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書評「今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則――『ジャイアントキリング』の流儀」(仲山 進也)-驚くほど共通している川崎フロンターレとジャイアントキリングのチーム作り-

   

会社の本棚にあったので、思わず手にとって読んでみました。本書「今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則――『ジャイアントキリング』の流儀」は、楽天で店舗の成長を促す「楽天大学」を設立した「チーム作りのプロ」が、成果を出すためのチームを作るための成長法則を、人気マンガ「ジャイアントキリング」の例を交えて紹介した書籍です。

僕はジャイアントキリングを読んだことはありません。しかし、本書を読み終えて感じたのは、本書でジャイアントキリングを例に語られているチーム作りは、風間監督が川崎フロンターレで実行してきたことと、ほとんど同じではないかということです。

本書によると、チーム作りは4つの段階に分けられるそうです。

  1. フォーミング(形成期)
  2. ストーミング(混乱期)
  3. ノーミング(規範期)
  4. トランスフォーミング(変態期)

様子をみているフォーミング

まず、フォーミング。お互いの事も何も分かっておらず、様子見の人もいる時期です。そして、慣れてきてコミュニケーションが増えると、お互いの意見が出始め、意見の衝突が起こりはじめる時期です。この時期に優秀なリーダーによって、「こうすると結果が出るよ」と答えを教えると、すぐにまとまり、結果は出ます。しかし、優秀なリーダーによって、結果を出すための答えを教えてしまうと、ずっと「フォーミング」のまま推移し、本当のチームにはならないというのです。むしろ、「ストーミング」をいう混乱期へと促し、メンバーの自己主張を促し、時に対立や衝突を恐れず、むしろ面白がることがリーダーには求められているというのです。

1年間、敢えて“守備”という言葉は使わなかったんですよ。「とにかく攻めればいいんだ」と選手に伝えたら、最初はキョトンとしていました(笑)。だから、しばらくは、いくら点を獲っても、失点も多かったんです。これは想定の範囲内でした。こちらが守備のことを言うと、どうしても選手の意識はそちらにいってしまう。「攻撃している間は相手から攻められない」。最初にこの原則を理解してほしかったんです。
(風間八宏)「個と組織の利益が一致するチームを」より

僕がまず言うのは、「目をそろえよう」ということです。チームのみんなで同じ基準を持ち、そこから自由な発想と成功を見つけていくのです。

たとえば、ボールを止める、蹴る、運ぶという定義は、最初は選手によって違います。でも、同じ認識を徹底して備えていくのがチーム。ボールをどうやって止めて、足下のどこに置くのか。個々がその認識を徹底し、みんなが同じ質、タイミングでプレーしようとすることが求められます。

そうやって個々が技術を高めることで、チームとしてもっと上を目指すことができる。互いにアイディアを出し合うことで、個人がチームとしてまとまっていきます。出発点として「目をそろえる」=「共通した技術へのこだわり」を持つことで、最終的にチームの意識が変わっていくのです。
(風間八宏)「組織の中に隠れたら終わり。まずは「個」を打ち出せ」より

個人と周囲の主張がぶつかり合うストーミング

川崎フロンターレでは、風間監督が就任当初から2年目の前半戦までが、フォーミング〜ストーミングと言える期間だったと思います。風間監督はあるセミナーで「就任後半年間はとても大変だった」と語っていました。多分、本書で語られていたように、様子見の人、揚げ足を取ろうとする人、結果は出てないのに「昔はよかった」という人がいたのだと思います。ましてや、風間監督はブレーンとなりうるような、スタッフは連れて来ませんでしたので、なかなか自分の考えが伝わらず、大変だったはずです。

2年目の2013年シーズンは開幕直後から4戦勝ちなし。解任論まで取り上げられました。(僕がこんな記事を書いて、激しく叩かれたのもこの時期です)チームはまさしく「ストーミング」のまっただ中にいました。そんな中、フォーミングの時期を乗り越えていたチームは、ストーミングの時期にお互いの意見をぶつけあい、課題と正面から向き合って乗り越え、最終的に3位という結果につながりました。

チームワークが形成されるノーミング

そして、2014年シーズンから2015年シーズンは、ノーミング(規範期)と呼ばれる時期にあたります。ノーミングとは、チームワークが形成されていく時期です。チームのビジョンが共有されてきたので、お互いのプレースタイルを理解し、サッカーの理解度も高いレベルで一致し、そして、上手くいっていない度合いも共有できている状態です。川崎フロンターレは風間監督の解任論まで取り上げられた、ストーミングの時期を乗り越えた結果、個人個人が「チームを勝たせるには何をすればよいのか」を考え始めるようになります。前例にとらわれず、選手のポジションを積極的に変え始めるのも、この頃です。

DFは相手の攻撃防ぐのが仕事、FWはゴール狙うのが仕事。それは最低限の役割。役割を疎かにしたら、ゲームは成り立たない。でも、組織として差がでるのは、個々がどれだけ役割以上の事が出来るかだよ。(中略)各々の垣根を超えて、自分の役割以上の仕事をする。それが俺の憧れるクラブの形だからね。(達海猛)第14巻#132より

チームが進化を遂げるトランスフォーミング

そして、2016年シーズンは、トランスフォーミング(変態期)にあたります。選手個人個人の能力が向上し、意識も高まり、どうやったら勝てるチームになるか、1人1人が考えて、積極的に行動が出来るところまで、残った選手たちは成長した。もう、「どう勝つか」がチームで共有されているので、守り方を強く言っても、チームがブレることはない。そう判断したからこそ、弱点と言われていた守備の選手の補強に重点をおき、チョン・ソンリョン、エドゥアルド、エドゥアルド・ネット、奈良といった選手たちを獲得したのだと思います。

チームは元々持っていた攻撃力にプラスして守備力を向上させ、悲願のタイトル獲得に向けて、少しづつ歩みをすすめています。本書を読んでいると、ジャイアントキリングに書かれているチーム作りと、川崎フロンターレが歩んできた道のりが、あまりにも似ていることに、驚かされます。そして、シーズン中もフォーミング〜トランスフォーミングまでを繰り返し、少しづつチームは進化してきたのだと思います。

驚くほど似ている達海猛と風間八宏の発言

僕はジャイアントキリングをきちんと読んだことはないのですが、本書を読んでいると、ETUの達海猛と川崎フロンターレの風間監督の発言が、とても似ている事に驚かされます。

「何でも思い通りにいってなにが楽しいよ。」俺が楽しいのは、俺の頭の中よりスゲーことが起こった時だよ、(達海猛)第2巻 #12より

僕はいつも、「技術は頭の中にある」と言います。技術は頭の中にある」と気づいてすごくうまくなる選手もいれば、プラスアルファに変えていける選手もいます。頭の大きさは各自で違うから、それをチームで組み合わせていくと、1番望みの高くて、1番うまい選手にみんながついていかなければいけなくなる。
(風間八宏)「組織の中に隠れたら終わり。まずは「個」を打ち出せ」より

チームってのは、個の力が集まって初めて形になる。個の力を伸ばすてっとり早い方法、それはズバリ、チームがゲームに勝つことだよ。じゃあ、どう勝つか。自分の働きでチームを勝たせる。全員がその感覚を持って戦えれば、おのずと勝利は近づいてくる。(達海猛)第18巻 #170より

チームの利益のために、みんながいるのではない。個人の利益とチームの利益が一致しなければ、結果的に何も得られない。その両方を追求してくれ。
(風間八宏)「組織の中に隠れたら終わり。まずは「個」を打ち出せ」より

僕は風間監督が就任した後、川崎フロンターレがどんなサッカーを披露するのか、どう変化するのか、その過程をきちんと把握したいと考えて、このブログで川崎フロンターレの試合のプレビュー、レビューを書き始めました。当初は、風間監督の技術論に注目して観始めたのですが、次第に風間監督のチーム作りに注目し始めるようになりました。3歩進んで2歩下がるように、着実に少しづつ前進させながら、繊細なガラス細工を作るように、少しづつチームを進化させていく過程で、様々な事が起こりました。しかし、歩みを止めることなく進み続けてきた結果、どこのチームにもない攻撃的なサッカーを披露できるチームへと成長しつつあります。

理想はありません。なぜかというと、それは選手の中で決めることで僕がやることではないですから。一番は、もちろん90分間ボールを持ち続けて選手が楽しんでやること。球技である以上、ボールを持たずに考えることはないですよね。例えば手でやるスポーツで、ボールを持っていない、ボールを取られることを考えるスポーツはないですよね?だから堂々と自信を持って、ボールを持つサッカーをしていって欲しい。そのなかで選手たちの発想が出てくる。何対何というのはありません。その中で僕があれそっちに行くのと思うことがあって、まったく違う方向に行っても、それでとんでもない結果を出してくれればそれは面白いと思う。元から当てはめる気もないですし、彼らが作っていくものにもっともっと大きくしていこうと考えています。それが僕の理想だと思っています。
(風間八宏)「風間監督就任会見より」

川崎フロンターレのサッカーに共感出来る人、そして川崎フロンターレというチームが、なぜ今のようなサッカーを披露できるようになったのか。そのチーム作りの過程を振り返り、理解を深めるのに最適な1冊です。ぜひ読んでみてください。

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