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宮崎駿&高畑勲&鈴木敏夫体制の集大成といえるスタジオジブリの新作「風立ちぬ」&「かぐや姫の物語」2本同時公開

   

少し前の話ですが、スタジオジブリの次回作が発表されました。
今回驚きだったのは、宮崎駿監督の新作「風立ちぬ」と、高畑勲監督の新作「かぐや姫の物語」が2本同時に公開されるということです。以前、「となりのトトロ」と「火垂るの墓」が同時上映されたことがあったのですが、今回のように2本別々に同じ日に公開というのは、スタジオジブリにとっても初の試みです。

僕は、今回の2本同時公開は、スタジオジブリがここ数年取り組んできたことの集大成だと思っています。特に、今回2作品を発表することは、宮崎駿、高畑勲という両監督にとってだけではなく、鈴木敏夫プロデューサーと両監督のトロイカ体制で運営してきたスタジオジブリ自体の、大きな分岐点になると感じているからです。

宮崎駿の新作「風立ちぬ」で描かれるのは自身の半生

宮崎駿監督の新作「風立ちぬ」は、ゼロ戦の設計主任であった堀越二郎の半生を、堀辰夫の小説「風立ちぬ」の世界観と重ね合わせて作られる作品だそうです。

また、鈴木敏夫プロデューサーが「ユーミンの「ひこうき雲」を主題歌に使いたい」と発言しています。ユーミンの曲が主題歌に使われるのは、魔女の宅急便以来ということで、こちらも楽しみです。

ただ、僕は作品の概要と主題歌のニュースを読んだとき、ひとつの仮説が頭に浮かびました。それは、「この作品で描かれるのは宮崎駿という人の半生」なのではないかということです。

堀辰夫の「風立ちぬ」は、美しい自然に囲まれた高原の風景の中で、重い病(結核)に冒されている婚約者に付き添う主人公が、彼女の死の影におびえながらも、2人で残された時間を支え合いながら共に生きる物語です。

松任谷由実さんの「ひこうき雲」は、夭逝した旧友がモデルの曲です。誰もが早すぎる死にただただ悲観する中、主人公は「けれど幸せ」言い、空に憧れ、それそのままに空へ消えていった者への理解と羨望が歌われている曲です。

堀辰夫の「風立ちぬ」と、松任谷由実さんの「ひこうき雲」に共通するテーマは「生と死」です。振り返ってみると、生きるということは何か、死ぬということは何か。「もののけ姫」という作品以降、宮崎駿の作品には常に「生と死」をテーマに作られています。

「もののけ姫」では、「生きろ」というキャッチコピーが使われ、「千と千尋の神隠し」の主題歌では「生きている不思議、死んでいく不思議」と歌い、「ハウルの動く城」では、老人の恋愛を題材に自身が考える「老い」について語り、「崖の上のポニョ」では、大洪水の後、変わり果てた死後の世界のような世界が登場します。

過去の作品から想像するに、今回の作品で描かれるゼロ戦の設計主任であった堀越二郎は、宮崎駿自身のことだと思います。したがって、今回の作品は、堀越二郎の半生を題材に、宮崎駿が自身の半生について描いた作品になると思っています。

宮崎駿が次回作として自身の半生をテーマに描くということであれば、ファンとしても、今回で最後の作品になるやもしれないという覚悟をして、観に行かざるをえません。完成が楽しみです。

高畑勲の新作で描かれるのは鳥獣戯画の手法を用いた「かぐや姫」

高畑勲監督の新作「かぐや姫の物語」は、日本最古の物語で、別名「竹取物語」とも言われている作品です。竹の中でうまれたかぐや姫が、成長し多くの男性の興味を引く美女へと成長し、やがて月へと旅立っていくという物語で、あらすじなら日本人なら誰でも知っている古典です。

高畑勲監督は、作品を作るにあたって、徹底的にリサーチをすることで知られています。今回の作品の構想は、2005年から着手したといわれていますから、無事に公開されれば制作期間は7年もの時間がかかっていることになります。また、映画の題名が「竹取物語」ではなく、原作の本当の名前とも言われる「かぐや姫の物語」としているところに、どことなく高畑監督らしさを感じます。

高畑監督は、キャリアを通して一貫して、アニメーションでありながら、リアルで自然な説得力のある世界観を、緻密な構成力を用いて追求してきました。今回の「かぐや姫の物語」は、「鳥獣戯画の絵で竹取物語を作りたい」という高畑監督の構想を形にした作品だと、「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」では語られていましたが、そうだとすれば、「かぐや姫の物語」は、高畑監督がキャリアを通して追求してきた、「アニメーションでありながら、リアルで自然な説得力のある世界観」の集大成と言える作品になるはずです。今から完成が楽しみです。

宮崎駿&高畑勲&鈴木敏夫体制の集大成といえる2本同時公開

今回の2本同時公開を最終的に決定したのは、スタジオジブリのプロデューサーでもある鈴木敏夫さんだと思いますが、鈴木さんにとっても今回の2本同時公開は大きなかけだと思います。

2本同時公開によって実現する、宮崎対高畑という師弟対決をあおる事による相乗効果より、同時に公開することによってお互いの観客を食い合ってしまうデメリットの方が大きい気がします。それでも、同時公開に踏み切ったのは、鈴木さんなりの考えがあってのことだと思います。

僕は、鈴木さんが「宮崎駿監督と高畑勲監督の作品が同時期に出せるのは、これが最後になるんじゃないか。だったら、同時に公開してしまおう!」と考えて、2作同時公開にしたのではないか、と想像しています。この仮説が正しければ、本作は、宮崎駿監督と高畑勲監督の集大成というだけでなく、今までスタジオジブリを支えてきた、鈴木敏夫さんにとっても集大成の作品といえるのです。

目処が立ちつつある後継者問題も2本同時公開を後押し

ジブリの隆盛を支えてきたのは、宮崎駿&高畑勲という2人の監督と鈴木敏夫というプロデューサーによるトロイカ体制でした。しかし、3人とも60歳を過ぎて後継者問題が取りざたされる中、少しずつ前向きな変化がみられるようになりました。

ジブリの新たなファンタジーを表現した「借り暮らしのアリエッティ」の米林宏昌や、「コクリコ坂」で新たなジブリ作品の表現を提示した宮崎吾朗といった、後継者と成りうる監督も現れました。

また、「スタジオジブリ プロデューサー見習い」という肩書きで、スタジオジブリに新たな風を吹きこんでいるドワンゴ会長の川上量生さんも、鈴木敏夫さんの後継者として活躍する可能性があるんじゃないかということを、最近の「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」を聴いていると感じます。

したがって、スタジオジブリが抱えていた「後継者問題」に、制作面ならびにPR面ともにある程度の答えが出たことも、今回の2本同時公開を後押しするきっかけになったのではないか、と想像します。

とりとめもないことをつらつらと書いてきましたが、改めてまとめると、今回の2本同時公開は、宮崎駿&高畑勲&鈴木敏夫体制の集大成というだけでなく、スタジオジブリの集大成といえる2本同時公開だと思っています。公開は2013年の夏ということですが、今から公開が待ち遠しいです。

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