勇気を失えば、生まれてきた価値がない。書評「争うのは本意ならねど-ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール-」

2014/12/23

本書は、我那覇和樹(当時は川崎フロンターレ所属)が、適切な医療措置を受けたにもかかわらず、誤った基準が適用され「ドーピング違反」と認定された後、Jリーグのドクター、選手会、故郷沖縄の人々の支援を受けて、自分の子供のために無実の罪を晴らすために立ち上がり、最後に無罪を勝ち取るまでを描いたノンフィクションです。

自分のためではなく、人のため。未来のため。

この物語を読んで、まず考えたこと。それは、自分が同じ状況におかれた時、我那覇や彼を支えた方々のような行動がとれるのか、ということでした。

1度は裁定に従う決意をした我那覇ですが、自分の息子のために、無実の罪をはらすために立ち上がります。そんな我那覇に、立ち上がるきっかけを作ったのは、Jリーグのドクターです。彼らはスポーツ医療現場の改善の為に立ち上がります。我那覇も、Jリーグのドクターたちも、自分の為ではなく、人のため、未来のために立ち上がる。そんな人々の力強さが、本書からは伝わってきます。

「オシムの言葉」以降、日本サッカー界の問題点を伝え続ける木村元彦

そんな無私の奉仕を続ける人々と比較し、ドーピング違反と認定した人物や時の日本サッカー界の権力者たちが権力に取り付かれ、誤った情報を信じて突き進む様も、本書では丁寧な取材によって暴きだされています。

著者の木村元彦は、「オシムの言葉」というベストセラーを発表して以降、大分トリニータの元社長で現在は内閣官房参与を務める溝畑宏(天国と地獄)を取り上げた書籍を発表するなど、日本サッカー界の華やかな成功の影に隠れた問題点を、継続して取り上げています。
もともと「悪者見参」「蹴る群れ」などユーゴ圏のサッカーに造詣の深いライターでしたが、「天国と地獄」に続き、Jリーグの問題点を通じて、それに関わる人間を深く描いたノンフィクションとして、読み応えのある作品です。

勇気を失えば、生まれてきた価値がない

何気なく読んだツイートに、興味深い内容が書かれていました。


我那覇が当時戦わなければ、未来で救急車で運ばれた自分に、適切な治療を受けさせることは、できなかったかもしれません。

最後に、この書籍で紹介されていたゲーテの言葉を紹介します。この本がどのような人々のことを描いたのか、端的に表現された言葉です。

「財産をなくしたら、また働けばよい。名誉を失ったら、挽回すればよい。
しかし、勇気を失えば、生まれてきた価値がない」

関連情報

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