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天才の育て方-育て方にはルールがある-

   

いつの世にも、どんな分野にも「天才」と称される人がいます。自分たちの価値観、あるいは想像から外れた人の事を「天才」とよぶのであれば、そんな「天才」はどのようにしてうまれるのか。その事を解き明かそうと試みたのが、吉井妙子さんの著書「天才は親が作る」です。

「天才は親が作る」には、10人のアスリートの親たちのインタビューが収められていますが、そこには数多くの共通点があったといいます。親たちは特殊な才能ではなく、どこにでもいる平凡な親ですが、子供に対する愛情のかけ方や接し方がちょっとだけ違ったというのです。

そこで、「天才は親が作る」で取り上げられているアスリートのエピソードから、親たちは「天才」と呼ばれる人物をどのように育てたのか紹介します。今回はこれまで紹介した10人の天才の例から、育て方のルールを考えます。

幼少期に裸足を通じて、脳への適切な刺激を与える

運動生理学、コーチ学の第一人者によると、天才を育てた親たちの子供への関わり方は、コーチ学と一致している部分も多く、むしろコーチ学の究極的な姿と言えなくもないといいます。才能を早くして開花させたというのは、実は、いかに効率よく、合理的に、短期間でトップアスリートを育てたと、言い換えることもできるからです。

スポーツ選手を目指した子供が大成するかどうかの第一段階として、親から引き継いだ遺伝に一致した競技かどうかが問われます。筋肉には瞬発系の筋肉が多くを占める白筋と、持久系のスポーツに適した赤筋の2タイプがあります。この筋肉の割合は、遺伝によるものが大きいと言われます。ゆえに白筋が優性の人は持久系のスポーツは向かないし、赤筋が優性の人は、瞬発力が必要とされるスポーツに向きません。

この要素を見極めることが、トップアスリートとして大成するには重要なのですが、これまで紹介した10人の親たちは、その選択を間違っていません。ただ、遺伝的要因が一致していれば天才が育つわけではありません。生まれた後の、親や地域社会や先生がどう接するかで、人生観や価値観が決定づけられます。外的要因は、脳神経のネットワークが形成される3〜4歳までに決まると言われています。つまり、この頃にどんな運動あるいは動きをさせるかで、その子の運動能力がほとんど決まってしまうのです。

人間の脳は生後2ヶ月から3、4歳くらいまで急激な成長を遂げて7割ほど出来上がり、10歳までにほぼ完成します。だからこそ、この間に運動に適した刺激を与えてやることが重要なのです。そのためには、足の裏を刺激することが大切だといいます。足の裏を刺激すると、バランス感覚が磨かれるだけでなく、脳を刺激し、脳の発達にも役に立つのだといいます。

これまで紹介した10人の例を挙げると、イチローは小学校3年生から中学校3年生まで一日も欠かすこと無く、父親が息子の足を1時間ほど揉み続けたというし、清水宏保は学校から帰ると父に下駄履きにを命じられ、足でタオルつかみの訓練のさせられてました。それ以外にも、子供の頃に裸足で遊んだとか、裸足になった経験をもつ選手ばかりです。なお、裸足になるという環境は、都会生活者にはほとんどなく、非常に難しいのですが、裸足になるだけでなく、幼児の頃にハイハイを多くする事も、脳への適切な刺激を行うには、重要なのだそうです。

親たちが競技の指導者である

これまで紹介した10人の例を振り返ると、親たちが競技の指導者であるという事実は見逃せません。親が楽しめば、子供にも面白い遊びとして伝わります。成功した選手は、皆オタクといってよいくらい、その競技が好きです。トップアスリートになればさまざまな試練が待ち受けますし、壁にぶち当たる辛さはあるものの、その競技が趣味と言っていいくらい好きなのです。

子供たちは飽きっぽいですが、技を覚えるには、繰り返し学習が必要です。天才だろうがなんだろうが、繰り返し学習は避けて通れません。この繰り返し学習を、子供たちに飽きさせないでやらせるのは、難しいです。天才児の親たちは、繰り返し学習をさせるために、さまざまな工夫を凝らしていました。イチローの父親は、イチローが練習メニューに飽きてくると、好きな練習に切り替えたり、相撲をとったりしたそうです。

褒め上手であることも大切です。子供は褒められると嬉しい。親だけでなく、他の大人に褒められればさらに自信がついて、子供心にもっと上手くなりたいと思うものです。大人たちにとっては、「子供にしては上手い」という前提があるのですが、子どもたちにとっては、この上なく嬉しい言葉なのです。

天才児の親たちは、一様に子どもと接するときの言葉にも注意していました。子供に教える時は、その知的水準に合わせなければ、理解してもらえないからです。子供と同じ目線に立ってものを見て、語ってきたからこそ、飽きずにやってこられたのです。杉山愛の母親は、こんなことを語っています。

子供が1歳なら、親も1歳。
子供が生まれてから初めて、その子の親になったんですから。
子供が幼稚なら親も幼稚なんです。
経験だけで大人の傲慢さを子供に押し付けてはいけない。

お金も時間もかけて、汗もかく。

天才児の親たちは、道具にもこだわりました。丸山茂樹の父親は、9歳の丸山に合うクラブや靴を特注し、里谷多英の父親も、毎年のようにスキー靴や板、ウェアを買い替え、イチローの父親も、プロ選手が使うような高価な物を買い与えました。そして、父か母かは別にして、どこの家庭も子供が学校から帰る午後3時半から4時には、仕事を切り上げ毎日帰宅しています。それから夕方まで、毎日のように濃厚な”遊び”とう名の練習が重ねられていったのです。

親が一緒に汗を流したというのも、大事な要素です。子供に厳しいことを要求しながら、自分は見ているだけだったら、子供は途中で止めるはずです。加藤陽一の母親は、中学の男子生徒にバレーを教える傍ら、店を守り、主婦の仕事をこなしていました。肉体的なつらさは相当なものだったと思いますが、「一番楽しかった時代」と振り返ります。そんな一生懸命な親たちの背中を、子供はしっかり見ているのです。

身体だけでなく、脳にも汗をかいていました。スポーツを教えた後、家庭教師として勉強を教えていた親もいます。イチロー、丸山、加藤、杉山の母は、子供と一緒に勉強しています。杉山の母は、数学Ⅱ、数学Ⅲまで解けたそうです。

怒らない。反抗期もない。

天才児の親たちは、「怒った経験がほとんどない」ということも共通しています。松坂大輔の母親は、「叱ると怒るは違う」と語り、「自分の感情に任せて怒ったということはない」といいます。丸山茂樹の父親は、「子供の立場になって考えたり行動するのが親馬鹿で、自分の考えに子供を押さえ込もうとするのが、馬鹿な親」と語ります。そんな親に育てられた子供たちだからこそは、トップアスリートに必要な、主体性が身につけることができたのです。

天才児には、反抗期がなかったというのも共通しています。子供にすれば、反抗する材料がなかったということになるのです。天才児の家庭は例外なく会話が多いのが、特徴です。夕食時は全員が顔をあわせ、その日にあった事を報告し合います。会話が多ければ、子供の変化が手に取るようにわかります。子供の不満を小さなうちに摘み取っていれば、反抗という態度に発展しないのです。

両親が仲が良いというのも、子供を伸びやかに育てる鍵になるようです。どの両親も、子供を語る時、お互いに見つめ合いながら言葉を重ねたのだそうです。彼らはほとんど50代。結婚して30年近くなるでしょうが、新婚のような雰囲気なのだそうです。多分彼らにとっては、当たり前の事なのだと思います。

天才児はみな負けず嫌い

天才児の子供の頃の基質は、皆似通ってます。とにかく、負けず嫌い。そして、彼らの遊び仲間は、ほとんどが年上です。次男が多いというのも、兄に付いて行っているうちに、兄の友達が自分の遊び相手になったりしています。子供時代に運動能力を磨く上では、この環境は意外と重要です。年上と遊べば、それだけの運動能力が求められるからです。そして、身についた運動能力が同年齢と遊んだ時には、突出した動きを見せることに繋がり、得られた「一番じゃなければ気が済まない」という意識を、活躍するステージが違っても、そのまま持ち続け、トップアスリートへと上り詰めたのです。

子供にあそんでもらった

天才とは、社会にとっては異物です。強烈な個性を育てるのは、それだけ勇気のいることですが、現在、サラリーマンや公務員にすることが、子供の将来にとってよいとは限りません。むしろ個性ある人間に成長することが、求められている時代でもあります。

天才の親たち自身も、サラリーマンや公務員として成功することを求めませんでした。仕事より子育てを選んだのです。富を求めることはしませんでした。小さな会社を経営していた父親が多いですが、里谷の父は「家族が生活出来、遊べるお金があればそれ以上稼ぐ必要はない」と言い、丸山の父は「仕事は、メシを食うための手段」と割り切り、イチローの父は遊ぶ時間を優先させるため、取引先を替えています。清水宏保の父は、「カラオケだ、接待だとうつつを抜かしているより、子供と遊んだほうがよっぽど楽しい」と社員に語っていたそうです。

天才たちの親は、判で押したようにこう語っています。

私たちが楽しませてもらいました。
子育てといいながら、
実は、私たちが子供にあそんでもらっていたのだと思います。

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