書評「ジブリの文学」(鈴木敏夫)

「ジブリの文学」は、自らを「編集者型プロデューサー」と呼ぶ著者が、時代の空気をつかむために、どんな書籍を読んできたのか。そして、書籍からどんな影響を受けてきたのか。スタジオジブリの作品の背景にある、「教養」と「言葉」について深く掘り下げた1冊です。

スタジオジブリの作品はなぜヒットするのか

スタジオジブリの作品がなぜヒットするのか。様々な観点で様々な人が分析しているけど、僕はスタジオジブリの作品がヒットする理由の1つとして、現代の社会がどんな社会なのか、深く理解しているからだと思います。流行を追うのではなく、社会情勢を踏まえて、人は何を考えているのか。若者は、歳を取ったらどうするべきか。男は、女は、何を考えているのか。目の前の作業に追われる事なく、徹底的に考えている。そこが、スタジオジブリのヒットの秘密ではないかと思っています。

スタジオジブリをどうやって現代を理解しようとしているのか

スタジオジブリが現代の社会がどんな社会なのか知るための助けにしていることが2つあります。

1つ目は、身近なスタッフの話し。「スタジオジブリで起こっている事は、日本や世界で同じ事が起こっている」と考えて、スタッフが話すこと、悩みに徹底的に耳を傾けます。時にはお節介で、ウザいと思われるほどに。何気ない日常の言葉にこそ、真理が隠されていることを、スタジオジブリはよく理解しています。

そして、2つ目が書籍です。宮﨑駿さん、高畑勲さん、そして鈴木敏夫さんは、書籍をよく読んでいます。それも、他の人が読まない書籍を。本書の冒頭には、鴨長明の方丈記に関するエッセイが掲載されています。基になっているのは、堀田善衞さんの「方丈記私記」。こうした古典文学から現代という時代を理解し、そして現代の作家の作品と照らし合わせ、より深く現代を理解する。そんな姿勢が、作品に反映されているのだと思います。

本書は、著者のエッセイや対談と、過去に読んできた本が紹介されています。スタジオジブリの作品の背景には、どんな書籍の影響があるのか。そして、スタジオジブリはどんな作品から現代を理解しようとしているのか。そんな観点で読んでみると面白い1冊です。

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