藤田俊哉には清水FCのようなチームを作って欲しい。書評「日本サッカーMF論」(藤田俊哉、杉山茂樹)

日本サッカーMF論

J1通算100ゴールを決めた藤田俊哉さんの凄さは、日本代表での活躍の機会が少なかったがゆえに、コアなサッカーファン以外にはあまり知られていない気がします。したがって、藤田さんがどのような考えでプレーしていたのかも、あまり知られていない気がします。それは、藤田さんが自身の事を「感性でプレーする選手」と表現し、現役でプレーしていた頃は、言葉でサッカーをあまり語りたがらなかったのも大きな要因だと思います。

本書は、藤田さんのサッカーに対する考え方だけでなく、サッカーをフォーメーションで分析する記事を書くことが多い杉山茂樹さんの解説を掲載することで、「感性/プレーヤー目線でサッカーを語る藤田俊哉」と「観戦者目線でサッカーを語る杉山茂樹」という2つの視点でサッカーをより深く分析しようと試みています。双方の主張が噛み合っている部分と噛み合っていない箇所があるので、構成は賛否両論あると思いますが、興味深く読ませていただきました。

システム論は不要か

2人の考えが最も異なっているのが、「システム論」についてです。
藤田さんは「システム論」について、以下のように語っています。

いまだによくわからないのが、システム論やポジションの話です。
(中略)
選手は必要とあれば、その場所に走るだろう。
1人がずれたら、その他の選手も少しずつずれるだろうというのが、僕のシステム論です。

杉山さんは「システム論」について、以下のように語っています。

俯瞰の目は、サッカーゲームを客観視する上で有効な手法なのだ。
布陣の話はその延長線上にある。
(中略)
数字ではなくデザインで、紹介したい。これが本音だ。
(中略)
数字というより記号美術。
そこには計り知れない客観性が含まれている。

なお、僕自身のシステムについての考えを書かせていただくと、最近は相手のシステムに対して「いかに数的優位を作るか」を重視してシステムを組んでいるチームが多いと思います。例としては、ペトロビッチの3-4-2-1などは攻撃と守備の局面で数的優位を作って、相手を上回ろうと考えてシステムを組んでいます。

ただ、こういうシステム論だけだと、最近の攻撃戦術は説明できないのも事実です。4-2-3-1を採用するチームが多い現在では、局面を打開する個人戦術が重要になっています。例えば、先日のマンチェスターダービーでは、マンチェスター・シティのナスリが、攻撃時に相手のサイドハーフとサイドバックとセンターハーフの中間のポジションにポジションを取り続けたため、厳密にポジションが決められているマンチェスターユナイテッドの選手は、誰がマークについてよいか決められず、混乱したままゲームが進んだことが、大差がついた要因となりました。余談ですが、ペトロビッチの戦術は、サイドなど特定の局面で相手が数的優位を作られると、意外に簡単に崩れます。(川崎が広島と浦和に強いのは、こういう理由もあります)

藤田さんの考えと、杉山さんの考えのどちらが正しいと、ここで言うつもりはありません。
重要なのは選手と観戦者では、サッカーの見方はここまで違うのだということを認識しておくべきなのだと思います。

清水FCの「3-3-4」

本書を読んでいて印象に残ったのは、藤田さんが小学生時代に所属していた清水FCについてです。清水FCといえば、全国有数の強豪チームとして、全国のサッカー関係者の尊敬を集めていたチームでした。その清水FCのシステムは「3-3-4」。藤田さんは「3-3-4」の中央の「2」のポジションだったそうですが、自然とCFの少し後ろのポジションでプレーしていたそうです。いわゆる「トップ下」です。

なぜ、清水FCのシステムのことが印象に残ったのかというと、藤田さんがあるチームのフォーメーションを「3-3-4」と表現していたからです。そのチームとは、FCバルセロナ。FCバルセロナがクラブワールドカップ決勝でサントスと対戦した時のフォーメーションは、一般的には「3-4-3」と表現されてましたが、藤田さんは「3-3-4」だと感じたようです。

僕は清水FCのサッカーがどんなサッカーをしていたか、おぼえてはいません。以前「3-4-3」に関する記事を書きましたが、「3-4-3」は攻撃的を重視したシステムです。清水FCが人々に愛されたのは、FCバルセロナ同様に攻撃を重視した、見てる人も選手も楽しいサッカーだったからなんじゃないかと、本書を読んでいて感じました。

指導者藤田俊哉に期待すること

本書を読み終えて、個人的に藤田さんに指導者として期待したいことがあります。それは、清水FCのように見てる人も選手も楽しいサッカーを、実現できる指導者になって欲しい、という点です。藤田さんは指導者のスタートとして、オランダのVVVを選びました。オランダは「3-4-3」を生み出した国で、サッカーの攻撃に関する独自の考え方は、サッカー界に新たな風を吹き込んでいます。藤田さんならオランダで学んだ攻撃サッカーを、自身が指導するチームに活かしてくれるはずです。

なお、清水FCも堀田哲爾さんと、綾部美知枝さんという二人の素晴らしい指導者によって作られたチームです。藤田さんなら二人にも負けない素晴らしい指導者になれるんじゃないかと期待しています。

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