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2016年J1セカンドステージ第7節 川崎フロンターレ対ヴァンフォーレ甲府 レビュー「分かりづらいミス、覚えなきゃいけない戦術を理解する」

   

2016年Jリーグセカンドステージ第7節、川崎フロンターレ対ヴァンフォーレ甲府は、4-0で川崎フロンターレが勝ちました。

大久保と風間監督が「ミスが多い」という理由

この試合の後に、大久保は「まだまだミスが多い」と語っていましたし、風間監督も「まだまだ最後のプレーが雑」と語っていました。4-0で勝った試合の後とは思えないほど、プレーを反省する言葉が多かったように思えます。

前節の湘南ベルマーレ戦の後、「ラストプレーはスピードを上げ過ぎちゃダメな理由」という記事を書きました。ゴールを奪う1つ前のプレー、すなわち「ラストプレー」を行うペナルティエリア付近は、守備者の人数も多く、距離も近いので、スペースがありません。スペースがなく、相手が近いエリアでボールを奪われずに攻略するためには、より正確に、「止める」「受ける」「外す」「運ぶ」という動作を行わなければなりません。

正確に行うためには、走るスピードが速くなると、身体を一方向に強い力が働いている状態になるので、ボールを正確に止める、相手を外すといった動作の質が落ちてしまいます。また、「運ぶ」時に、スピードを上げてしまうと、ボールが足から離れやすくなってしまいます。相手を攻略するためには、プレーのスピードを高めなければなりませんが、特に走るスピードが早過ぎると、逆にプレーのスピードが遅くなる。その事を理解していなければなりません。スプリント数が多いから、ゴールを奪える回数が多いかというと、そうではないのです。むしろ、スプリント数が多いから、シュートのミスが多かったり、ボールを正確に止められないのではないか。そんな疑いを持ってもよいくらいです。

大塚、橋本、三好といった選手は、ヴァンフォーレ甲府の守備者の間でボールを受ける事は出来ていました。ところが、受ける時にボールを浮かせてしまったり、受ける時にゴールに背中を向けてボールを受けてしまうので、次のプレーに時間がかかったり、ボールをパスの出し手に戻したりと、相手の守備を崩すのに手間がかかる状態を、自ら作ってしまっていました。

また、エドゥアルド・ネット、中村といった選手も、正確に縦方向にパスを出していましたが、受け手がパスを止めるとき、ボールが地面から離れてしまうようなパスだったり、止めやすい足に正確につかない場面もみられました。パスが地面から浮いてしまうパスを出してしまうと、受け手がパスを止めるのに時間がかかってしまいます。また、相手を崩すアクションを開始するとき、縦方向への速いパスは有効なのですが、縦パスばかりがアクションを開始するきっかけになっていたため、相手にとって守備がしやすい状況を作ってしまっていました。縦方向のパスは、守備者にとって、目で追いやすいので、比較的対応しやすかったりしまいますので、縦方向だけでなく、斜め方向のパスを活用すると、スピードの変化をつけずに、相手の守備を攻略することが出来ます。

湘南ベルマーレ戦の反省を活かし、ペナルティエリア前では一旦スピードをゆるめ、相手を押し込んだ状態を作り出してから、攻撃を仕掛けることで、相手からカウンターを受ける回数を減らすことに成功していました。湘南ベルマーレ戦の反省はきちんと活かせていたのですが、反面「押し込んだ状態からどう崩すか」という点で、まだまだ突き詰めるべき点があることが分かった試合だと思います。

三好が覚えるべき「戦術」とは

この試合、三好が後半開始から出場しました。風間監督は、試合後のスカパーのインタビューで、「もっと戦術を覚える必要がある」とコメントしていました。風間監督が語る「戦術」と、Twitterで戦術を語りたがる人や一般的なサッカーコーチの「戦術」は、全く違います。では、風間監督が三好に覚えてもらいたいと考えている「戦術」とは、どんな事なのでしょうか。

三好に求められていたのは、ドリブルでボールを運び、相手の守備を崩す動きでした。ヴァンフォーレ甲府の守備は、場所を守ることを重視しています。しかし、ドリブルでボールを運ぶ選手が、ペナルティエリアを横切るように進むと、守備者は場所を外して対応しなければなりませんので、人がいることで守られていた場所が空いてくるようになります。三好にはドリブルで運ぶ動き、そしてラストパスは非常に質が高いので、場所で守るヴァンフォーレ甲府のようなチームにとっては効果的でした。実際に、オウンゴールを誘ったり、惜しい右足のシュートがあったり、よいプレーもありました。

ただ、良いプレーはみせるのですが、単発です。良いプレーか悪いプレーしかしないのです。中間がないのです。攻撃を開始する時にパスを受けたり、ボールが回っている時にマークを外す動き、そして、ボールを受けてドリブル出来ないと判断したら、簡単に大久保や小林に預けて、自らはゴール前に走る。こういった、周りを巻き込みながら、自分を活かし、活かされるようなプレーが少ないのです。三好は、ボールを持った時には、確かに素晴らしいプレーをします。しかし、大久保のように、時に周りを活かすことで、最後に自分が活きるためのプレーをする。あるいは、小林のように、ゴールを奪える場所を空けておいて、相手を動きで崩すようなプレーは、まだまだありません。

そして、ドリブルでボールを運ぶとき、まだまだスピードを「上げ過ぎる」傾向があります。スピードを上げてしまうと、相手がボールを奪いに来た時、ボールをキープして渡さない、といったプレーが出来なくなります。相手を見て、どうやったら守備を崩すことが出来るのか。どうやったらゴールが奪えるのか。まだまだ、三好は自分個人のプレーに「酔っている」時があり、崩すための武器が多くありません。そして、武器を今は増やしつつ、磨いている最中なのだと思います。その中には、当然「ボールを奪う」という武器も含まれます。

こうした、個人個人が相手に対して駆使する武器の質が高く、そして数が揃っていなければ、高度な集団戦術は成り立たないというのが、風間監督の考えです。「スライドが遅い」とか「ラインを揃えなきゃ」といったコメントを目にしますが、目に見える事象に対して、フィールドで何が起こっているのか、選手が表現できる技術があるのか、その点を踏まえないと、戦術論は机上の空論になってしまいます。その点は、ぜひご理解頂けると嬉しいです。

批判されないうちはプロじゃない

この試合、板倉がリーグ戦初出場を果たしました。板倉はまだまだ試合出場機会が少ないので、ちょっといいプレーすると「凄いね!」「こんな事も出来るんだ!」と言ってもらえます。それは、まだまだプロサッカー選手として認められていない証拠でもあります。三好のように、ミスを許容してもらいつつ、試合に起用してもらえる状態も、プロサッカー選手とは言えません。本当のプロサッカー選手は、分かっていても止められない技術を持ち、「また、アイツかよ!」と言われたり、チームが負けたら真っ先に批判される選手の事です。むしろ、「アイツを外せ!」と言われるくらいになってこそ、本物のプロサッカー選手と言えるのだと思います。

川崎フロンターレには、中村、大久保、小林、井川、チョン・ソンリョンといった、本物のプロサッカー選手が揃っています。彼らのような選手に学びつつ、板倉や三好のような選手が、10年後には同じことを口にし、行動で示す。そんなチームになって欲しいと思います。そう考えると、まだまだチームとして突き詰めるべき点も、やることもたくさんあります。勝ち続けているからといって、変化や進化のための歩みを止めてはならない。そう考える選手が増えたからこそ、4-0でも課題を口にし、浮ついたコメントが聞かれなくなっているのだと思います。サポーターの皆様にとっては、面白く無いかもしれませんが、強いチームとはこういうものです。

次はアウェーで好調のサガン鳥栖戦。夏の鳥栖は蒸し暑く、簡単な試合にはなりません。この試合で出た課題を、どう解決しようとしているのか。次の試合でも引き続き注目したいと思います。

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