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天才の育て方-イチローはどのように育てられたのか-

      2014/01/08

いつの世にも、どんな分野にも「天才」と称される人がいます。自分たちの価値観、あるいは想像から外れた人の事を「天才」とよぶのであれば、そんな「天才」はどのようにしてうまれるのか。その事を解き明かそうと試みたのが、吉井妙子さんの著書「天才は親が作る」です。

「天才は親が作る」には、10人のアスリートの親たちのインタビューが収められていますが、そこには数多くの共通点があったといいます。親たちは特殊な才能ではなく、どこにでもいる平凡な親ですが、子供に対する愛情のかけ方や接し方がちょっとだけ違ったというのです。

そこで、「天才は親が作る」で取り上げられているアスリートのエピソードから、親たちは「天才」と呼ばれる人物をどのように育てたのか紹介します。今回はイチローのエピソードです。

「天才」。この言葉が最も相応しいアスリートとして浮かんでくるのが、イチローかもしれません。本人も「人が打てないボールがヒットできるというのが天才の定義だとしたら、そうかもしれない」と、控えめねがらも認めています。

毎日3時半から子供の練習に付き合う

イチローは3歳の時に父に買ってもらったビニールのグローブとバットを、片時も離さなかったそうです。父親は小さな部品工場を経営し、3人のパートを雇いながら妻と働いている典型的な町工場の経営者でした。しかし、イチローが小学校3年生以降、その生活がガラリと変わります。

イチローが小学校2年生の頃、「僕、野球がしたい」とはっきりと父親に訴えます。小学校の部活は3年生から出来るが、野球部はありませんでした。父親は人気のサッカー部を勧めたが、頑として受け入れません。イチローは、当時から頑固だったそうです。駄菓子屋に菓子を買いに行って、目的のものがないと店の眼でひっくり返って泣きわめき、食事も、嫌いなおかずがテーブルにのると、はしもつけない。困った父親は、食べないより良いとイチローの好物であるタイやヒラメを買いに走ったそうです。

そんな、イチローが野球をやりたいという。しかも毎日。相当意志が固いとみた父親は、提案します。

「じゃあ、お父さんが相手してあげるけど、毎日やれるか。」
「うん」
「男の約束だよ」

父親は、自分から提案したとはいえ、とんでもないことを約束しちゃったな、とすぐに後悔したそうです。子供との約束は、大人からは反故に出来ないと思ったからだそうです。

僕が約束を反故にしたら、子供は心に傷を負う。
幼ければ幼いほど、その傷は深く残る。
だから、約束した以上は何にもまして、
イチローとの野球遊びを優先させなければと思った。

子供の目線に立つ

イチローの父親は、零細企業の経営者です。企業の論理からすると、孫請けのような末端企業は、発注先のスケジュールが優先されますが、イチローの父親は午後三時半以降はイチローと一緒の時間を選んだそうです。そのため、時間がやりくりできず、取引先が変わったこともあるそうです。

もし、日本の多くの父親がイチローの父親と同じ状況に立たされたら、まずは仕事を優先させるはずです。しかし、それは「大人側の論理」だとイチローの父親は語ります。


子供の目線に立っていない。
子供は約束を破られると心の中に深い傷を負ってしまう。
子供に約束は守るものと教えておいて、
大人が破ってしまえば、説得力がなくなります。

午後3時半、イチローが下校すると、キャッチャーミット、ホームベース板、球が70個入ったスーツケースを持ち、キャッチボール、50球前後のピッチング、200球ほどのティーバッティング。最後に内野ノック、外野ノックを50球ずつ。この基本メニューを小学校6年生まで続けたそうです。しかし、イチローが飽きていると感じた時は、イチローが野球の次に好きな相撲に切り替えたそうです。

子供の本能に任せていると、時には明らかに違う方向に行きそうなときもあります。そんな時は、子供に判断させるという形を取りながら、暗に軌道修正を図るようにしたそうです。

父親の威厳を示そうと高飛車な態度を示すだけでは、
子供はついてこないだろうし、反発心も生まれる。
子供の心をひきつけるためには、子供の目の高さで物事を見て、
控えめで謙虚でなければならないと思う。
(中略)
親のほうが子供の後ろからついていけばいい。

子供の夢を手伝うのが親の務め

夢と現実のギャップを肌で知っている大人は、子供が口にする夢をいちいち真摯には受け止めず、大抵の親は「お前みたいなものがやれるわけがないじゃないか」というのがオチである。しかし、イチローの父親は違いました。

お前みたいなものがとか、そんな夢みたいなことを言ってとか、
親がそんな事を言ってしまったら、子供は下を向いてしまいます。
絶対に言ってはならない言葉だと思いますね。
あくまで子供は大きな夢を持って、将来に向けて勉強をしているんだから、
親はそんなエゴ丸出しの言葉は吐いちゃいけないと思う。
(中略)
子供の夢を手伝うのが親の務めなんです。
プロになれるかどうかは分からない。
しかし、才能を引き出し、可能性を見つけてやるのが親の義務だと思います。
自分の時間に子供を当てはめようとするから無理と思うのであって、
子供の時間に自分が合わせればいいんです。

喧嘩した時のスキンシップ

どんな仲がよい親子でも時には喧嘩をします。喧嘩の解消剤としてイチローの父親が思いついたのが、寝る前に足の裏をもんでやるというスキンシップでした。足底筋を刺激すれば運動神経が発達するというような知識があったわけではなく、偶然の産物だったそうです。それがきっかけとなって、高校で寮生活を始めるまでの7年間、寝る前に1時間ほど足を揉むことが習慣になります。揉みはじめのころは、22.5cmしかなかった足が、足揉み最後の日には、28.5cmになっていたそうです。

子供の視線を意識する

イチローの父親は、他人との会話も徹底して気をつけたそうです。買い物先や、バッティングセンターなどでばったり知人に会うこともあります。そんな時は、いつもイチローの視線を意識しながら、丁寧に、頭を低く、時に腹が立つような用件でもイチローがいると、怒りを抑えて相手を立てる丁寧な話し方に切り替えたそうです。そこには、「言葉だけではなく、背中で子供を教育しなければならない時もある」という、考えがあったそうです。

イチローの父親は自分の子育てを振り返って、このように語っています。

男の子だから好きなことをやらせる、
というのが私の方針だったから貫き通して来ましたけど、
一歩間違えればイチローの人生をめちゃくちゃにした可能性だってあった。
今、考えるとね。
あの時代は僕も一生懸命だったから、そんなことを考える余裕もなかったなぁ。

息子と自分自身を信じる心が、偶然を必然にしてきたのです。

イチローの育て方から学べること

  • 子供との約束は必ず守る
  • 子供の夢を手伝うのが親の務め
  • 自分の時間に子供を合わせるのではなく、子供の時間に自分を合わせる
  • 子供の視線を意識して、丁寧に、頭を低く
  • 言葉だけではなく、背中で子供を教育する

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