFラインを押し下げます。DFラインの裏を狙う動きだけでなく、時には下がってボールを受ける動きを繰り返したことで、DFラインとボランチとの間にスペースが生まれ始めました。佐藤の動きで生まれたスペースで高萩がボールを受けるようになってから、サンフレッチェ広島の攻撃のリズムが、急激によくなりました。2人の息のあったコンビネーションが、試合の流れを変えてみせました。

プロの先輩としての意地をみせた福森

この試合で、来シーズンから川崎フロンターレの入団が決まっている車屋が初先発しました。正確な技術を活かしたパス、スピードを活かしてファウルなしでボールを奪う守備、そしてほとんどミスのないプレーは、今後に期待を抱かせるプレーだったと思います。ただ、そのミスのないプレーぶりは、悪く言えば無難で、あまり見どころのないプレーぶりだったとも言えます。新人なのですから、ミスをしてもいいので、もっと思い切ったプレーをみせて欲しかったです。

車屋とは逆に、ミスは多かったものの、観客を湧かせるプレーをみせたのが、車屋と途中交代で入った福森です。福森は、車屋と同じ22歳。前節は前半45分で交代させられ、来シーズン含めた自分のポジションがなくなるという危機感を募らせていたと思います。ただでさえ、同じ歳で、同じ左利きで、同じサイドバックとセンターバックが出来る選手が入ってくるのですから、なおさらです。短い出場時間でしたが、交代後のプレーには、本人の強い気持ちが伝わってきました。

特に強い気持ちを感じたのは、失点直後のキックオフ後のプレーです。パスを受けた福森は、迷わず左サイドをドリブルで持ち上がり、3人をかわしてみせました。3人目をかわしたところでボールが流れ、タッチラインを割ってしまいましたが、「もう1点取る!」という気持ちが感じられたプレーでした。

そして、凄かったのは、その後にみせたプレーです。相手のクリアボールをひろった後、山本に出したロングパス。左足から繰り出されたロングパスは、ライナーで山本にぴたりと通りました。中継で観ていると、何気ないプレーにみえますが、スタジアムでは「おおぉ!」というどよめきの声が上がるほど、スーパーなロングパスでした。

意地とプライドをかけた戦いは続く

今日紹介した選手たちのプレーから感じたのは、プロフェッショナルとしての意地とプライドです。

「俺を使え!」「俺のプレーを見ろ!」「俺がいればこんなにチームが変わるんだ!」彼らのプレーからは、そんな言葉が聞こえてくるようでした。

勝利も敗北もなくても、プロフェッショナルたちの孤独なレースは続いていきます。2014年のシーズンも残り1試合。最終節だからこそ、プロフェッショナルの意地とプライドをかけた戦いを見てみたいと思います。

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