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書評「自分を捨てる仕事術-鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド-」

   

「となりのトトロ」「魔女の宅急便」「天空の城ラピュタ」、多くの人に親しまれる作品を作り続けてきた、スタジオジブリ。そのスタジオジブリの作品を世に広めるのに大きく貢献したのが、プロデューサーの鈴木敏夫さんです。そんな鈴木さんに師事していたのが、「攻殻機動隊」のプロデューサーを務めた、スタジオIGの石井朋彦さんです。石井さんは鈴木さんに仕事を学び、現在の仕事に活かしていると語ります。

石井さんが鈴木さんの下で働く事になった時、鈴木さんは石井さんにこう言いました。

「これから3年間、おれの真似をしな。自分の意見をすてて、くもりなき眼で世界を観ること。それを3年間続けて、どうしても真似出来ないと思ったところが、君の個性ということだから」

石井さんは、鈴木さんが教えてくれた「仕事術」は、ゼロから1を生み出すクリエイティブな発想術でもなければ、組織論でもなく、「自分を捨てて他人の真似をする」という仕事術だと語ります。「自己実現」「個性を活かす仕事」「好きな事を仕事にする」といった言葉を聞くことが多くなった現代で、最も「自己実現」「好きな事を仕事にしている」ように思えるスタジオジブリのプロデューサーが、なぜ「自分を捨てて他人の真似をする」のか。本書「自分を捨てる仕事術-鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド-」は、そんなスタジオジブリの鈴木敏夫さんの仕事術を紹介している1冊です。

感情に左右されずに物事を判断する訓練

鈴木さんは、まず石井さんにノートにメモをとることを命じます。鈴木さんは石井さんにこう語ったそうです。

これから打ち合わせでは、席順、相手の肩書きや見た目、その場で話されたことを、すべて、具体的・映像的に書き残しなさい。ノートとペンを手放さないこと。それを会議が終わったら読み返し、家に帰ったら寝る前に読み直して整理する。必ず寝る前にやること。

なぜ、鈴木さんは石井さんにノートをとるように命じたのか。それは、ノートを読み返すと、その場で何が大切だったのかが自ずと見えてくるようになるからだというのです。読んでいると、ノートを書くことは主観的に物事を判断せず、自分の感情に左右されず、やるべきことを見つける訓練になっているのだと分かります。

人を、肩書きで判断しろ

本書によると、鈴木さんは「人を、肩書きで判断しろ」と断言したそうです。「人を、肩書きで判断してはいけない」という言葉はよく聞きますが、なぜ肩書きで判断するのか。鈴木さんはこう答えました。

大事なのは、相手が「どういう立場にいて、何ができる人なのか」ということなんだ。だから肩書きを見る。そして、その人と、これからどのような仕事が出来るのかを客観的に判断する。

そして、鈴木さんはこうも続けます。

よく、同世代で飲み会をやって、将来の夢を語っているのがいるでしょ。ああいうのがいちばんくだらない。決定権がない人間同士が愚痴を言っているだけ。おれは昔から、同世代とはほとんど仕事をしてこなかった。同世代とできる仕事なんてたかがしれてるんだよ!

自分の意見を伝えるためのテクニック

本書には、 仕事の現場で円滑に物事を進めるための具体的なテクニックもたくさん収められています。たとえば、「君の意見は?」と問われたときはどうすればよいのか。それは、それまで話された議論のなかで、誰かが言った意見を引き合いに、「○○さんがこうおっしゃいましたが、僕もその意見に近くて・・・」と切り出せばよいというのです。

鈴木さんは、「自分のことばかり考えている人が、鬱になるんだよ」と語っていたそうです。自分のモチベーションとか、成功とか、自己実現とか、そういうものにこだわりすぎる人は、どんどん心が狭くなる。自分のためではなく、まわりのために、そして最終的には、作品を見てくれるお客さんのために仕事をする。そうすることで、結果的に自分をちゃんと出す事が出来る、というわけです。

自分を捨てることで、自分にしか出来ない仕事が出来る

石井さんは、「自分を捨てる」ために、毎日言い続けている言葉があるそうです。


「自分より優れた人を真似て、相手と自分自身を知ろう」
「自分の意見を主張するよりも、相手の話を聞こう。相手の話のなかから、何が大事かを見出すことに集中しよう」
「何をやりたいか、ではなく、何ができるかを、考えよう」
「自分がやるのではなく、チームのだれに任せるかを具体的に決めよう」

本書には、他にも「伝わる文章の書き方」「怒りのコントロール」「スケジュール管理の方法」「相手を引き込む話し方」「深く聞く技術」「タスク管理の方法論」「人間関係のトラブルをどう解決するか」など、実際の現場で役に立つ仕事のテクニックも、数多く収められています。どれも、鈴木さんが実際の仕事を通じて身につけてきたものばかりです。すべて紹介しませんが、どれも参考になるものばかりです。

本書から学べるのは、本当に自己実現するためのテクニックです。徹底的に人に必要とされる仕事をすることで、初めて自分の個性を発揮できる仕事が出来る。そして、自分1人で仕事をするのではなく、みんなで仕事をすることで、より楽しく、より人の役に立つ仕事が出来る。結果的に、自分自身の責任も軽くなる。その事を教えてくれます。鈴木さんの仕事術は、読むとよくわかりますが、徹底して合理的です。合理的にやるべきことやったからこそ、スタジオジブリはあれだけ多くの人に支持されたのだと、本書を読んで感じました。

スタジオジブリの作品に興味がある人だけでなく、どんな仕事をしている人も、読んで損はない1冊です。さっそく、社内の若手社員に勧めました。ぜひ読んでみてください。

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